コップの中の漣
ハムヤク クウ
第一話 自分自身と
私はインターネットのまとめサイトにある通りに道具を準備する。粘土、塩、そして水を入れたコップ。
それに加え、クリスタルチューナーという
そもそも呪いというものも全く信じてはいないし、私自身何かを感じることもなかったので、私は私に出来る限りの範囲で結界を張ることにした。
まず、粘土を
そこに、呪いを受けている、あるいは呪いを受けるであろう部位に塩を塗り込むと第一段階は終了だ。お疲れさま、私。こんな馬鹿げたことよくやったものだな。
それを静かに水を入れたコップの中に入れる。すると粘土でできた人形がスゥーと沈み、水底で
これで結界は完成らしい。こんなもので呪いを打ち消せるのであろうか。
恨まれる覚えだったらたくさんあるらしい。とはいっても、私にはかなり無自覚なところが多いのだが、どうやら私は意図せず男性の意識を集めてしまう気質があるという。
その体で、その声で、その身振り手振りで。自然と異性を誘惑し、私を女性として認識させてしまう。
その様子が私と同じ性別を持つ者として気に障るのだろう。表立って私を非難することはないが、好きな相手の意識を集めたい人にとっては私は目の上のたんこぶだ。あまり良い気を持っていないというのが本音だろう。
異性に好かれても別に良いことなど何もありはしないのに。私はそんなことを考えながら結界のことについて書かれていたページから離れ、学校で教えてもらった『呪いをかける方法』というページを開く。
呪い、恐怖、死。その他、以前見ていた韓国のポップアイドルのページでは絶対に見かけないであろう言葉がそこには並んでいた。同じページに清潔そうな化粧品の広告が貼られている。なんとも歪で笑えるじゃあないか。
私はここに書かれている方法で呪い殺されてしまうのだろうか。なんて、まったくもって馬鹿らしい。
私は呪いなんてものを信じちゃいないし、実際に自分自身がかかっているなどとも思ってはいない。しかし私に呪いをかけたいと願う奴らが見せるあの目を、私はちっとも忘れることができないでいた。
憎悪が瞳に黒い陰を落とし、白い目玉の中で差を表す。それは例え暗闇でもばっちりと見て取れると思うほどに異様な存在感を放つのだ。
私がもし殺されるのだとすれば呪いなんてものじゃなく、あの目に殺されるのだ。だから私は、その目の映像を頭から切り離したいがためにこんな結界を張っているのかもしれない。せめて気休めにでもなればいいなと。
私はふとコップに目を移すと、コップの中が
今この瞬間誰かに呪われたのかなと、私は苦笑した。
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