第76話 ギルドミッション
ルキアとユキは冒険者組合の建物に入ると、目的である窓口を探していた。かれこれ二時間ほど・・
「どうしてここはこんなに広いんだろな・・」
「ルキア。ここさっき通ったよ」
「え。そうだっけ?」
どうやら同じ所をグルグルと回っているようだが、地形を覚えるのが苦手なルキアはそれすら気がついてないようだ。
「もう、その辺の人に聞いたらどうかな」
ユキの当たり前の提案に、ルキアは頷く。
「そうだな・・最終手段だ、誰かに聞こう」
なぜ、場所を尋ねるのが最終手段なのかはわからないが、ルキアは思い切って歩いてきたおじさんに聞いてみた。
「え、冒険支援課の窓口はどこかって? さぁ、ワシもここに来たのは初めてだからの」
ルキアはそう答えられてなぜか頭を抱える。
「くそ・・これで八方塞がりか・・」
絶望的な表情のルキアに、ユキが軽くアドバイスする。
「ルキア。別の人に聞くって選択が残ってるよ」
「あっ。そうか、その手があったな」
三人目のおばちゃんに尋ねた時に、ようやく、目的の場所を聞くことができた。
「ああ、冒険支援課は一階の入り口を入ってすぐ右のとこだよ」
どうやら入ってすぐにその場所はあったみたいなのだが見逃していたようだ。それを聞くと、おばちゃんに礼を言って、ルキアは階段を上り始めた。
「ルキア。あのおばちゃん、一階って言ってたよ。どうして階段を上がるの?」
「どうしてって、1階の入り口に戻る為だぞ」
どうやらルキアは、来た道を戻って入り口までいくつもりだったみたいである。さすがに非効率だし、来た道を戻ると言ってもそのルートを覚えてないので不可能だと思われた。
「とりあえず一階に行って、入り口の場所を他の人に聞くってのはどうかな」
そのユキの提案を聞いて、ルキアは驚愕する。
「なんと・・・ユキ・・お前、天才だな」
そのユキの提案が採用されて一階に戻り、廊下を歩いていたエルフのお姉さんに入り口を聞いてなんとか目的地に到着した。
冒険支援課の窓口に行くと、その場にいた冒険者組合の職員たちがルキアの姿を見て騒めき立つ。さすがに五次職のルキアは有名人なので、誰もがその存在を認識していた。
「あれってルーンプリンセスのルキアよね・・」
「うわ・・後でサイン貰おうかな」
「どんな用事で来たんだろう・・」
「たぶん、何かすごい事案で来たんじゃないかしら」
まさかただ書類を提出しに来ただけとは誰も思ってないようで、職員達は勝手な想像でルキアの訪問を噂していた。
ルキアは、窓口に行くと、一言、こう言った。
「大事な話がある。担当者を呼んでもらえるかな」
今日が締め切りの大事な書類の提出である。ルキアにとってそれは大事な話であった。だけど職員達はそれをそのままの意味で捉えた・・
あの五次職の冒険者が、大事な話があるとはっきりと言った。裏にいた職員達は慌て始める。すぐに直属の上司にその話が持ち上がった。
「何・・あのルキアが大事な話があるじゃと・・」
冒険支援課の課長である細身のドワーフの男は、それを聞いて一つ思い当たることがあった。
「まさかイノーマス・パニックの話をどこかで聞きつけてきたか・・さすがはあのルーンプリンセスじゃな・・よし、では担当のミルフィネットに対応させるとしよう」
すぐにミルフィネットは呼ばれて、ルキアの対応を担当することになった。
「あなたがルキアね。話は聞いています。詳細を説明しますので、こちらへどうぞ」
ミルフィネットには、ルキアがイノーマス・パニックを解決してくれるそうだと話を聞いていた。五次職のルキアが手を貸してくれるのなら心強い、すぐに詳細を説明して、具体的な解決策を話し合うつもりであった。
ルキアは豪華な応接室へと通された。書類と提出するだけでこんなとこに案内されるなんて、最近の冒険者組合の対応はすごいな・・などとルキアは考えていたが、何か勘違いされているとは微塵も思ってなかった。
「早速ですがこちらが詳細な情報になります」
そう言ってミルフィネットから渡された資料には、文字がびっしりと書かれていた。大量の文字を一度に見ると目眩がするルキアは、すぐに読むのを止める。
書類の提出方法って、こんなに複雑になってるのか・・そう思いながら、なんとかこの場をやり過ごす事を考える。
「理解した・・問題ないよ」
ルキアは資料を読んだ振りをして、全然理解もしてないが適当にそう返事をする。
「問題ないって・・・さすがルキアさんです! それでは全面的にパルミラギルドにこの件はお任せして宜しいですか?」
「もちろんだよ」
それがどんな意味を持つかなどルキアは考えていなかった。書類を提出したいだけなのに、なぜか大量の書類にサインを求められる。言われるままに、すべての書類にサインをして、めでたく、パルミラギルドは冒険者組合の発動したギルドミッションを受けることになった。
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