第187話 驚異の魔神

ベルッチは全てのモンスターに一斉攻撃を命じた。カルナギは動揺することもなく、平然とそれを見つめている。


骨の獣のようなモンスターのスケルゴンが、骨だけのアゴでカルナギに噛み付いた。カルナギは避けることなくがぶりと噛みつかれるが、表情を見ると痛くも痒くもないようで平然としている……あれはやられた振りなのかな……無敵感が溢れてて逆効果のようにも見えるけど……


スケルゴンに噛まれながら、ディラハンが手に持ったフレイルでカルナギに攻撃する。フレイルはカルナギに命中するが、やはり全く効いているようには見えなかった。


カルナギは無抵抗に敵に攻撃されている……力を隠せとは言ったけどあまりにも演技が下手すぎて、逆にとんでもないポテンシャルがもろ見えだ。


「物理攻撃の耐性が高いようだな……メダロア、魔法攻撃だ」


メダロアと呼ばれた目玉のモンスターは、バチバチと周りに放電させながら何やら長い呪文の詠唱をした。そしてそれをカルナギに向けて発動した。


「あれは最上級雷撃呪文のテスラ・ライトニング!」


聞いてもいないのにティフェンが解説してくれる。


最上級雷撃呪文はカルナギに直撃した。と言うか避ける素振りもしていないので、あれもわざと受けたな、そんな強力そうな魔法まで受けることないのに……ちょっと心配になったが、カルナギの丈夫さは俺の想像を超えていた、バチバチと激しい稲光がカルナギを包み込むが、眉一つ動かすことはなかった。


テスラ・ライトニングを受けても平然としているカルナギを見て、ベルッチも焦りの表情を浮かべる。


「ドラゴンゾンビ、デスブレスで葬りされ!」


そう言った瞬間、コロシアムの客席の前列が慌て始める……どうやらデスブレスとはそれほどヤバいものらしい。


死を振り撒く恐怖の咆哮が放たれた……カルナギはそれも避けようとせず、サウナで熱風を受けるような気軽さでそれを受けると、ゆっくりとドラゴンゾンビの方へ歩みを進めた。


「バカな! なぜデスブレスを受けて平気なのだ!」


その問いには貧乳ゴスロリ女が俺に答えてくれる。


「カルナギちゃんには魔闘気があるからね、あの程度のブレスじゃ体に触れることもできてないわよ」


「魔闘気ってなんだ、貧乳ゴスロリ女」

「だから貧乳ちゃうって言ってるでしょうが! 魔闘気ってのは万能障壁よ、魔神固有のスキルで、最強クラスの防御スキルの一つね」


「ちょっと待って! あの女モンスター魔神なの?」


俺と貧乳の会話を聞いていたティフェンが、客席から驚いたようにそう聞いてくる。ティフェンがいたのはすぐ後ろの客席だが、少し離れているのによく会話が聞こえたなと感心する。


「そうだが、何をそんなに驚いているのだ」

「驚くわよ、魔神なんてどうやって仲間にしたのよ、ジンタ! 魔神ってのは恐怖と死の象徴よ! 人の天敵にして最大の厄災、テイム不可能、召喚不可能って言われている怪物なのよ!」


「友達になったんだよ」


「と……友達!?」

「カルナギは友達思いだからな、こうして一緒に戦ってくれてるんだ」


「え……魔神って友達にはなれるんだ……確かにテイム不可能、召喚不可能ってのは聞いてるけど、友達不可能ってのは聞いたことない……盲点だわ……」


ティフェンが自問自答してる間に、戦いは終わりを迎えようとしていた。


見ると向こうのエースであるドラゴンゾンビが、カルナギのビンタ一発で首が吹き飛ばされているとこであった。ていうか、ドラゴンゾンビの首を吹き飛ばす威力のビンタを、この貧乳ゴスロリは普段から受けてんだよな……やっぱり凄いのかコイツ……


ディラハンもビンタでバラバラに分解され、メダロアはデコピンで粉々に粉砕される……スケルゴンは蹴り一撃で全ての骨の部品がバラバラと崩れ去った。


ベルッチは全てのモンスターが行動不能になると天を仰いだ……


「勝者、召喚士ジンタ!」


少しの沈黙の後、会場から歓声が上がった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る