神魔一斉在庫処分 神様の逸品お売りします。

マクガフィン

プロローグ

神様のお願い

 我が家では新年の10日に商売の神様の神社にお参りに行くイベントがあった。

 今回はたまたま1人で行くことになり2つの神社にお参りに行ったあとの帰り道だった、

 そこに車が突っ込んで来たのは。

 車が突っ込む先に親子が見えたと思ったら気づけば駆け出して突き飛ばしたとこまでは覚えている。

 普通に考えれば車が突っ込んで来て即死、良くて入院確実の重症だろう。

 なのに何故…


「なんで目覚めたら自室なんだ?」


 疑問は無意識に口から出ていた。

 考えていても答えは出ない。とりあえずリビングに向かうことにした。

 リビングの方からは男性二人の声が聞こえる。

 お客さんかなと思い、顔を出すと信じられない人がそこにいた。

 1人は狩衣姿で、右手に釣り竿を持ち、左脇に鯛を抱える姿が。

 もう1人は大きな袋に小槌を持って米俵に座っている。

 俺の知り合いにこんな人達はいてないし、正直ついさっき見てきた所だ、間違え用がない。


「え・・・だ・・・な、なんで・・・?」


 俺が驚きを隠せず声を上げると2人いや、2柱はこちらに気づいた。


「おお、兄ちゃん目覚めたんか。どこもいとーないか?」

「ほらあんちゃんそこでボケっとせんとこっち来て座り。ああ、お土産にお饅頭あるからな遠慮なく食べや。」


 2柱はまるで親戚のおじさんの如く気軽に声を掛けてくれて俺は混乱したまま質問に答え、席に着いた。

 自宅なのに凄まじく緊張した俺が席につくと2柱は状況の説明をしてくれた。


「兄ちゃんな、多分気付いとると思うけど死んでもうてん・・・」

「でもな、でもな。あんちゃんが助けた親子はかすり傷1つ無いで。だからそこは安心して欲しいわ。」

「せやで、あの親子、兄ちゃんにごっつ感謝してたで。」

「そやそや、見ず知らずの人に命張れるんは立派やそこは誇ってええで。」


 俺が無言だったためか凄くフォローをしてくれる。

 2柱の顔がだんだん泣きそうになっているのに気づき慌てて話始めた。


「ああ、そのあの時死んだんだろうってのは正直起きた時から何となく分かってました。ただ、解らないのは。福の神の貴方がたが死者に会いに行くとは聞いたこともないので。」


 そういうと2柱は顔を見合わせるとほっとしたのか一息はいて微笑みながら答えてくれた。


「そやな、福の神のワイらが死神よろしく会いに来たら戸惑うわな。」

「せやな、ワテらも久しぶりに人と話したからちょっと浮かれとったな。」


 そういうと2柱は真面目な顔になり話始めた。


「ワイは毎年欠かさずお参りに来る信仰心を見込んで」

「ワテは見ず知らずの人間に命を懸けれる勇気を見込んで」

「「お願い申し上げます。」」


 2柱はそういうと俺に向かって深々と頭を下げた。

 対する俺は神様に頭を下げさせてしまったとますます混乱する。


「そんな俺なんかに頭を下げないでください。どういうことか聞きますから頭を上げてください。」

「そないなこと言われてもお願いするのワイらやし」

「ワテらができるのはこれぐらいやから」

「いやいやいや、神様に頭を下げられたらこっちがどうしたらいいのか分からないんですよ。ほらほら、早く上げてください。」


 すったもんだの押し問答を行い、とりあえず両者落ち着こうということでお茶を入れ、お土産にもらったお饅頭を食べ一息ついたところで今回の騒動について説明をしてくれた。


「実はな兄ちゃんにはここではない世界で商売をしてもらいたいんや。」

「ただ、それがちょっと厄介と言うか面倒というか。まずは見て欲しい。」


 そういうと神様は大きな袋を俺の前に置き開いて見せた。

 そこには剣の物らしき柄がみっちりとこちらを向いて収まっていた。


「これは剣の柄ですか?」

「今見えてるのはせやな。ちなみに神様が作ったやつやから神剣とか聖剣とかのたぐいやでそれ。」

「ちなみに、全部そういうのや。ほかにも槍とか斧とかいっぱいあるで。」

「え・・・聖剣?これ全部が?・・・あのナンタラカリバーなあんな感じですか?」

「せや、エクスナンタラなものから始まりうちらのナンタラノ逆鉾、みたいなんもはいっとるで」

「それでな、売って欲しいのはそういうのばっかりなんや」

「ハァ!!!!え、それは神話の再現とかそんなことの片棒を担げと?そういうことですか?」

「とりあえず兄ちゃんちょっと落ち着き。ワイらも初め見たときはそう思ったしな。」

「そやな、それは半分正解半分間違いってとこやな。とりあえず説明するわな」


 とりあえず俺は落ち着く為にお茶を飲み、俺が落ち着いたのを確認すると説明をしてくれた。


「ことの発端はな違う世界の神さまが来たところから始まるんや。簡単に言うと神様の住む世界が自分らで作った武器とか本とか薬とかでいっぱいになってもうたんやて。」

「ただ、問題はあっちの世界にはまだ商売の神様っていうのがおらんらしいんや。せやからうちらに泣きついてきてなどうにかして欲しいって。ただ、ワテらも神様やからおいそれとは異世界にいからへん。そこで、ワテらの代わりに行ってもらいたい人を探してたんや。」

「そういう時に兄ちゃんを見つけたんや。もうな、ビビッて来た。これが恋かってぐらい痺れたわ。」

「難しいことを言うてるってのは解るんや。でもな、せめて考えることはして欲しいんやすぐに答えを出す必要はないからじっくり考えて欲しい。嫌やったらNOって言ってもええからな。」


 あらかたの説明をしてくれた2柱は探るような眼でこちらを見ていた。

 ただ、話を聞いてすぐに俺の中では答えは出ていた。

 いや、そもそも考える必要すらない話である。


「そのお話お受けします。」

「ええんか兄ちゃんそんな早く決めて?」

「せやであんちゃんもっと悩んでええんやであちらさんはもっと待ってくれるしな。」

「いえ、行きますよ。神様に頭を下げて断れるはずもないですし。それに…」

「「それに?」」

「ロマンじゃないですか。そういうのって。死んだ後に神様に頼まれて異世界に行く。そんな経験一生できませんよ。ああ、いや死んでるから一生ってのはヘンか…」

「そうか、そうか!流石はワイらが見込んだ。兄ちゃんやしっかりサポートするから任しとき。」

「せや、せや。あっちの世界の神様に目にもの見せてやるんや」


 こうして、俺は異世界でメイドイン神界の商品を売ることになったのだ。

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