第3話
それは強い衝撃だった。
外部から物理的にというよりは、内部がめまぐるしい速さで動いているようだった。
頭に心臓があるのではないかと思うほどの鼓動が激しく高鳴る。緊張で汗をかく。手は微かに震えていた。
人が、死んだ。
見てしまった。その黒い塊が人であったこと。その人が容赦なく電車に体当たりしたところを。
停止した電車内は一気にざわつく。「事故?」や「何?何があった?」など、原因を知ろうと体を痛めていない人々は窓の外をこぞって眺める。
頭上から車内アナウンスが流れ、人身事故であることと現状確認のために停車していることを詫びた。
僕は相変わらず緊張して体が強張ったままだった。
多少の雑音の中で明るい声が跳ねた。
「何あれ?ヤバくない?」「うわ、キモい」と言いながら、少しも怖がる様子を見せずにケータイで写真を撮る女子たちがいた。
お前ら、バカなのかよ?そんなもん撮ってどうすんだ?SNSにアップ?すぐに消されるだろうし、そんなもん見せられる側の立場になれ。
しかし、僕の思いとは裏腹に女子たちは楽しそうだった。
時が5分10分と経つにつれ、周りは苛立ち始める。
「いつ帰れんだよ」「まいったな……仕事が残ってるのに、まだ動かないのか」と、怒りを含めたぼやきが、ぽつりぽつりと宙を漂っていた。
こんな時でも仕事のことを優先させなきゃいけないのか。それが働くってことか。これが現実なのか?
なんなんだよ、こいつら。何でそんなに笑えるんだ?何でそんなに不機嫌なんだ?何で自分は関係ないと思えるんだ?
自分が乗っているこの電車で、人が死んだんだぞ?──何でそんなに平気なんだよ。
どれ一つとして僕の疑問に答えられる人も、状況もない。
そして、どこからか飛んできた凶器に僕の思考は停止した。
「この後の電車でやればいいのに」
──────────……
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