お兄ちゃんがラブコメをしてくれない!
吉田原 翔
第1話 「フラグが立つフラグが立ちました!」
私の名前は天野千秋!
え?ラノベのキャラなのに、名前がシンプルだって?
分かってないわねぇ!
この作品のキャラの名前は、名字に天候で名前には四季とかいろいろ入るのよ!
ほら!これでシンプルじゃないでしょ!
まあ、ラノベの割にはシンプルなのは認めるけどね…
って!そんなことより、大変なのよ!
私のお兄ちゃんは、今年で高校2年になるのに、彼女どころか、女友達さえ作ってないのよ!
関わりのある女性は家族とか幼馴染の陽姉ぐらいなの!
ラノベとしては、妹モノとか姉モノとか幼馴染ルートに入るべきなのよ!
でも、お兄ちゃんは、ちょっとしたラッキースケベとか、陽姉の意味ありげな行動にさえ反応しない鈍感な男なのよ!
これは、私が高校一年生になって、お兄ちゃんにラブコメをさせる奮闘記よ!
私の名前は天野千秋。
これは、始まる度にやるつもりよ。
え?なんで毎回やるのか?
そんなのどうでもいいじゃない。雰囲気よ。
ふ・ん・い・き。
それより、いま!
いま、私の目の前にフラグが立つフラグが立ちそうなのよ!
「ねえ、優くん。今日よかったら、駅前のドーナツ屋さんに行かない?」
なんと!お兄ちゃんの幼馴染であり、私たちのお姉さん的な存在で、お兄ちゃんとカップリングする可能性大!の陽姉が、お兄ちゃんに“放課後、よかったら一緒に帰らない?”の進化版!”放課後、よかったら駅前の〇〇屋さんに行かない”を実行したのです!
なぜ、駅前のドーナツ屋が進化版なのか。それは至極単純です。
まず、“放課後、よかったら一緒に帰らない”は、一週間の放課後の行動パターンを散策する術です。
これを最低でも一週間、最高でも一ヶ月すれば、大体の行動パターンが分かります。
お兄ちゃんの場合、帰宅部で基本、放課後は特別な用事は無いのですが、お母さんの負担や弟と姉の面倒を見るため、スーパーや幼稚園に行くので、放課後は、ほとんど空いていません。
しかし、今日は、弟は幼稚園は親子遠足でお母さんと帰り、お姉ちゃんはどうせ部屋で作業しているだけなので、後は私がスーパーに行けば、お兄ちゃんは完全に今日は放課後がフリーになります。
「ごめんね、スーパー寄らないとだから―――」
「―――お兄ちゃん!私、買いたい物があるから、ついでにスーパー寄ってくるよ!」
ふふふ、ここで天野千秋、見参です!
よく、大抵の弱気ラブコメ主人公は、家庭の事情などで、ヒロインの誘いを断ることが多いですが、このタイミングで妹キャラや友人キャラが「それくらい自分がやるよ」と言うと、口実を無くしヒロインと無事に放課後デートに行くのです。
このパターンは、このような状況でも効果を発動できるはずです。
「じゃあ、母さん疲れて帰ってくるだろうし、洗濯物を―――」
「―――それぐらい私がやるよ!」
―――セーフです!危なかったです!
なんて油断できない兄なのでしょう…まだ口実を残していたなんて…
もし、これで陽姉が「そっか…じゃあまた今度ね」
と言ってしまったら、お兄ちゃんを誘えるのは一ヶ月に一回、お姉ちゃんが気まぐれで弟を迎えに行く時になってしまいます。
それは、家族である私とお兄ちゃんでも予測不能で、陽姉の誘いを断った後に電話が来る可能性があります。
今日というこのチャンス…絶対見逃させはしません!
「じゃあ、行こうかな。お言葉に甘えて」
「よかったぁ。じゃあ校門前で待ってて、私ちょっとトイレ行ってくる」
―――成功です!フラグが立つフラグが立ちました!これで、お兄ちゃんの陽姉対する好感度が上がりました!
「あ、私もトイレ行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
陽姉の後を追ってトイレに入っていくと、案の定、陽姉は前髪を整え、スカートの丈を2センチ上げていました。
やはり、私の予想は間違っていませんでした。
陽姉はお兄ちゃんが好きです。ライクではなくラブです。
前髪を整えるのは、乙女として当たり前。
好きな人の前で、だらしない姿なんか見せられません。
そして、スカートの丈を上げるとは、好きな人に意識して貰いたいからです。
例え、鈍感なお兄ちゃんだとしても、少しでもドキッとさせるため。
しかし、上げるのが2センチなのは、陽姉の勇気がまだ足りないからです。
世には、スカートの丈が短いのが好みではない男性も少なからずいます。まあ大抵、弱気童貞低身長野郎ですがね。
でも、安心してください陽姉!
私の予想では、お兄ちゃんはスカートの丈はサザ〇さんのワカメちゃんレベルでなければ大丈夫!
むしろ、短い方がチャンスがあります!
前にお姉ちゃんのスカートの丈が短い時、お兄ちゃんは一切構わずスカートの丈を直しました。
つまり、スカートの丈が短いと、ちょっとしたボディタッチと突然の近距離に“主人公がヒロインの好きな人が自分だとわかった後、今までボディタッチなんて平気だったのに、何故か意識しちゃって凄いドキドキしちゃうな”ムードに入れる可能性が生まれます!
さあ、あと1センチ上げるのです!
「―――おい、千秋。なにやってんだ?」
「―――あ、櫻子先生」
櫻子先生はお兄ちゃんのクラスの担任で、私の国語の授業の担当です。あと、クールでボンっキュッボンっです。
「女子トイレに入らず、下劣な男子のように覗くなんて…お前はそっち系か?」
「違いますよ!私が好きなのはお兄ちゃんのような優しい爽やか系イケメンです!あと、黒〇事のセバスチャンだけです!」
「お前の趣味はどうでもいいよ。問題は何が目的で女子トイレを覗いていたかだ。あと、私は坊ちゃん派だ」
「私はただ、陽姉の恋の旅路を見守っているだけです。あと、ショタは
「そうか、青春を謳歌する学生の邪魔しちゃいけないな、アタシはここでおさらばするよ。あと、私のショタ好きは二次元のみだ」
お兄ちゃんがラブコメをしてくれない! 吉田原 翔 @yosinodahara
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