続 新 金魚は世界最古の観賞魚
世界三大〇〇
第1章 サバゲー編
第1話
この日のまりえの天活はサバゲー。きっかけは、経営破綻したサバゲのフィールドを俺が買い取ることになったことにある。鯛焼き屋に次いで2つ目の地元商店の買収となった。高3の俺がどうして企業を買収できるのかというと、経営コンサルタントをしていた父が日本に残していった人脈と、金魚達の稼ぎによるものである。俺自身の能力では到底出来ない事ではあるが、ことのついでに俺達は天活を兼ねてサバゲーに挑戦することとなったのだ。俺は初めてのサバゲーに心踊り、勝手に盛り上がっていた。だから、あんなことになるとは思ってもいなかった。
「マスターと敵になるなら、わたくし達、帰らせていただきます」
あゆみは、そんな俺の気持ちと同様に気合いが入っていて、早速運営にクレームを入れている。チームバランスを考えて、俺達をバラバラのチームに入れたからだ。ゲームを楽しむためには仕方がないことだと思うが、俺はクレームを入れているあゆみの同じチームで戦いたいという気持ちが嬉しかった。だから、しばらくは様子を伺っていたのだが、あゆみは運営の説得が不調に終わるとみるや、妥協案を提示した。この提示方法がいけなかった。後になって思えば、あんなことがおこる前兆の1つだったともいえる。
「羽衣とあおいは、わたくし達に含みません」
遠足におけるバナナのように扱われた水草姉妹は、完全にブチ切れていた。それは久々のことで、ブチ切れた水草姉妹の強さというか執念というものを、俺はあんなことがおこるまですっかり忘れていた。
運営は即座に妥協案を了承した。俺達はチーム名を『エアレーション』と決めた。エアレーションには凄腕のベテラン3人が配属し、俺達素人が5人もいる不利が補われるようバランスが取られた。推定戦力は五分五分か、エアレーションが有利だという。それほどの凄腕ベテランサバゲーマーが味方にいるのだ。だから、俺はエアレーションの勝利を疑うこともなく準備を進めていた。
今回のフィールドはいわゆるインドアで、地図を渡された後は実地の調査時間が5分間与えられた。フィールドの中央は広場になっている。エアレーションチームの大将のプレさんこと、サバゲネーム『プレシャスなコケ』さんの予想だと、ここを制圧したチームが勝利を掴む可能性が高いという。あんなことがおこったのがこの広場だったことを考えても、プレさんの予想が的確だったと言わざるを得ない。
プレさん1人でも勝てるのではという安心感が、俺達エアレーションチームに蔓延した。その緩ーい楽勝ムードを一変させ、ヒートアップするきっかけとなったのが、相手チーム名の発表だった。それは、金魚達にとっては、大変恐ろしい名前だった。
「『アロワナ』って……。」
「水草姉妹の悪意を感じるわ」
「マスター、怖い……。」
優姫とあゆみと奈江はこのチーム名を挑戦状と捉え、三位一体となって水草姉妹を各個撃破する計画を立てていた。
「優姫、奈江。エアジェットアタックストリームを仕掛けるわよ」
「了解!」
「ラジャー!」
これもあんなことがおこる前兆の1つだったのだと、後になって思うのだった。
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