第157話 竜女の部屋
クエストも完了して、久々に我が家へと帰ってきた──ギルドの寮に戻るとすぐにサブマスのディレイが声をかけてくる。
「よう、ジンタ、クエストはどうだったんだ、うまく言ったのか」
「ふっ、当然だ、俺が失敗などするわけない」
「なるほど、それじゃ、あれだ、恒例のアレをやらないとな」
「なんだ、あれって」
「何言ってるんだよ、クエスト完了の打ち上げに決まってるだろ」
「……まあ、そうだな……確かにそれはそうだが……今回はディレイは参加してないから関係ないのじゃないのか」
「おいおい、クエストに参加してるとかしてないとか打ち上げに関係ないだろ、クエストがうまく言ってよかったねーって会だから、心の底からそう思っている奴は誰でも参加していいんだぞ」
ディレイはただ飲み会がしたいだけで屁理屈言っているが、まあ、打ち上げをディレイが取り仕切ってくれるのは都合がいいかもしれない、うまくいけば打ち上げ費用をギルドが持ってくれるかもしれないしな……
とりあえずクエストの打ち上げをディレイにお願いして、俺は一度自室に戻った。
「おっ、帰ってきたなジンタ」
部屋に入ると、シュラが出迎えてくれる。部屋にはシュラとユキ、後、マリフィルが寛いでいた。
そういえばマリフィルの今後どうするか全く考えてなかったな……俺と召喚契約するのがいいのかもしれないけど、そうなると召喚枠がまた埋まってしまう……
それにこの部屋に四人は流石に狭すぎるし……どうしたものか……
「マリフィル、そういえばお前、これからどうしたいんだ」
俺は本人の意思を確認する為にそう聞いた。
「これからですか、え〜と、そうですね……実は私、冒険者になりたいと思ってるんです、それでジンタさんのギルドに入りたいと……ダメですかね」
冒険者に……それでうちに入ると……そうか、それならこのエロい体を手放すこともなく、冒険者としてうちに入れば部屋も貰えるし、召喚枠も埋まらない……一石三鳥ではないか。
「全然ダメじゃないぞ、よし! ダメマスには俺から話そう!」
そう俺が言うと、マリフィルはすごく嬉しそうな表情をした。
早速、俺の所属するギルド、パルミラのマスターである、ルキアの部屋を訪ねた。
「ルキア、いるかー」
「あっ、ジンタ、クエストから帰ってきたのかい、その感じだとうまくいったみたいだね」
そう言いながら、ルキアは、書類に目を通すふりをしている──ダメマスなので、絶対内容は読んでいないはずだ。
「ちょっと、話があるんだけどいいかな」
俺がそう言うと、ちょっと意外そうな表情をする。
「ジンタが僕に話……それは珍しいな、でっ、どんな話なんだい」
「うちに入りたい奴がいるんで入れてくれ」
「うちってことはパルミラギルドにってことかな」
「そう、まだ冒険者にはなってないけど、強いから問題ないと思う」
「そうか、まあ、ジンタの紹介なら問題ないと思うけど、とりあえず会ってみようかな」
「そう言うと思ってもう連れてきている──おい、マリフィル」
俺が呼ぶと、マリフィルが部屋に入ってきた。
「初めまして、マリフィルです」
マリフィルの姿を見て、ルキアはこう反応した。
「ドラゴンニュート……あっ、いや、ヴイーヴルかな、冒険者になっていない者が強いってのは、そういうことか──」
マリフィルはアピールの為かルキアに訴えかける。
「私、ジンタさんたちの仲間になりたいんです、ジンタさんたちと冒険して、正式に冒険者として仲間になれたらどんなに嬉しいか……お願いします、私をギルドに入れてください!」
マリフィルのアピールが通じたわけではないようだが、ルキアは快い返事をした。
「うん、入団を許可するよ、ギルドの仲間は家族みたいなものだからね、君もそう思って気兼ねなくここにいてくれ」
流石に速攻の判断に、思わず突っ込む。
「判断、速えな、もっと質問とかしなくていいのか」
「僕は人を見る目だけはあるからね、今のパルミラギルドの仲間を見れば納得すると思うけど、どうかな──」
キネアとかロッキンガンとか、微妙なものもいるが、確かに根はいい奴ばかりなのは認める……マリフィルには窃盗の前科があるが、まあ、それは置いておこう。
「あ……ありがとうございます! 一生懸命頑張ります!」
正式なギルド員になったマリフィルには自室が与えられた、早速、夜這いにくる計画を考えるが、面倒臭いことに、なぜかその部屋はニジナの部屋の隣であった。
ニジナに勘ぐられると厄介だな……あっ、そういえばニジナが今晩、部屋に来いとか言ってたな……無視してもいいけど、後で何言われるか……
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