D-Queen バーレスク

むむ山むむスけ

第1話 女神の退廃

今宵は週末―――…

世間ではいつも以上に街に人が集まり、

そして夜が更けゆく事も忘れて

賑わっている。


目もくらんでしまいそうなくらいに明るい照明に、激しい音楽。


そしてその中で闘い続ける少女達…。


いまや観衆スペクテーター達のテンションも最高潮となっており、ひとたび彼らが一斉に歓声を上げれば、この建物を揺るがしてしまいそうなくらいに会場内は盛り上がっていた。


そんな華やかな外の世界と同一の敷地内に存在しているとはとても思えないような

この薄暗いトイレの洗面台の鏡の前に

静かに俯いている一人の女性の姿があった。


きちんとした整備すらも

されていないのであろう。

光に向かって思いっきり体当たりをする羽虫の動きと共に、不規則に蛍光灯が点滅している。


そんな揺れる光に照らされたその女性の表情は、もはや自身が身に纏っているド派手で奇抜な衣装とはまるで相反するかのように冴えない顔色となっていた。


ふと見つめると自分の右手が

小刻みに震えている。


その震えを再度確認した彼女は、

目の前の蛇口を乱暴に捻ると

そのまま流れ出した冷たい水道水を使って

勢いよく顔を洗った。


「…もう…限界という事なのね…」


先程から聞こえている羽虫の当たる音と、

自分の顔からしたたり落ちる水滴の音だけが響き渡るこの静かすぎる空間で、彼女は鏡の中に映った自分に向かってそう重たく呟いたのだった。

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