リザード族の集落

今回の旅の目的地であったリザード族の集落に俺たちはとうとうたどり着いた。

リーサとネフェルが部族の皆に説明しに行ったので俺たち3人は馬車から荷物を降ろして行った。

どんどんと荷物を降ろしていく俺たちに子供たちが集まってくるのはどこに行っても同じのようでリザード族の子供たちが珍しそうに俺たちと荷物を見つめていた。

そんなこんなで荷物を降ろし終えたころリーサとネフェルがこちらに帰ってきた。


「ゴシュジン、部族の皆にあらかた説明はしてオイタ。それでスマナイが大ジジ様とババ様に会ってホシインダ。」

「本来ならば此方から出向くべきなのですが御二人とも高齢ですので、イサナさんから出向いてもらいたいのです。」


年寄りに苦労をかけるのもしのびないので一言了承しリーサについて行く事にした。

集落の中を通ると〈人間だ〉とか〈小さい〉とか〈可愛い〉とか聞こえ、多くの人たちが俺を珍しそうに見ていた。

集落は元の世界で言うところの日干しレンガの様な素材で家が造られており2階建ては見当たらず平たく広い家があちらこちらにあり案内された家はひと際大きかった。


「大ジジ様、ババ様入るゾ。」


リーサはそういうなり返事も聞かず中に入って行きネフェルも入って行ったので俺も後ろについて行った。

中にはリザード族の老婆と多くのクッションの様な物で埋もれるように寝ている老人がいた。


「ゴシュジン、これがここの長老のババ様と大長老の大ジジ様ダ。こちらのことは大体話してアル。」


「店長さん、今回は我々だけで解決せねばならぬ難題にも関わらず我等リザード族の為に手を貸していただき誠に感謝しております。そこの巫女はガサツで手が早い粗忽者ですが我が部族一の強者であります。是非、使い潰してやってくだされ。」


「こちらも商機になればと思い手を貸しただけですのであまり気にしないで下さい。それと塩以外にもいろいろと救援物資となればと思いご用意しております。ですのでそれらを配る際のお手伝いをしていただけないでしょうか?こちらでは誰にどれだけ配れば良いのか見当もつきませんので。」


「そうですな、先に必要最低限配ってしまいましょうか。ネフェル、準備は出来てるかね?」


「いつでも行けます。あとはババ様が皆に声を掛けてくだされば問題ありません。」


「ババ様、アレをゴシュジンに見せてやってクレヨ!いい思い出にナルゾ。」


「アレをかい?客人の前でするのは恥ずかしいんだがねぇ、まぁ今回は仕方ないね。とりあえず外に出ようか。」


何か面白いことをしてくれるらしいので家の外について行くとババ様がスーハーと深呼吸を繰り返していた。

何をするのかなと思いジッと見ているとカッと目を見開きそして


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


声にならない雄たけびをあげたのだ。

咄嗟に耳を塞いだのだがあまりにも突然だったので間に合わずちょっとフラフラする。


「ゴシュジン、リザード族の咆哮は凄いダロ!アレで仲間を呼んだり敵を驚かせたりスルンダ。今回は部族の皆を呼んダゾ。」


リーサの言う通り続々とリザード族が集まってくる。

俺は若干フラフラしつつもみんなの前に立ちリーサに紹介してもらい馬車のほうに戻って皆に塩や食料を渡していった。

ただ、仕入れたはずの衣料品や娯楽品は手つかずで残っていた。


「ネフェル、言われた通りに配ったが服とか酒とか残ってるぞ?」


「それは各々で買うように通達しておりますので気になさらず。」


「伝えているのならいいけどこれもリーサの金で仕入れた奴だから渡さないと損だぞ?」


「ええ、分かっております。ですから置いてあるのです!これらを部族の皆に買い取らせ1日でも早く巫女様を開放するのです!!」


「それはいいがお金はあるのか?この地域で完結してるなら物々交換が基本じゃないのか?」


「あ…いえ!きっと持ってる人は持っていますよ!ゼロでは無いはずです。大丈夫です!」


「そんなことだと思ったよ。とりあえず何か持ってきたら俺に声を掛けてくれ。【目利き】で調べるからさ。」


「ゴシュジン、ネフェル、話は終わったようだな。大ジジ様に塩を食べさせに行コウ。」


「大ジジ様にですか…無理じゃないですか?」


「やってみないと分からないダロ?もう一度ババ様の家に向かうゾ。」


そういうなりリーサは俺を俵のように担ぎ上げると先ほどの家に向かった。

ババ様が出迎えてくれたのでリーサがもう一度来た理由を話すと呆れたような表情で奥に入れてくれた。


「あの大ジジ様ってそんなに塩嫌いなの?てかそもそも起きてるの?」


「いつも寝ておりますがご飯を近づけたら食べてくれますよ。塩に関しては見て貰ったほうが早いです。」


リーサが小さな匙に俺の塩をちょこんと乗せて口に近づけるとパクっと食いついた。

ホントに寝てるのに食べるのかと俺は感心していたが他の3人は別のことを思っているようだった。


「食べたゾ?」

「食べたねぇ?」

「食べましたわね?」


「え?塩を食べることってそんなに不思議なことなのか?」


俺の問いにリーサはチョット待っててクレっと言うと奥の部屋に入って行った。

しばらくすると先ほどと同じ匙に別の塩を盛ってきた。

…なんだかあの塩をみるとモヤモヤするな、俺のじゃないからかな。


「大ジジ様、塩ダゾ。いっぱい食べるんダゾ。」


塩をいっぱい食べるのは不味い気がするが…

大ジジ様は匙を近づけられると先ほどとは違いイヤイヤと首を振り続け最後には腕を上げて振り払ってしまった。


「これダヨナ」

「これだねぇ」

「これですね」


3人はどこか納得した表情になりもう一度俺の塩を匙に乗せ大ジジ様のもとに持っていくとやはりパクリと食いついた。


「これはゴシュジンの塩が特別って事か?」

「かもしれませんね。まぁアレですしね。」

「アンタらが何を言ってるかは解らないがとりあえず大ジジ様が食べるという事は良い塩ってことなんだろうねぇ。」


とりあえず俺の塩は凄いってことになった、俺大勝利。


「スマナイね、店長さん。変な茶番に付き合わせてしまって。そうそう先ほど伝えて忘れていたが泊まる場所は此処を使うといいよ。客人なんてほとんど来ないから宿なんてないしね。」


「それは助かります。すいません、お二人の愛の巣に邪魔してしまって。」


俺がそういうとババ様はキョトンとした表情を浮かべた後に笑い出した。


「アッハッハ、大ジジ様とはそんなじゃないさ。まぁ知らなかったらそうも見えるか。せっかくだから晩飯食べながらリザード族の事とかこの辺りの説明をしようかねぇ。店長さんも遠路はるばる来たんだから儲けて帰って貰わないと我々の沽券にかかわるしね。」


「そういうことでしたら遠慮なく聞かせてもらいます。未開の土地は商売人にとって金脈と等しいですから。」


実は歴史物とか好きだからこう言うのはかなりありがたいな。

とりあえず決まったことを伝えに馬車に戻るとしようか。

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