第143話 超攻撃魔法
「スフィルレン!」
ぼーっとしていたシュラがいきなり大声をあげた。シュラにそう声をかけられた露出女が目を見開く。
「しゅ……シュラか?」
露出女の反応を見ると、どうやら二人は知り合いのようだ。
「あいつと知り合いなのかシュラ?」
俺がそう尋ねるが、シュラと相手の女は二人の世界に入ったのか無視される。
「スフィルレン……どうして……」
シュラの言葉を振り払うかのように露出女は呟く。
「何もかも、もう遅いよ……シュラ……私はもう……」
しかし、露出女の言葉は魔獣の襲撃によって中断してしまう──
魔獣は四方から一斉に俺たちに襲いかかってきた。その数、五体──襲いかかってきた一体は、マリフィルが両手に出した光る電撃の鞭のような攻撃で後ろに退け、もう一体はユキの絶対零度で氷漬けにして動きを止める。残る三体が俺たちに向かって突撃してきた。
「きゃー!!」
魔獣の一体の攻撃で地面が抉れる。その攻撃で固い岩盤から剥がれて飛んだ大きな石の塊がニジナの肩に直撃する。
「大丈夫か、ニジナ!」
それを見て思わず声を上げる。ニジナはかなり痛いのだろう……声をかけても小さく呻くだけで動けない。流石に心配になって駆け寄った。
「──ジンタ……すっごい痛い……もうダメかも……」
ニジナは近づいた俺に変に密着しながら顔をしかめてそう訴える。
「何言ってんだよ、早く回復魔法使えばいいだろう!」
自分が回復職であるのを忘れているようなのでそう指摘してやる。
「……もう!……もう少し気の利いたこと言ってよね」
「なんだよ、気の利いたことって?」
俺がそう言うと、ちょっと怒ったようにブツブツ言いながらニジナは回復魔法を自分に唱えた。
キネアとロッキンガンは素早い動きが売りのシーフとレンジャーだけあって逃げるのがうまい、魔獣たちの攻撃を避けて逃げまくってる。シュラは魔獣の一体と戦っているが、心ここに在らずといった感じで戦闘に身が入っていない。
まともに魔獣にダメージを与えているのはユキとマリフィルの二人だが、それでも強敵の魔獣相手に致命傷は与えられていなかった。俺はそんな戦況を見ながら、両手を組んでこの戦闘を静観している人物に声をかけた。
「おい、エルフィナス……どうしてお前は戦わないのだ、私がいるから心配することはないなんて偉そうなこと言ってたのに……森での戦闘も静観してたし、やる気あるのか」
そんな俺の抗議に、エルフィナスはウンウン頷きながらこう返答した。
「いやな、冒険者にとってモンスターとの戦闘は経験値を得る大事な行事だからな、その機会を簡単に奪ってはいけないと思うのじゃ、だから本当にピンチになったら助けようと思ったのだが……今がそうか?」
ピンチの判断もできないのに静観してたのかコイツは……
「魔獣が五匹も襲ってきて、ピンチじゃないわけないだろ! 早く助けなさい!」
「うむ、よかろう、しかし、助ける代わりに一つだけお願いがあるんじゃが……」
「なんだよ」
「召喚士に私の胸を揉んで欲しいのじゃ」
突拍子もないその願いに絶句する……
「なっ……」
「どうなのじゃ、揉んでくれるのか」
「わかったよ、後で揉むから助けてくれ」
何を考えてるのかわからないけど、もう面倒臭いのでそれを了承した。その言葉を聞いたエルフィナスは、ニコリと今日一番の笑顔で微笑むと、東洋の着物に似た特殊なローブの襟を正した。
五次職冒険者……うちのダメマスや、憧れのリスティアを知っているので、その強さは想像できたけど……
「お前の姉ちゃんスゲーな……」
エルフィナスの戦いを見た俺は、その凄まじさに思わず妹のニジナにそう言っていた。
エルフィナスの戦闘スタイルは、五次職に多い近接、魔法を使いこなす万能型ではなく、魔法特化の高火力攻撃型のようであった。エルフィナスはいきなり魔法の詠唱をすると、大きな青い刃を無数に出現させた──
エルフィナスの青い刃は、パラパラと少し不規則な動きをしながら、魔獣たちに襲いかかる。その威力は青い刃を受けた魔獣の末路を見れば一目瞭然であった。
「私の魔獣が一撃で……」
露出女も驚きの声を上げる。レベル100越えの魔獣を一刀両断した青い刃の攻撃力は想像を絶する。
エルフィナスの青い刃の魔法は三体の魔獣を屠った。残りの二体も致命傷を受けて地面に転がる、その残った二体の魔獣もユキとマリフィルの攻撃で息の根を止められる。
「すごいぞエルフィナス! やればできるじゃないか」
「ふむ、流石にランク22の攻撃魔法はやりすぎたようじゃな」
ランク22って……四次職のアークウィザードが使う攻撃魔法でもせいぜいランク10くらいなのに……思ったよりすごいんじゃないのかこの変態姉ちゃん──
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