第171話 冒険者第二の都市ドロキア
ドロキアに来るのは初めてだけど、ルーディアに負けないくらいの大都市に驚く。
「でっかい街だな、ルーディアと比べても遜色ないじゃないか」
俺が単純明快な感想を言うと、ニジナが一丁前に説明を始めた。
「そうね、元々はこっちが大陸の中心だったくらいだからね、ラミュシャ様の神殿がルーディアに無ければ、今でもここが大陸の中心だったでしょうから」
「ふん、あの女神の神殿がそんなに重要なのかね……みんなアイツを勘違いしてると思うぞ」
「ラミュシャ様をアイツとか言わないでよ!」
「じゃ〜アレ」
「アレとも言わない!」
エロ女神の話題もそこそこに、とりあえず、俺たちはこちらで滞在する宿屋を探す事にした。すごい事にテイマーの多くいる都市なだけあって、モンスター同伴OKの宿が結構ある。その中でも温泉付きで値段も手頃な満月屋という宿に決めた。
「闘技会は3日後だから、明日はドロキア観光でもしましょうか」
宿屋の一階で食事中にニジナがそう提案する。
「いいね、私、エレキタワーに行ってみたい」
なぜかもう一緒にいるのが当たり前のように行動しているティフェンがニジナの提案に乗ってくる。
「観光だって……面倒臭いな……それぞれ別行動でいいんじゃねえか」
俺の素直な意見なのだが、なぜかすごく怒られる。
「何ってんのよ、せっかくこんなとこまで来たんだからみんなで楽しく観光すればいいでしょ!」
「そうそう、本当に醜い不男は考えが貧相ですね」
「ジンタ、私もみんなと一緒に観光とやらがいいのだけど……」
「観光くらいで面倒臭がるなよ」
「ユキも観光で美味しいもの食べる」
多勢に無勢……なぜかみんな観光賛成派ばかりで俺は孤立していた。
「わかったよ、観光に行けばいいんだろ……たく……」
嫌々ながらもそれを了承した俺は、一人、ひとっ風呂浴びる為にその場から離れた──
広い風呂には、まだ時間が早いこともあり、先客は一人しかいなかった。俺は洗い場で体を洗うと、先客から少し離れた場所で湯船に浸かる。
ふぅ〜さすがは名湯で有名なドロキア温泉だ、体の芯に染み渡るこの心地よさ……さっきの不快なやりとりも忘れさせてくれる。
「…………観光ですか?」
「……うわっ!」
離れたところにいた先客がいつの間にか俺の真横まで来ていて心底驚いた。
「驚かせてしまって申し訳ない、せっかくの名湯でのひと時、二人っきりで風呂に入っているのも何かの縁かと話しかけさせてもらいました」
ふっ……まだ心臓がバクバク言っている……なんとか心を落ち着かせて返事をした。
「はぁ……そうです観光です」
面倒臭いので観光ということで話を合わせた──明日は観光らしいので嘘ではないしな。
「そうですか、私も観光みたいなものでして……3日後にちょっとした用事がありますがね……それまではドロキアの名所を巡ろうと思っているんです」
「そ……そうですか」
なんとも言えない口調に、ちょっとどう反応していいか戸惑う……先客は30歳前後の男で、物静かそうな雰囲気に、いつも笑顔なんだろうなと思わせるような大らかな感じの好感の持てる大人といった人物だが、なぜか俺は妙な殺気に似た何かを感じていた……というか、異常な視線を感じているといった方がいいかもしれない……
「ええと……さっきからどちらを見てるんですか……」
普通に話しているような先客の男だが、目線は俺の顔ではなく、明らかに下の方を見てる……
「あっ! 失礼、私はこう見えて温泉学の権威でしてね、こうやって話しながらも湯の状態を確認していたのですよ」
「そうなんですか、それは大変ですね」
と言いながらも、どう見ても凝視しているのは俺の下半身のような気がして仕方がないのだが……
ススス…………
自然な動きに見せて、先客の男は俺との距離をさらに縮める……ちょっと嫌な感じがしたので俺は自然に距離を取ろうとするのだが、男は俺に付いてくるように動く……
ナニコレ……すげー怖いんですけど……どうしよう……
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