第32話 深い闇の中で
新しい狩場は、ルーディアから南にあるワラムダンジョンと呼ばれる1階層の広いフロアーがあるだけの場所であった。単純な構造なのだが、ここはすごく恐ろしい狩場であった。それは光源が少なく、かなり暗い場所だからである。そんな場所を狩場に選んだには理由があった、そう、ここは美味しい狩場なのだ。
暗くて危険な場所なので人気はイマイチであるが、経験値の高いモンスターが大量に湧くので、中級冒険者のレベル上げではかなり効率が良いとされていた。
「ニジナ。ライト上げて」
俺がそういうと、ニジナが上に向けて、かなり強い光を放つ玉を投げる。それは上空で止まり、周りを明るく照らした。
ワラムダンジョンはワンフロアーになっていて、天井も高く、かなり広い空間になっている。中心の天井から光を照らして、その広い空間を照らし出した。
暗くて見えなかった全貌が映し出される。そこには数百はいる魔物の群れが闊歩していた。
「数がすげ・・・」
キラーラビットと呼ばれる魔物が大半を占める。幸運の兎とも呼ばれるモンスターで、こいつの経験値がすごく良いと言われている。だけど幸運の兎、何て言われているが、その戦闘力は侮れない。レベルも20と高く、数が多いと平均レベル30の8人パーティーが苦戦することもある。
光で照らされて、俺たちの存在に気がついたダンジョンの魔物が、一斉に襲いかかってきた。
密集しているので範囲攻撃が有効そうである。俺はファイヤーボールを、ユキはアイシクルランスを、シュラはサークルブレードを、ニジナは、レベルアップで取得した攻撃魔法、ホーリースパークという神聖魔法を一斉に放った。
俺のファイヤーボールはそれほど効果がなかったようだけど、他の攻撃は絶大な威力を発揮している。シュラのサークルブレードは兎の首を飛ばし、ニジナのホーリースパークは、邪悪な魔物を黒焦げにする。特に強力なのはやはりユキのアイシクルランスであろう。氷の槍に貫かれたキラーラビットを一瞬で消滅させた。
戦闘補正を上げた効果であろうか、ユキとシュラの戦闘力が明らかに上昇していた。これならここでも狩りができそうであった。
だけど、そう思ったのも束の間、フロアーの奥から大物が現れる。
「やべ。アースジャイアントだ・・・」
大量のキラーラビットに加え、アースジャイアントと戦うことになるとかなり危険だ・・さて・・どうするか・・そう考えていると、アースジャイアントの足元に見慣れないモンスターがいることに気がついた。
目を凝らしてよく見ると、どうやら人型のモンスターのようである。アースジャイアントが影になっていてよく見えない。
アースジャイアントは攻撃力と体力が飛び抜けて高いが、動きはそれほど速くない。奴が近く前に、周りのキラーラビットを一掃することにした。
「アースジャイアントが近く前に、周りのキラーラビットを倒すぞ!」
そう声をかけると、皆それを了解する。
俺は基本、役に立たない。ニジナは回復やサポート優先で魔力を温存している。シュラとユキを中心に、キラーラビットを殲滅していく。
ギリギリ、アースジャイアントの接近より速く、キラーラビットを倒すことができた。あとはアースジャイアントを集中して倒すだけだ。
しかし、俺は見つけてしまった。アースジャイアントの足元にいる可憐な彼女の存在を・・・
「ぐはっ!」
思わず声が出るほどのエロさがそこにあった。キラーラビットの変異かな・・兎の耳に丸く柔らかそうな尻尾・・しかし体は少しポッチャリとした女体であった。少しふくよかだけど、その柔らかそうな肉体は熟練された性の象徴に見えた。顔は童顔なのだが、体は完全なる熟した女体、そのアンバランスな感じもまたエロい心をくすぐる。
よし・・なんとかあの子とエロいことをしよう。そう考えたら後は実行するだけである。俺はアースジャイアントのことなど忘れてうさ耳獣人に襲いかかった。もちろんそれを隣にいるアースジャイアントが黙って見てるわけもなく、手に持った棍棒のような武器で、殴りかかってきた。
「アーマープロテクト!」
ニジナがとっさに物理耐性アップの支援魔法を唱えた。俺の体が淡い光に包まれる。かなり強力な物理耐性が付加されたが、アースジャイアントの一撃は強力であった。直撃を食らった俺はその場で気を失う。
ジンタ・・・ジンタ・・遠くでみんなの声が聞こえて来る・・・しかし、頭をよぎるのは先ほど触り損ねたうさ耳獣人の豊満な胸である。あれを見たい! 触れたい! 触りたい! そうだ、こんなところで寝ている場合ではない! 俺は底にある気力を振り絞った。
「うぉおおおお!」
力を入れると、頭の傷口から血が噴き出した。だけどそんなのは関係ない。身体中血だらけになりながら俺はうさ耳獣人を探した。だが・・どこにも見当たらない・・俺を殴ったアースジャイアントはしっかりとそこにいるのに、うさ耳はいない・・・
「あれ・・うさ耳は?」
俺は間抜けにそう聞いていた。何を聞かれているのか理解できない仲間たちが呆然としていると、俺は視界がどんどん失われていき、そのまま倒れてしまった。
気がついたのはワラムダンジョンの外であった。ニジナが心配そうに俺を見ていた。
「ジンタ。大丈夫・・・血が致死量くらい出てたけど・・」
「うむ・・何とか大丈夫だ・・あれ・・アースジャイアントは?」
「ユキちゃんが絶対零度で倒してくれたよ。それでシュラちゃんがジンタを背負ってここまで逃げてきたの」
「そうか・・・二人ともありがとう・・」
「ジンタ。ニジナも必死で回復魔法かけて頑張ってたぞ」
シュラがニジナの功も説明する。
「そうか・・ニジナもありがとう」
そう言うとニジナの頬が少し赤くなった。
「それにしても、ジンタ。なぜ突っ込んだ?」
ユキが当然の質問をしてくる。うさ耳獣人の胸を揉む為だとも言えず、適当なことを言った。
「アースジャイアントの注意を引こうと思ったんだけど、思ったより前に出ちゃったんだ」
その説明でなぜかみんな納得したようだ。とりあえずその日は、俺のダメージも考え、狩りはそこまでとなった。明日もここに来てうさ耳を探さなければ・・
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