第8話|君がいたから(完)
「ふっ、う……うう」
急に涙が溢れ出た。次々と零れる涙を、カードを持ったままの手で拭う。むせ返るように溢れる感情をもはや止めることは出来なかった。
私だけに向けられた優しさも、喜ばせようとしてくれたことも、幸せを願ってくれたことも全部そうなのだ。
そっと父に肩を抱かれ、耐え切れずに私は声を上げて泣いた。
「これ、小学生の時に約束したの。真己が幸福のクローバー潰しちゃったからって。真己のせいじゃないのに、先に見つけたこと悪いと思って、それで……」
後は何を言っているのか自分でもわからなかった。子供のように泣きじゃくる私の背中を、父は何も言わず優しく撫でてくれた。
私は真己に愛されていた。こんなにも、愛されていたんだ。
気が付かなくてごめんなさい。もっと愛せば良かった。もっと早くに気付けばよかった。
今じゃ遅い。今じゃもう――真己はいないんだから。
――…
突然目眩と共にどこかへ堕ちていく感覚がした。自分だけ空間が切り離されたような孤独と恐怖。真っ暗闇に裸同然で放り投げられ、ただただ不安を抱くだけの、そんな感覚。
この感覚は…あの時と同じだ。お骨を納めようとした、あの時と。
※途中ですが、有料化のため、削除させて頂きました。申し訳ございません。
君がいたから 橘右近 @ucon_tachibana
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