ありがとうと言葉を添えて
@nobumasa
第1話
教室に戻ると女子たちが机を輪にしてお弁当を広げていた
ちょっとごめん
と机の中のノートを取り出した時
ノートの上に乗っていた弁当を包む花柄のハンカチ
急に湧き上がっき胸のたかまり
あ,ごめんわたしの
クラスの副委員長はニコッと微笑んだ
進級しても同じクラス
いたずらしたり、励ましたり
笑い転げたり
そのまんなかに副委員長がいた
進んだ高校はみな違ったが
下心一杯で同窓会やろ、
と言ってはみんなで集まった
クラブに行き詰まり
もうやめるんだ
と言った時
やめちゃ あなたらしさがなくなっちゃうよ
肩に手を置いて励ましてくれた時
うつむいたまま・・・
顔を上げることができなかった
大学に行って遠く離れ
夏休みで帰省
電話して
約束して
初めてのふたりだけの万博
あちこち見て回って
お金がないからカレーでお昼
夜の遊園地はピノキオの世界
キラキラ光るジェットコースターをながめながら
さぁ帰ろうか
うん
にこりと微笑む・・・
ふと触れてしまった君のワンピース
学園紛争
生活環境が違うんだもう会うことはない
夢に出てくる君の家に続く道が
年とともにゆらゆらと揺れて見えてくる
君の顔が・・・
目が覚めて
あぁまた見てしまった、と布団を丸くする
結婚し、子供ができ、親父がなくなり
そんなことがあったなぁ、と振り返る頃届いた
同窓会の案内
遅れて着いた会場で真っ先に探した
思い出深くしまっておいた微笑みが
そのままそこに
やぁ と小さく手を振って
僕を迎えてくれた
あの頃のクラス仲間と飲んでの帰り
送って行くよと夜の道
会話が途切れてふたりはうつむく
私ね子供が二人いるの とてもいい子たちなの・・・
分かるよ 僕にもかわいい娘がいる
改札口で大きく手を振る君は
満面の微笑み
通り過ぎる人が僕たちを見る
彼女が好きだったなんてスクープでも何でもないよ
会うたびに皆の前で言ってるじゃないか
仲間と撮った1枚の写真
画像をはみ出して楽しいひと時を伝えている
うしろでふたりはこっそり腕組
どさくさにまぎれて
なにしてんだこのふたり
会えばいつも
君はいっぱい僕に注文する そして
ありがとう
と言ってくれる
仲間が集まって、ワイワイ騒いで
あの頃と変わらない
このひとときは
いつまでもあの頃のままでいてほしい
でも、ひとつだけお願いがある
これまでずっとそうであったように
僕は君の手を握ったことがない
干からびたこの手のしびれが進行する前に
ありがとう
と言葉を添えて
君の手を熱く握ってみたい
ありがとうと言葉を添えて @nobumasa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます