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「こっちに用って何かあったの?」
「んー? いや用ってわけじゃないんだけどね」
グラスに入った麦茶を飲みながら梓は答える。丁度麦茶を作って置いて良かった。
「お母さんが顔を見せろってうるさくて。この間見たところだって言うのに」
「この間って言ったって、お前のことだから半年くらい前とかじゃないだろうな?」
「人聞き悪いなー、三ヶ月くらい前だよ」
「いや結構前だな」
まぁ俺が言える立場じゃないけどさ。正月から顔も見てないし、電話だって・・・ま、便りがないのは元気な証拠ってね、お互いに。
「子供が出来たことを伝えてからだからね。別に元気にしているし、聞きたいことがあったら電話できるし」
確かにそうだけどさ、親としては初孫はやっぱり気になるし、気に掛けたいんじゃないの?
「そうなんだろうけどさ、ちょっとうるさいくらいだよ。何かと食べさせてくるし」
「橘君のところにも行ったりするの?」
旦那である橘君の実家もこの辺りだからか、去年結婚した二人の新居は少しだけ離れたところにある。二つの実家から均等な距離に。
「今日も行って来たよ。お義姉さんはもう二人産んでいるし、いろいろ勉強させてもらってる」
「へぇ、身近にそう言う人がいるといいね」
経験者が身近にいると心強いってものだろうし。しかも最近経験した人だったらなおさら。
「うん、本当色々助けてもらってる。だからこそ私も頑張れるし、努力しようって思えるんだよね。私を助けてくれる人は何人もいるけれど、今お腹の子を助けてあげられるのは私しかいないしね。橘じゃないけど、命を懸けてこの命を大切にしなきゃ」
そう言ってあはは、と笑う顔は昔からの笑顔と変わらないのにどこか少し落ち着いていて、母親らしさを感じる。梓もお母さんになるんだなぁ、なんて。
「で、はなちゃん、私お腹減ったんだけど」
・・・いや、気のせいか?
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