透きとおる世界

るちあさん

亜麻色の音

おかあさんへ


おかあさん ぼくはきょう

ひらがなをならったよ

いんちょうせんせいが

ぼくはおぼえるのがとってもはやいって

ほめてくれたよ

おかあさんにも ほめてほしいなあ

だから、だからはやく


ぼくをむかえにきてね


____________


朝。

眩しいひかりが瞼を押して、まだあまり回らない頭で上体を起こす。


そのまま布団の中でぼんやりと宙を見つめること、およそ5分。


おっと、これはまずい。

遅刻かもしれない、いや、遅刻だ。


いつも起きる時間より、二周多く回った時計といくらにらめっこしたって針が左に戻ってくれることはなく逆に刻々とぼくの時間を減らして行く。


どうしよう、急がなきゃいけない。

しかしどうだ、僕はお腹が空いているじゃないか。

「腹が減っては戦はできぬ」って言うよね、言うよ。

今日は大好きな戦闘訓練の授業があるんだ。

「対 無色ノ魔物 戦闘訓練」

ぼくの通う、国立魔導科 色彩学園は少し普通と違う学校で、どんなに成績優秀な生徒も、狙って入ることはできない。逆に入るべき生徒、「色に魅入られた」人はおのずと学園に惹きつけられて、入学する。

色に魅入られたぼく達は当然のごとく学園に入学して、青春という本の半分くらいのページを無色ノ呪を殲滅することに費やす。

でもぼく、戦うの好きなんだよ。

戦ってる時はぼくの時間の全てが誰かのためのものになるから、


うん、だから

お腹が減ってちゃだめだよなあ。


よし。ご飯、食べていこ。


冷蔵庫を開けて、鯖のみりん干しを出して

昨日炊いたお米の残りを確認して。あ、お味噌汁も作ろうかなあ。

「よく食べるね」って、いつも言われるけど

お腹いっぱいたべれたことはなくて、いつも八分目。まあそれが一番いいんだけど。


さて、お味噌汁ができて、ご飯をあっため直して。みりん干しと即席で作ったほうれん草のおひたしに手を出したあたりで気づいた。



「お弁当も作らなきゃ!」






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