こぼれ話 ユキのペット3
「それでミケイロ、話の続きなんだけど、シュナイダーなんたらとやらの姿ってどんな感じだ?」
俺がそう聞くと、なぜかミケイロは震えながら悶絶し始めた。
「くぅ~なんたる幸福! 母君以外から名前を呼んでもらえる日が来るとは……我が最高の日! 我が最高の時だ!」
ミケイロのその言葉に対して、シュラが冷静に問う。
「名前呼ばれないって……それじゃあ普段、なんて呼ばれてるんだ」
「うむ。みんな変態とか、変質者とか、思い思いの愛称で呼んでくれるな」
ミケイロ……それは愛称ではないと思うぞ──
「それより、ミケイロ。シュナイダーなんたらの見た目だけど……」
「うむ。シュナイダーランダブルキングのことだな。見た目は美しいの一言だ。それ以外は表現ができないほどの美しさだ。美しさランキングでは常に上位を狙えるほどの美しさといえば分かりやすいかな」
「いや……すごく分かりにくいのだが──」
ダメだ……どうもミケイロは会話の成立が難しいタイプのようだ。おそらくシュナイダーなんたらの事を聞いても詳細はわからないだろう。
仕方ないのでこちらから特徴を伝えることにした。
「もしかしてだけど、シュナイダーなんたらって、一見、グチャっとして、ヌメヌメしているように見えて、実際触ってみると、想像通りヌメヌメしてて、目玉がゾンビのようにジュルって今にも落ちそうな感じのバランスで頭部にあって、口は必要以上に横に裂けていて大きくて怖い。そんな感じじゃないか」
「我が友よ! もしかしてシュナイダーランダブルキングを知っているのか!」
やっぱり牛太郎とシュナイダーなんたらは同じものらしい。そうなると話は簡単である。持ち主が見つかったので返さなければいけないとユキに納得してもらえば、あの気持ち悪い牛太郎を飼う必要もないし良いことだらけだ。
「ミケイロ。実はその生き物はうちで保護しているんだ。君の大事な家族をぜひ引き取ってくれ。
「おぉ……なんと素晴らしいことだ。さすが我が生涯、唯一、最高の友! 早速、引き取りに行く……と言いたいのだが…一つ、重大な問題があるのだ……」
「なんだ。問題って?」
「うむ……捨てて来いと言われたシュナイダーランダブルキングを連れて帰って、母君になんと話せばよいか……」
母ちゃんの問題は解決してないのかよ……さすがにそんなの知らないと言い切りたがったが、ここはやんわりと指摘する。
「まあ、それは親子の問題なので俺はなんとも言えないから……とりあえず、連れて帰ってみて、その時話し合ったらどうかな」
「我が友、ジンタよ……母君は怒ると怖いのだ……私は怖いのは嫌なのだ」
面倒くさい奴だな……
「お母さんだって誠意をもって話せばわかってくれるよ」
他人事なので適当に説得するが、そんな俺に、ミケイロがとんでもないことを言い出した。
「そうだ。我が友ジンタよ。母君を説得してくれまいか、私には無理でも、この私の心を掴むことのできた其方ならきっとできるだろう」
「ええぇ──なぜ俺が……」
ミケイロの願いに俺が戸惑っていると、隣で話を聞いていたニジナが口をはさんでくる。
「いいじゃない。親友の頼みでしょ、説得くらいしてあげないさいよ。ジンタも、シュナイダーなんとかを引き取ってもらわないと困るんでしょう」
うむ……どうも納得いかないが仕方ないか……
「わかったよ。俺が説得するからお前の家に連れていけ」
そう言うと、なぜかミケイロは涙を流して天を仰ぐ。そしてしみじみとこう呟いた。
「くっ……私の家に友達を呼べる日が来るとは……なんと素晴らしき日なのだ」
「感激するのはいいが、さっさとミケイロの家にいこう」
「う……うむ……そうだな。それでは案内しよう」
ミケイロはそう言いながら歩きだす。俺がそれに付いていこうとすると、横からシュラがこう言ってきた。
「ジンタ。ユキはどうするんだ。探さないといかないだろう」
「確かにそうだな……よし。シュラはこのままユキを探してくれるか。後で合流しよう」
「わかった。それじゃ、一時間後に勇者酒場に集合とかでいいか」
「そうだな、それでいこう」
シュラはここで別行動をすることになった。俺とニジナはミケイロの案内で彼の家へと向かった。
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