職業変更(クラスチェンジャー) ~俺だけ職を変更できるみたいなので、最強を目指します~
黄昏時
第1話 不明確で無説明の召喚
教室で授業を受けていると、それは唐突に起こった。
何の前触れもなく、突如として全身が宙に浮いたかのような浮遊感を感じると、次の瞬間には地鳴りのような音と共に強い下への衝撃に襲われた。
「うっ!!」
そのあまりの衝撃の強さに、俺は思わず声が漏れる。
何だ今の!?
地震? ……いや、地震とは明らかに違うものだった。
「何今の!!」
「地震だ!!」
そんな声がクラス……いや、学校中から聞こえてくる。
どうやら俺の錯覚や夢って訳ではなかったみたいだな。
にしてもさっきの衝撃は一体……
「どうなってるんだよこれ……ま、周りが……」
俺がそんな事を考えていると、不意に窓際のクラスメイトが震える声音でそう言った。
その声があまりにも切羽詰まったモノに聞こえて、俺は咄嗟に声の聞こえた方に視線をやる。
「……っ!!」
俺は自身の目に映ったあまりの光景に、声にならない声を発し驚愕した。
何故なら窓の外には普段見慣れた町並みではなく、木々が鬱蒼と生い茂る森が広がっていたからだ。
どういうことだ!
一体何がどうなってるんだ!!
俺は夢でも見てるのか?
俺はあまりの衝撃でそう考え、自身の手の甲を強くつねる。
……痛みを感じるという事は夢じゃないという事か。
痛みで少し冷静にはなれたが、それでも尚思考がおいつかない。
一瞬で木々がこれ程成長し生い茂るなど、どう考えても物理的に不可能だ。
それを可能にする可能性……
「……これってもしかして、異世界転移?」
俺がそんな事を考えていると、不意に後ろからそんな声が聞こえた。
それは流石に現実的ではないだろう……と言いたいところだが、この外の景色を見てからではその言葉を強く否定する事が出来ない。
それ程までに今はあり得ない状況なのだ。
「なら……ステータス、表示、オープン、現れろ」
今度は小声で、まるで何かを確認するかのような声が後ろから聞こえてくる。
確かに、確認は大事だ。
否定するにしても肯定するにしても、証拠がなければ納得は出来ないからな。
それを代わりにやってくれるというのなら、俺としては大歓迎だ。
「……ステータスオープン……っ!!」
声が聞こえなくなったという事はつまり……
俺はそう考えながらチラッと後ろに視線をやる。
するとそこには、満足げな笑みを浮かべるクラスメイトが居た。
俺はそれを確認し小さくため息をつく。
どうやら彼の予想は的中してしまったみたいだ。
となると今後はどう転ぼうと面倒な事になるのは必然だろうな。
何せ彼の反応を見るに、明らかに元の世界と理が違うみたいだからな。
とは言え、そんな状況に多少なりとも心が躍っているのもまた事実……
だが自身で確認せずにそうだと決めつけるのは早計だろうな。
確か……
「ステータスオープン、だったか?」
俺が周りに聞こえないように小声でそう言うと、目前に半透明のウィンドウが現れた。
こんなのが出てきたら否が応でも認めなければならないだろうな。
ここは元の世界とは別の世界なんだと……
俺はそう思いながら、目の前に現れたウィンドウに目をやる。
★
名前
性別 男
職業 未選択
生命力 16/16
魔力 20/20
力 13
守 14
抗魔 19
敏捷 10
器用 20
精神 18
▼スキル
[
★
……これはまたえらくゲームみたいだな。
だがまぁ、そのお蔭で能力の数値や意味もある程度理解できるわけだが……
とは言えこの数値に関しては、他の人間の数値を知らない現状では高いのか低いのか何とも言えない。
それならば今はスキルについて考える方が有益だろう。
この先何がどう転ぶかわからない現状で、自身が持っているカードは出来るだけ把握しておかなければならない。
しかしながらそのスキルでさえ、現状では名前から効果を予測する事しか出来ない訳だが……
一つを除いて効果に関してはある程度予測できそうなスキルで助かった。
特に[言語翻訳]何てそのまんまの意味だろう。
ただその言語と言うのが一体何、あるいはどこからどこまでをさすのかについては要検証が必要だろうがな。
[早成]に関しては、通常より早く成長できるという感じではないだろうかと予測できる。
ただここで言う成長も、果たして一体なにをさすのか……
肉体的なモノなのか、精神的なモノなのか……はたまた、ステータスに関連するモノなのか。
こればっかりは確認しようにも、あまりにも急激な成長でもない限り自覚するのは難しそうだ。
ステータスの成長に関しては比較対象さえいればどうにかなりそうだが、問題はその相手が居るかどうか、だな。
正直、こうパッと説明が出てくれれば楽で助かるんだが。
俺はそう思いながら、何気なく表示されているステータスの[早成]を軽くタッチする。
すると、突如目前に新たなウィンドウが出現した。
[早成]
Lvアップに必要な経験値を大幅に低減する。更にLvアップによって得られるステータス値に対して追加ボーナスが付与される。
マジか……
確かにこんな感じで説明が出てくれれば助かるとは思っていたが、まさか本当に出るとは……
しかしこれは俺としては非常に助かる。
勿論、今表示されている情報が正しいとは限らないという事はわかっている。
わかっていてなお、助かるのだ。
何せ名前からは一切予想できないスキルが一つあるからな。
少しでもそのスキルに関するとっかかりがあるに越したことはない。
それに表示される情報が正しいと判断できれば、ある程度その説明文に頼ることが出来る。
まぁ今はとりあえず、他の二つのスキルを確認するのが先だな。
俺はそう思いながら、[早成]以外の二つのスキルを軽くタッチする。
[
クラスポイントを使用して職業を変更できる。
クラスポイントは職業レベルを上げるごとに5獲得する事が出来る。
初期職業はクラスポイント50を使用して変更。
下位職業はクラスポイント150を使用して変更。
中位職業はクラスポイント250を使用して変更。
上位職業はクラスポイント500を使用して変更。
特殊職業はクラスポイント1000を使用して変更。
現在のクラスポイントは50ポイント。
[言語翻訳]
言語を自動で翻訳及び通訳する。
[言語翻訳]に関してはある程度予想通りと言ったところか。
実際は予想よりも遥かに高性能で、融通が利かなそうではあるが……まぁ、許容範囲だ。
それよりも問題なのは[
この説明文だけ見れば、あたかも職業を変えられることが特別であるかのような言い回しだ。
しかしながら俺はこの世界におけるその職業とやらを知らない。
例えば元の世界と同じように自身の意思で選び、再び選択しなおす事も出来るのか?
はたまた、一度決めると変更する事は出来ないものなのか?
仮に後者であった場合は文言通り特別な能力だという事になるが、前者であった場合これはただの足かせでしかない。
…………どちらであろうと、今俺に出来る事は変わらないんだがな。
と言うより、現状では他に選択肢が無いという方が正しいか。
例え前者だろうと後者だろうと、今は自衛できるだけの力が必要だからだ。
こんなステータスやスキルが存在する世界でただの学生のままでいるという事は、戦場を武器も持たずに突っ走っているようなもの。
ならばこちらも武装するのは必然だろう。
ステータスと言う名の鎧をかぶり、スキルと言う名の武器を携える。
そうして初めて、この世界の土俵に立ったと言えるだろう。
まぁ、兎に角今は選ぶしかないって事だ。
とは言えどうやって選ぶかはわからない訳だが、恐らく今までの感じからいくと……
俺はそう思いながら、ステータスに表示されている職業の未選択と言う部分を軽くタッチする。
★
職業選択
所持ポイント 50ポイント
▼選択可能職業
▼初期職業
★
すると予想通り目前に新たなウィンドウが出現した。
やはり出たか。
にしてもふざけてるんじゃないかと思うような職業だな……
何だよ
これは果たして職業と呼べるものなのか?
他に選べる職業はなさそうだからこれを選ぶしかないんだが……
本当にこれを選んで大丈夫なのかと不安になってくる。
けれど選ばないという選択は存在しない訳で……
俺は決意するかのように心の中でそうささやき、表示されていた職業をタッチする。
★初期職業である
はい / いいえ
ご丁寧に間違いが無いよう、最終確認もしてくれるのか。
とは言えその決心はさっきした所なんだよな。
俺はそう思いながら、はいをタッチする。
★スキル[身体強化]を獲得しました★
★スキル[魔力操作]を獲得しました★
「この放送を聞いている者は教職員の指示に従い、直ちに体育館に集合してください」
俺が職業を選択した直後、唐突にそんな放送が校内に響き渡った。
本来ならピンポンパンポン的な音が流れてから放送されるのにそれがなく、口調自体もどことなく焦るような雰囲気を感じられた。
大人達もこの状況についていけていないのだろう。
だが混乱が大きくなる前に対処しようとする姿勢は感じられるな。
「繰り返します。この放送を聞いている者は教職員の指示に従い、直ちに体育館に集合してください」
正直職業を選択したことによって獲得できたスキルについて色々検証したかったが、この状況では控えるべきだろうな。
流石に周りに気取られることなく試す事は無理だろう。
にしても教職員の指示に従えとは言うものの、その教職員が居ないんだが……
もしかして今向かってるところなのか?
それにこの音量での校内放送……
悪い方にころが無ければいいが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます