第134話 涙と雫


起きると、エルフィナスが横に寝ている……彼女の顔を見て、昨日のジンタとの行為を思い出す──


うわ……ジンタと色々しちゃったよ……


昨日は必死で、余裕がなかったのであれだったが、今、冷静に思い出すと、かなり恥ずかしい事をしていた。


でも……これで私とジンタは……恋人同士になったんだよね……キスもしたし……おっぱいも見られたし……最後までは行けなかったけど……

普通は恋人同士がする行為をした事で、既成事実が成立したと私は考えていた。


洗面所で顔を洗っていると、キネアが絶妙に意地悪い顔で近ずいてくる。


「ニジナ、で、どうだったの? 詳しく話しなさいよ!」

「どうって何よ」

「昨日の夜よ、ジンタとやっちゃったの?」

「……キスは…………した……」

「えっ。それだけ? ちゃんと避妊具も渡したでしょ」

「……エルフィナスが途中で部屋にきたから……」

「へぇ〜まあ、行為をしようとはしたのね、ニジナにしてはすごい進歩じゃない」

「だけど……よく考えたら、やっぱりちゃんと順序を踏んでそうなりたいかな……」

「何言ってんのよ、そんな行為だって、立派な順序の一つでしょ」

「そうかな……」

「そうだよ、だからめげずにアプローチしなさい」


あまりそんなアプローチばっかりしてると、ジンタにエッチな子って思われないか心配になるんだけどな……



どうもまだジンタと顔を合わすのは気まずかったので、一人テラスでお茶を飲んでいると、エルフィナスがやってきた。


「ニジナ、ちょっといいですか」

「いいけど……」


エルフィナスは少し小声で話を始める。どもうその様子が胡散臭いので身を引いて聞いていたのだけど、話の内容はたわいもない事だった。

「えっ! 女神様がジンタに、クエストの内容を間違って伝えたから、なんとかそれを誤魔化して訂正してくれって? 何よその話……そんなの普通にジンタに伝えればいいじゃない」

「馬鹿者!! ラミュシャ様に恥をかかせる気ですか! 女神の言うことは絶対です! 間違いがあってはならないのです! ですので今回の件も召喚士が聞き間違ったことにならないといけません!」


「……相変わらずだね……エルフィナス……女神様はなんて言ってるのよ」

「これはラミュシャ様の命ですよ、ニジナ」


う〜ん……その命ってのが嘘くさいんだって……まあ、でも本当に女神様のお願いだったら無視するわけにもいかないし……


「わかったよ、なんとかジンタを誤魔化して、聞き間違った方向で話を持って行こう」

「理解してくれて助かります」


正直理解なんてしてないけど、ここで反発しても面倒臭いだけだから……


という事で、ジンタがクエスト内容を聞き間違ったという方向に誘導する為に、朝食時に何気なく話を振った。


「そういえばジンタ、四次ジョブクエストで必要なアイテムの名前ってなんだっけ?」

「おいおい、ニジナ、もう忘れたのか? 女神の雫だ」

「あれ? そうだっけ? 女神の涙じゃなかったっけ?」

「何を言ってるんだ、女神の雫だぞ」

「嘘だ〜女神の涙って言ってたよ」

「ふっ……俺は記憶力だけはいいんだ、間違いない! 女神の雫だ」

「どこかにメモとかしてたの?」

「そんなものはしてない!」

「それじゃあ、記憶違いってこともあるじゃない」

「……確かにそうだな……いや……でも女神の雫だったと思うぞ……」

よし! 少し記憶に自信がなくなってきた見たい……ここで畳み掛けるように、口裏を合わせるよにお願いしていたキネアが援護してくれる。


「何言ってんの、ジンタ、前に聞いた時には女神の涙って言ってたじゃない」

キネアにもそう言われてますます自分の記憶に自信がなくなってきたジンタは頭を抱える……そんな姿を見て少し罪悪感が湧いてきた……


「まー女神の涙だっていうんだったら話は早えじゃねえか、昨日行ったとこに女神の涙だったらあるんだろ? それでクエストクリアーで万々歳じゃん」


シュラちゃんの言葉がトドメの一撃になった。ジンタはパッと頭を上げこう言った。

「それだ! そうだよ、女神の涙だったような気がしてきた。まあ、仮に女神の雫だったとしても、女神がそう言ったと難癖つけて強引にクエストクリアーってことにすればいいじゃないか! よし! それで行こう!」


まあ……本人が納得したからいいか……

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