17th contact けっちゃく
薙刀とバトンでは長さが違います。なので、向こうの方が自然とリーチが長くなるのでした。
「それなら!」
私は長い棒を作り出します。何の棒なのかは分かりません。鉄のような外見ですが、重さは木の棒のように軽いです。これはきっと、私の想像の中だけにある、現状で最適な武器。棒の先に光の刃を生み出します。
女の子の薙刀とぶつかるたび、刃は折れてしまいます。
刃を防ごうとするたび、棒は真っ二つに切られてしまいました。
けれど、何度も何度も作り出しては使えなくなった武器を捨てて、戦います。
「お前は何故、そこまでして戦おうとする!勝ち目がないというのに!」
「そんなの!やってみないと分からない!」
私は防戦一方で、少しでも武器を作り出すタイミングがずれてしまったら腕を両断されてしまうでしょう。
両手がなくなり、手から大量の血が噴き出す様子を想像して、必死でそれを追い払います。
「私は救うって決めたの!魔女も魔法少女も、キワムさんも。そして、あなたも!」
私は棒を女の子の顔に突き立てます。女の子が避けてくれたので安心しましたが、その瞬間、棒は天高く舞い上がります。女の子の薙刀に弾かれたのでした。
「そんなこと、できるはずがない!」
私は武器を生み出そうとします。けれど、女の子が薙刀を構える方が先でした。
「出来たとしても、それはお前自身を傷付けるやり方でしかない。そんなやり方!私が認めない!」
うおぉおぉおぉおぉ!
女の子が雄たけびを上げました。そして、私に薙刀を振り下ろそうとします。
ですが――
「くっ」
女の子の体には鎖が巻き付いていました。それが女の子の動きを止めて、私は縦に真っ二つにならずに済みました。
「なんとか間に合った。フキちゃん。大丈夫かしら」
「コトちゃん。邪魔、しないで」
私は現れたコトちゃんにそう言いました。
「何を言っているの?フキちゃん。フキちゃんではコイツに勝てない」
でも、私は首を横に振りました。
「助けてくれてありがとう。コトちゃん。でも、私はこの子に勝たないといけない。いけないの」
きっと、そうしないとお互いに前へと進めないまま終わると私は思いました。
私とこの子はとても似ている。似ているからぶつかり合う。でも、きっと違うから。私とこの子は違うから、きっと分かりあえるはずなんです!
「だから、お願い」
コトちゃんはしぶしぶ鎖を解きました。
女の子は言います。
「いいのか?絶好のチャンスを逃したぞ」
「もう、そんな戦いじゃないことをあなたはよく知っているはずです」
女の子は肩をぐるりと回して調子を確かめていました。
「あなたは間違っています。苦しんでる。そんなの、間違ってるよ。だから、私が、あなたを救いだします」
「お前こそ間違っている。己を犠牲にすることに苦しまないお前は、世界にとっての敵だ!」
女の子は私に向かってきました。私はバトンを振って、魔砲を出します。魔砲は簡単に切られてしまいました。女の子の刃を棒の先の刃で受け止めます。
「お前はもう人間じゃない!自分を大切にしないやつなど!自分を犠牲にして戦う者など!」
バチン。
刃は折れます。
「そうだよ!私は間違ってるよ!」
何度も折れたって!何度も立ち直ってみせる!
「でも、私はみんなの笑顔が大好きだから!どうしようもなく大好きだから!」
バトンに光の刃を纏わせ、女の子の薙刀に叩きつけます。
刃が折れても、もう一度作り出して、何度も何度も折れて。それでも何度も作り直して刃を交えて――
「だから、せめて私の前では笑って欲しいかな」
女の子の目が大きく開かれました。驚いているようでした。
そして――女の子の薙刀の刃が折れ、宙を舞い、地面に突き刺さりました。
私は女の子の鼻の先に光の刃を突きつけます。
「ね?」
私は精一杯の笑顔で言いました。
「敵わないな」
最初、小さく笑い始めた後、女の子は大きく笑います。
「目の前に刃を突きつけられて、笑える奴などいないだろうに」
「いや、笑っているじゃないですか」
私はバトンを下げます。たくさん魔法を使ってしまったせいか、とても体が重かったです。
なんとか耐えて、コトちゃんのもとに向かおうとした時でした。
「え?」
私と女の子めがけて、極大の魔砲が放たれました。
「くふふ。弱っているゴキブリを叩き潰すというのはこんな気持ちなんだろうねぇ!」
「人をゴキブリ扱いかしら。アンタ、本気で許せないわね」
砂埃が晴れると、私の目の前にはコトちゃんが立っていました。コトちゃんが私と女の子を守ってくれたようです。そして、私たちを襲ったと思しき存在は、白い衣装を纏い、宙に浮かんでいました。
「魔法天使幹……」
女の子がそう呟いているのが聞こえました。
「魔法天使……」
幹という魔法天使はコロネちゃんそっくりな方ではないようでした。
「あんたらは、人の心がない……ってのは分かっているけど、もっとマシだと思っていたわ」
「それはうれしいよ。それが最後の言葉でいいよね」
冷ややかな視線が向けられた瞬間、私はゾッとしてしまいました。人間味のない、無機質な瞳は、人を殺すことにためらいがないと分かったからです。
「お前たち……逃げろ」
女の子がそう呟いた時。
「魔法天使二人を相手にして逃げられるとは思わないことだ」
私と女の子を隔てるようにもう一人の魔法天使――コロネちゃんそっくりの魔法天使が現れました。
「コロネちゃん――」
「ワタシは魔法天使雷だ」
雷は手のひらを前に突き出します。たったそれだけの挙動で、私たちは魔砲に飲み込まれてしまいました――
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