第7話 残酷な能力


「そこまで言うんなら君の能力見せてもらおうじゃない! もし嘘が証明されたらこれ以上時和くんに手出しするのはやめてもらえるかな?」


「別にいいけど、恥をかくのはあなたの方と思うよ?」




そう言うとアーモンドは姿を消した。


思った通り俺の部屋で使った能力を披露したのだ、彼女の姿は誠と同じようにまた視界から姿が消えてゆく。




「どう? 私の能力は」


「瞬間移動か...こいつは驚いた、俺があんな苦労して得たものをこんな一瞬で手に入れるとはな」


「っふん、言っとくけど時和はこんなもんじゃないわよ、ねえ?」


「こんなものじゃない? それは本当か!? ていうかお前達いつのまにか仲良くなってたんだな」




余計な事言うんじゃねえ!!!


俺はテメエみたいな化け物と違ってごくありきたりな人間だ、能力なんて使えるわけねーだろすっとこどっこい。




「どれ、見せてみろ時和、お前の能力を俺も見てみたい」


「え...えと...せやな、じゃあ僕ちん試しちゃおっかな」




とにかくやったふりをしよう。


そして何も起きなかったらすかさず今日は調子悪いと言って誤魔化せばいいだけのことだ。




「はああああああああ!!!」




身体全身に力を溜める。


勿論何の意味も無いのだろうがこういうのは気合が大切だ、もしかしたら出るかもしれないしな。




「はあ!!!!!」




一瞬右手に意識をずらした時だ。


その右手はありきたりな人間の手から、少しずつ獣の手にへと変貌し、そして更に化け物の手にへと変わり禍々しいまでのオーラが辺り一面に晒される。




まず震えを発したのマスティマだ、彼女はアモンの殺気に一番怯えていたからこういうのに敏感なのだろう。


次に誠は口をぽかんと開けていた。


そしてアモンは何故か頰を赤らめ終始笑顔でヨダレを垂らしている。


空気はすっかり変わっていた。


そして何より変わっていたのは俺の右手だ。


悪魔のようなその右手の爪は鋭利に伸び、どんな獣が襲いかかろうとも負ける気はしなかった、




「いや、これは違うんだ!信じてくれ!俺は...」


「お前...」




言葉は遮られた。


誠は重い言葉を放とうと一歩ずつ近くまで迫り寄る。




「なんなんだそれは!? ひょっとして悪魔の手なのか!? お前にそんな力が...その力を使いこなせれば勝てるかもしれないぞこの戦争!!!」


「は?」




誠から出てきた言葉は予想もしないものだ。


俺の手を見て悪魔と疑わないとは...。


なんとか命拾いしたのだろうか。




「そうだ、お前の力が見たい...試しに向こうにある巨大な岩を思いっきりぶん殴ってこい」


「向こう...?」


「10km先だ、雷眼を使えば見えるんだがな、さっきの要領で試しに足を悪魔の足に変えてみろ、その力がもし悪魔と同じようなものなら30秒で向こうの岩につくはずだ」


「簡単言うけどな...」




だが運が良かったのかばれずに済んでるのだ。


ここは大人しく言うことを聞いたいた方が良いのかもしれない。




「はあああああああ!!!」




足に力を入れた、何も考えず誠の指す方角に足の力を加え飛び跳ねる。


30秒とかからない、およそ3秒だ。


岩を思い切り悪魔の手で拳を作り殴った、手応えありだ。


岩は粉々に砕け散る。


お菓子で出来てるのかというくらいの脆さだった。




帰りも悪魔の両足で飛び跳ねる。


少し離れた位置に着地した。


最初にしては大分調整出来てる方だが慣らしていかないといけないだろう。




「え、一体どうなったの!?」




アーモンドは悪魔の力を把握していたのでそれ程驚きはしなかったのだろうが、一人驚いてるのはマスティマだ。


彼女は天使な筈なのにどうなったかが分かっていないらしい。




「粉々に壊したのさ、北西432地点にある金剛岩を」


「う、嘘でしょ...キンバーライトが沢山あるあの岩を素手で壊しちゃうなんて...」




腰を抜かすんじゃ無いかというくらいにまで低姿勢になったマスティマはその事実を知って驚いていた。


しかし一番事実を知って驚いたのは俺自身だろう。




恐らくこれは誠の言うような能力なんかじゃない。


それはアモンも同様の事だ。


最初から能力を把握してるということは悪魔の力なのだろう。


そして自分という人間が死んだという思い込みから、一変しその残酷な事実は俺にアモンと同じ悪魔の力を持っているという事を伝えたのだった。

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