第44話 大変です。迷子です。
どれくらいの時間が経過しただろう・・・ウロウロと動き回りみんなを探すのだけど、今いる場所がどこかもわからず、ただ時間だけが過ぎていた。
「ジンタ。もう疲れたぞ」
ユキが疲れて駄々をこね始めた。確かにずっと歩いていて疲労が限界に来ていた。
「そうだな・・仕方ない。どこか安全な場所を探して休もう」
近くにモンスターポータルが無く、見通しの良い場所を探す。すると広いフロアーで、隅に大きな岩がある場所を見つける。ここの岩陰なら見つかりにくく、敵が来てもすぐにわかるくらいの見通しはある。地面が硬く、寝心地は悪そうだがここに決めた。
パンと干し肉くらいしかないけど、それで食事を取る。お腹が膨れると疲れからか眠気が襲ってくる。さすがに危険な場所なので、交代で見張りをして睡眠をとることになった。まずはニジナとユキを休ませて、俺は見張りをする。
幸いなことに、休んでいる時に敵の襲撃はなかった。十分な休憩を取ると、みんなを探す為にまた歩き始める。
「ジンタ。ちょっと思ったんだけど・・この道、少しずつ下に向かってない?」
二人が横に並んでギリギリ歩けるほどの狭い通路を歩いている時に、ニジナがおもむろにそう言いだした。確かに通路は緩やかな下り坂に見える。
「確かに下ってるように見えるが何か問題か」
「いや・・だって奥に進んじゃって、ブラックドラゴンに遭遇したりしたらどうするの」
「ふっ。何をビビっている。その時は逃げればいいじゃないか」
「逃げれなかったらどうすんのよ」
「倒せばいいだろ」
「頭沸いてんじゃないの? 私たちだけで勝てるわけないでしょ」
「やる前から諦めてどうする! それでも冒険者か!」
「現実を見なさいよ! 私はまだ死にたくないの!」
「俺も死ぬのは嫌だ! なので引き返そう」
ニジナは口を開けてあんぐりすると、あきれたようにこう言い返す。
「・・・・・たまにジンタが本気でわからなくなるわ・・」
「ふっ。気にするな。俺も自分がわからなくなる時はある」
完全に呆れたニジナは、ジンタの言葉を無視してUターンする。それを見てジンタは意味もなく頷きながら後をついていった。
俺たちは上へと向かっている通路を探す為に来た道を戻っていく。キャンプをした広いフロアーからいくつか道が伸びていたので、上に行きそうな道を選んで進んで行く。
だが、しばらくなだらかに上へ向かっていたが、その道すぐに下り坂に変わった。
「おい・・また下がり始めたぞ」
「そうね・・戻って別の道に行ってみる?」
戻って別の道へと進んでみたがそこも最初は上り坂だったのに、すぐに下り坂に変わた。
「結論! どうやらこの広いフロアーは盆地になってるようだな。なので最初は上りになって、そこから下り坂になってるんだ。なのでもう少し進まないと、実際どこへ向かってるのかがわからん」
「仕方ないわね・・勘で進んでみましょう」
なので結局、最初の道を進んでみることになった。
30分ほど進むと、道がどんどん上へと向かい始めた。これは正解かな思い始めた頃、キャンプしたフロアーよりさらに広い場所へと出た。ここは光苔の量が多いので妙に明るい。
広いフロアーの中心に不気味な黒い大岩が転がっている。俺たちはそれを回り込むように次の道を探した。だけど広いフロアーの割には次の道が見つからない。どうやらここで行き止まりになってるようだ。
「どうも行き止まりのようだから戻るか」
「そうだね」
と、戻ろうとした瞬間・・俺たちは強烈な咆哮を後ろから浴びせられる。
「ぐっ・・なんだ!」
「やばいよ・・この咆哮・・スタン効果があるみたい」
何・・スタンだと・・確かに体が思うように動かない。
動きの鈍った体をなんとか動かして、俺は後ろへ振り返る・・そこで見たのは咆哮を放った正体であった。
「うわ・・やべ・・ニジナ。黒いドラゴンだ・・」
「ちょっと! それブラックドラゴンだよね」
ニジナはまだ体を動かすことができないようで、体をもぞもぞとさせながらそう叫ぶ。
「うわ・・なんか大きく口を開けて、やばいの吐き出しそうだぞ」
俺がそう教えてやると、ニジナは青い顔して必死で体を動かそうとしている。そして今にも強力なブレスを吐き出す瞬間、スタンが平気だったのか普通に動いているユキが、ブラックドラゴンに攻撃を放つ。
「絶対零度!」
猛烈な冷気がブラックドラゴンを襲う。あらゆる耐性のあるブラックドラゴンでも、ユキの絶対零度は効果があるようで、どんどん体が凍結していく。
「どうなったの? ユキちゃんの絶対零度は効果あったの?」
まだ動けないニジナは不安そうにそう聞いてくる。それにしてもニジナはまだ動けないなんて、スタン耐性が皆無のようだな。
「よし。ユキよくやったぞ」
そう褒めてると、ユキは真剣な顔でこう言う。
「まだ・・まだ死んでない・・・」
ユキの言葉の通り、氷結したブラックドラゴンの体にひびが入り始める。氷が砕けるのも時間の問題のように見えた。
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