第12話


「で?先輩はルドちゃんになんて説明されたんですか?」


 一通り俺が聞きたいことは聞き終わり、今度は今わかっている情報の確認をしていた。


「俺は……つってもお前とほぼ同じだと思うが」


「もしかしたら何か違うかもしれないでしょう?」


「まぁそうか」


 俺はルドに説明されたことを全て話した。

 あ、電マのくだりは黙っておいた。あれは説明じゃないしな!


「ふむ…なるほど…。大体は同じですが、先輩が質問したところは教えてくれませんでしたね…。定型文でもあるんでしょうか…」


「まぁ最低限これだけは伝えるってラインはあるんじゃないか?それで、お前はなんか質問しなかったのかよ」


「特に質問しませんでしたよ。あ、発声がなるべく早くなるようにお願いはしときましたけど。あとはこっちでいろいろ調べようと思ってましたし…」


 なるほど、だからこいつ1歳なのにこんなに流暢に喋れるのか。


「俺色々調べて紙にまとめてあるぞ?後で見るか?」


「マジですか!?珍しく有能じゃないですか!」


「おいおい俺だって有能な時はあるんだぞ?ほんとに珍しいけど」


「珍しいの部分肯定するんですね…」


 あたり前だ。今回だってあの読めない字でまとめたやつ渡すから別に有能でもないしな…。


「なんだ。じゃあわざわざ図書室まで来た意味なかったですね」


「ん?ああ、このまま調べるつもりだったのか。単に人がいないからだと思ってた」


「まぁそれが大部分なんですけどね。その他に何か先輩から言わなくちゃいけないことあります?……愛の告白とか」


「残念ながらここには俺の愛しのキャラたちはいねえからすることねぇな」


「はぁ……知ってましたけど」


「あ!」


 言うことあったわ〜。大事なこと忘れてた!


「なんですか?目の前の美少女に告白したくなりましたか?」


 うるせぇお前1歳児だろ。

 後輩の言葉は無視して俺は言った。


「そういえば俺この世界の神様に会ったわ!」



「………………は?なんですか聞こえませんでしたもう一回言ってくれませんか?」


「しょうがねぇなぁ…。神様に会ったつってんだろ?」


 そう言うと後輩は大きくため息をついた。



「先輩…いくらかわいい後輩にカッコつけたいからっていっても小学生レベルの嘘はやめてください」


「ちげぇよ!本当に会ったんだって!シオンって名前のショタ神様!」


「そんなのいるはずないでしょう!ショタ神様なんて誰の妄想ですか!!」


「妄想じゃねぇって!大体女神がいたんだから神がいてもおかしくねぇだろ!」


「うるさいですねぇ!先輩ごときが生意気ですよ!」


「お前の方が生意気だこの野郎!!」


 本当に生意気だなこいつ!?



「で?その神様とやらはなんて言ってたんです?」


「切り替えはっやいなお前…」


 話すだけで疲れるわ…。


「いやここで先輩が嘘つくとも思ってませんし」


「じゃあさっきのくだりはなんだったんだよ!!!」


「え?面白そうだったんで?」


 相変わらずいい性格してやがる…!


「そんなことどうでもいいから早く教えて下さいよ〜」


「はぁ……わかったよ…」


 俺はシオンが言っていたことを、洗いざらい話した。

 すると、後輩は呆れた顔で、


「先輩は阿呆ですか?せっかく生きれるんだから生きようとしてくださいよ…。あと、問題が解決っていうのは私の事っぽいですね」


「あ!そうか!なるほどな!……え?全然解決してねぇじゃん。むしろ悩みの種増えたんだけど」


「喧嘩売ってんですか?買いますよ?じゃあ負けた方は針千本飲むってことで」


「いやそれ嘘ついたときのやつだから。てか絶対片方が針千本飲まなきゃいけないって普通にデスゲームだから」


 こいつ発想が怖い。


「というかその神様の発言かなり重要そうなこと多いですし…。というかルドちゃんたちの目的は?この世界はルドちゃんたちに作られたって?そしてそれが目的に関わってくる…」


 後輩が熟考に入った。あー…めんどくせぇー。こいつこうなるとなかなか戻ってこねぇんだよなぁ…。

 と、思ったので、取り敢えずデコピンしておいた。


「〜〜〜いったぁ!!!何するんですか先輩!1歳児の頭デコピンって正気ですか!」


「正気じゃねえのはお前だったろ。それにそのことに関しては俺も色々考えたけど決定的な情報が無い。だから考えても仕方ねぇんだよ」


「………なるほどです。じゃあ考えないようにします。それに、ルドちゃんが目的は生きてたらわかるって言ってましたしね」


「ああ、そんなことも言ってたな。じゃあ、取り敢えず何もすることはねぇなぁ…。久しぶりに鍛錬でもするかぁ?」


「げ、出ましたね。無駄に格闘技に関してはハイスペックなんですから…」


「まぁ確かに無駄だよな…」


 俺は前の世界では人と戦うためのありとあらゆる技をじいちゃんから教えられていたのだ。

 だから剣やら槍やら弓やら…さらにはチャクラムなんかも扱える。あー、バグ・ナクなんかになってくると流石に無理そうだが。


 いや、ね? じいちゃんも教える気は無かったそうなんだけど、俺が余りにも楽しそうにやってたからつい教えてしまったらしい。


「ま、俺は8歳になるまでは鍛錬でもしとくよ。お前はどうするか知らんけど」


「あー、8歳になったら魔法プラス学園入学でしたっけ。うちの両親が言ってた気がします。…私は取り敢えず先輩の紙を見てから自分でも色々調べますよ。だから早く紙を渡してください」


「おー、忘れてた忘れてた。俺の部屋にあるからついてこいー」


「いや案内は別にいいですよ?この屋敷の構造は全部把握してますし…」


 そうだった…こいつ超ハイスペックなんだった…。

 前の世界では、容姿端麗、才色兼備ってやつだったな…。

 こと記憶力に関してはなんかの特殊能力でも持ってるんじゃねぇかってレベル。


「あ、そうだ」


「なんですか?まだあるんですか、先輩」


「いや、大したことじゃないから歩きながらでいいんだけどさ…呼び名ってどうする?」


「え?普通でいいんじゃないですか?」


「いや、俺がいきなりお前って呼ぶのも後輩って呼ぶのもおかしいだろ。大体前の世界でも後輩って呼ぶのはおかしかったしな」


「あー…なるほど。それはソフィアでいいんじゃないですかね?」


「まぁ、そうか。1年間お前のことソフィアって呼んできたから別に違和感はないしな」


「まぁ私は先輩って呼びますけどね」


「それは勝手にしてくれ」







 そんな話をしていると、俺の部屋についた。

 俺は文字の方が中になるように折ってソフィアに手渡したあと、そそくさとその場を逃げ出した。


 その日、ソフィアが帰るときに


「暗号解読させた分の労力は体で払ってもらいますからね?先輩?」


 と、怖い目で言っていたが、大丈夫だろう。


 大丈夫大丈夫!





 ……………………あとで謝っておこう。


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