ひだまり

カゲトモ

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「よっ、はなちゃん」

 そう言ってノックもせずに入って来たのは最近髪を短くした梓だ。

「まったく不用心だね、まだお店開けてないのに鍵を掛けていないなんて」

「そう思うならノックもせずにドアノブを回すな」

「変なお客が入って来るかもしれないよ?」

「それはお前のことだろ。鍵掛けておくべきだったわ」

 そう皮肉ると変わらない笑顔でにやりと笑って見せる。こういう所、昔から変わらない。図々しいっていうの? まぁ可愛げがあるから怒れないんだけど。年下の女の子だしね。

 裾まで長いワンピースをゆったりと揺らして梓はカウンターに腰かけた。梓にはちょっと高すぎないか?

「これ、この間言っていた映画。遅くなってごめんね」

「悪いな、別にいつでも良かったのに」

「いいのいいの、実家に用事があったし、ついでだよついで」

 梓が手渡してくれたのはこの間オススメされた映画のディスク。先日の飲み会で映画の話題で盛り上がった時に、ディスクを持っているから貸してあげると言ってくれていたものだ。

 ミステリテイストのコメディ映画に、涙涙のラブストーリー、それに手に汗握るアクション映画まで、紙袋に詰まったデスクは多彩だ。

「返してくれるのはいつでもいいし」

「本当に? 来年かも知れないよ?」

「は、絶対ないでしょ。明日には観終わってるって」

 よく御存じで。ディスクを持って来てくれたって分かった時点で明日のスケジュールは決まっていた。むしろ仕事から帰ったらダラダラしながら寝るまでに一本は観たいくらいだ。

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