2nd contact ぱぁてぃおぶぱじゃま


 私は自分の部屋にある写真を一枚手に取る。その写真には二人の少女と一人の女性が写っていた。女性はやつれた姿でベッドに居座り、こちらに笑顔を向けている。その女性にそっくりなポニーテールの少女は慌てた様子で映り、少しぼやけている。シャッターを明日瞬間に動いたからだろう。そして、私は最後に残った少女を見つめる。


 永遠の笑顔を持った少女。そして、彼女は私の姉だった。


 私は写真の裏を見る。そこには幼い字が鉛筆で書かれている。


『2007年、恵子ちゃんと光。星に願いを』


 その頃、私の姉はまだ小学生のはずだった。けれども、しっかりと漢字で文字は記されていた。


「夜空お姉ちゃん……」


「セラちゃん、帰ってたの?」


 私は声に振り向く。そこには一人の女性が立っていた。高校の制服に身を包んだ少女。私の一番上の姉、灯だった。


「うん。帰ってた」


 この事態をどうしようかと私は悩む。


 私はあまり家族とうまくいっていないのだ。


「今日は泊っていくんでしょう?ねえ、セラちゃん。もう魔法少女なんかやめて――」


「言わないで!」


 私は悲痛な叫びをあげるように姉に訴えた。


「そんなこと言わないで!私は絶対に魔法少女になるって決めた!魔法少女になれなかった灯お姉ちゃんや命を懸けて戦った夜空お姉ちゃんのために!だから――」


 だから、そんなことは言わないで欲しい。


 魔法少女であることこそが、私の生きる意味なのだから。


「でも、セラちゃん――」


 灯お姉ちゃんが何か言おうとした時だった。


「おう。邪魔するで」


「お邪魔しますわ」


 そんな声が聞こえて私は頭を抱える。


「誰か来たみたいだけど、セラちゃんのおともだち?」


「私にともだちなんていない」


「なんや失礼なことを言われた気がするで?」


「確かにそんな気もしますわ」


 遠くからそんな声が聞こえて私はさらに溜息を吐く。憂鬱度がいつもの三倍増しになった気分だ。


「おし!泊めてもらうで」


「よろしくお願いしますわ」


 私は我慢できずに自分の部屋を出て、階段を降りる。そして、玄関が見える位置で叫ぶ。


「だから!しばらく待ってろって言っただろ!」


「でもよ、外は雪が降りそうなくらい寒いぜ」


「少し辛かったので中に入れてもらうことにしたのですわ。ごめんなさい」


 私は親に話をつけるまで二人には外で待ってもらうつもりだったのだ。でも、私は自分の部屋で感慨にふけり過ぎていたらしい。


「分かった。玄関で待っていていい。親に話をつけてくる。ちょっと待ってろ」


 私は居間に入っていった。そこはちょっと前と、そして、数年前と変わらぬ姿だった。


 もし変わったものがあるとすれば、それは家族の表情だろう。


「帰りました」


「そうか。いつまでここにいる」


 父親が私にそう言ってきた。


「それほど長くはいません」


「ずっといていいんだぞ」


 父はとても厳しい人だった。けれど、2年前、戦いで夜空お姉ちゃんを失ってからというもの、どこか心にぽっかり穴の開いたような表情を見せるようになった。不愛想なのは変化がないが、どことなく覇気がなくなった。


「そうよ。もうどこにも行かず、ずっとそばにいてちょうだい……セラちゃん」


 母親は言い出すとすぐに泣きだした。


 母親の精神が不安定になったのも2年前からだった。


 2年前、私の姉の夜空お姉ちゃんは果敢に町を破壊したワームを倒した。自分の命と引き換えに。しかし、その結果がこれだった。


 2年前の記憶が現在の景色と重なってしまう。




 ガシャン!


 私の家には頻繁に石が投げられるようになった。そして、家の壁中には『役立たず』だの、『町を破壊したのはお前らだ』などという誹謗中傷の言葉が書かれるようになった。


 学校でも同じだった。


 夜空お姉ちゃんは命を懸けて町のみんなを守った。なのに、どうしてこんな扱いを受けなければならないのか分からなかった。


 自分のことはまだ我慢できた。けど、灯お姉ちゃんがあざだらけになっているのを見た時、私は決意した。


 魔法少女になろう。そして、世界を救って家族が貶められないようにしよう。そんな魔法少女になろう、と。私はその後、より一層稽古に励んだ。


 けれど、2年かかった。私が魔法少女になるまで家族は耐えてきた。そして、私が魔法少女になってからというもの、石を投げられることも、机にスプレーで落書きさせることも、教科書をボロボロにされることも、トイレで冷水を浴びせられることもなくなった。


 私はもっともっと有名な魔法少女になっていつの日か、きっと、必ず――




「ホンマ、真面目ちゃんはあかんで。ウチが上方の交渉術っちゅーもんを見せたろ」


「あら。外見とは違っていいお家ですわね」


「どうして入ってるんだ!?」


 私は思わず叫び声をあげる。


「わたしがいれたのよ」


 灯お姉ちゃんがおっとりした笑顔で言うので私は頭を掻きむしる。


「玄関にいたら寒いでしょうし、セラちゃんのおともだちなら、泊めてあげてもいいでしょう?お母さん、お父さん」


「ああ」


「是非ともゆっくりしていって頂戴」


「じゃあ、ゆっくりしよか!」


 マリは図々しく居間のこたつに入る。


「ウチ、ココアが飲みたいな。おばちゃん」


「いいわよ。待っててね」


「少しは遠慮しろ!」


 私はマリにチョップを食らわす。


「ちょ、それ、冗談にならへんって。音を出すためにはたいて痛いんはしゃーないけどチョップは音出んから死ぬほど観客に痛さが分からへんねんで?」


「知らん」


 私は仕方なくこたつに入る。体は一日中歩き回ったせいで冷えていた。それと、私はこたつが好きだ。


「どうした?リナ。遠慮はいらん」


「ウチと言っとること違うやんか!」


 私はずっと立ったままであるリナを気遣って言った。図々しいマリは諫めなければならないが、遠慮されると少し気分も悪い。


「これが……ハポネルゼ・コタツォ・ミケーネ」


 うん?と私は疑問符を浮かべる。何故だかリナはすごく感動しているようだった。


「わたくし、コタツォ・ミケーネが初めてですの。ドキドキしますわ」


「お嬢様っていうか、あんた新本に住んどったんやろ?」


「洋風の文化でしたから」


 私はマリに耳打ちする。


「なあ、さっき、リナはなんて言ってたんだ?というか、何語で話していた?」


「んなん、知らへんで」


 私はマリの返答に目を丸くする。


「んな、どうして普通に会話できる!?」


「そんなん、なんとなくや。ほら、外国人の観光客に出会うたらまずおはよう、って言うんや。向こうが首を傾げたら、おはろー。それで仲良くなったも同然や。そんでいろいろ話を聞いとるとなんとなく何を言っとるのか分かるようになる。でも、次会うたときにはわすれとるけどな」


 どうもマリは何となくで外国人と会話できるようだった。関西人、おそるべし。


「マリちゃんはココアだって聞いたけど、セラちゃんとそこのお嬢さんは何を飲む?」


「リナと申します」


「リナちゃんはどうする?」


「差し支えなければ緑茶で」


「いいのよ。少しくらい。それで、セラちゃんは?」


「別に、母が作りやすいものなら何でもいい」


 リナは目を丸くし、マリはどこからか取り出したハリセンで私の頭を叩いた。景気のいい音が響く。


「何をするんだ!」


「なんで母ちゃんのことを母言うねん。ハハってなんや。思わずボケか思てつこんでもたで!」


「わたくしも少し驚きましたわ」


「別に母をどう呼ぼうと個人の自由だろう」


 確かに、二年前まではお父さん、お母さんと呼んでいた。けれど、2年前の春、全てが変わったのだ。


「はい。セラちゃんは好きなコーンポタージュを入れておいたわよ。寒かったでしょうからゆっくりと温まって頂戴」


「母」


 私がそう呼びかけると母は悲しそうな目をした。


「なに?セラちゃん」


「二人の寝る場所だけど――」


「それなら、和室を使えばいいんじゃない?ちょっと寒いかもしれないけど、ヒーターをつけるし」


 なるほど。和室なら小学生が二人寝るのに十分だ。


「三人一緒に寝れるし」


 その言葉を聞いた瞬間、私は固まってしまった。




 私は久々に実家の風呂に入った。一人で入る風呂はなんだか奇妙な感じだった。訓練所では普通に一人で入っていて違和感も何もなかったのに、実家の風呂は私の孤独を浮き彫りにさせた。


 私は2年前まで甘えん坊な妹だった。常に灯お姉ちゃんか夜空お姉ちゃんにくっついて一緒にお風呂に入っていた。けれど、あの日、何もかもが変わってしまった。


「入るで。セラ」


「失礼しますわ」


「はい!?」


 私は二人が裸で風呂に入って来たのを見てドキドキしてしまう。無防備な姿を見せられるとなんだか不思議な気分になった。


「なんで入ってくるんだ」


「人数が多いから、早く一緒に入った方がええやろ?それに、な」


 マリはリナに目を向ける。リナも口の近くに手を持ってきてほくそ笑む。


「お姉さまから、セラちゃんが寂しがってるだろうから一緒に入ってあげてって言われたのですわ」


「余計なことを」


 でも、私は内心嬉しかった。


「よし!早速入るで」


「体を洗ってから入りなさい」


 私はマリの首根っこを掴んで止める。


「これがハポネルゼ・アライッコ。なんだか興奮します!」


「なあ、なんやリナが興奮しとるで」


「まあ、外国にはない文化なんだろ」


 二人は体を洗い、私と一緒に湯船に浸かる。


「ええ湯やな。ははんっ」


「いいお湯ですわね」


「狭い」


 私はぶつくさ文句を言う。湯船は12才が三人入るようには作られていない。


「まあ、ええやん。あんま広かったら波に流されてまうで」


「海じゃないんだから」


「でも、溺れてしまう心配がなくてよかったですわね。セラ」


「まるで私がカナヅチみたいじゃないか」


 別にカナヅチというわけではないが、あまり泳ぎも得意ではない。


「風呂で泳ぐんは感心せえへんな」


「泳ぎなどしない!」


「でも、思わず湯船で泳いでしまうことはありますわよね」


「あるある。プールで泳ぐんとはまた違った気持ちよさがあるんや」


 二人は意味ありげに私を見つめる。


「な、なんだ」


「いや?どっかの誰かさんは泳がへんのやなって」


「湯船が小さいだろ」


「でも、温泉とかで泳がへんのか?髪も濡れて一石二鳥やで」


「先に髪を洗え!それと、髪はしっかり結んでおけよ!」


「まあ、なんて心優しい」


「ただ口うるさいだけやろ」


 全く、二人は私を何だと思っているのか。


 でも、本当に不思議な気分だった。


 私は人と仲良くなることはなかった。ずっと姉がいたおかげでともだちがいなくとも寂しくなかった。そして、姉から自立して、人々から避けられるようになった。人々から尊敬の念を持って接せられてからは、人々を避けるようになった。


 だから、まだ会ってから一日もたっていないのにこれほど仲良くなるのは珍しい。


 人懐っこい性格のマリ。


 分け隔てなく接する、リナ。


 ふとこの二人に支えられている自分に気がついて、それではいけないと考えを改める。


 私は一人で生きていかなければならない。


 人には別れが訪れる。その時に、悲しくならないように、一人で生きていく力を身につけなければ――




 私たちは三人並んで床に就いた。


「なあ、なあ、枕投げとかしよや」


「ここが誰の家なのか分かっているよな」


「いいですわね。一度ハポネルセ・ヴァルを体験してみたかったのですわ」


「二人とも、寒空の下に投げ出すぞ」


 二人はその言葉を聞くと大人しく布団の中に潜った。


 外は今にも雪が降り出しそうなほど寒く、春の訪れはまだまだだと実感させられる。


 世界の危機にあって、春が訪れることなどあるのだろうか。


「じゃあな。何か話そうや。好きな人とかおるん?」


 ああ、ベタな奴だなと私は思う。


「マリはいるのか?」


 どうせ答えられまい。こういうのは言い出しっぺが一番言うことができないんだと私は高をくくっていた。


「おるで」


「なんだと!?」


「本当ですの!?」


 リナと私は声をそろえて言った。


 だが、確かに思春期に片足を突っ込んでいるのだから、好きな人くらいいてもおかしくはないのだ。


「誰だ?それは」


 知っている人である可能性はないのに、私は尋ねてしまっていた。


「誰って言われても難しいなぁ。そうやな。年上かな」


「ほぉう~。なんだかそれっぽいですわ」


 リナもまた興奮しているようだった。


「どんな奴なんだ、それは!」


 私は自分で張り上げた声に驚いてしまった。


「いや、どんな奴言われても、ウチにもようわからんっちゅーか。まあ、変わったヤツなんやろけど」


「なんだ、その回答は」


「確かにお付き合いをしていないとよくはわからないものですしね」


 リナの言葉にそういうものなのかと私は思う。しかし――


「適当なことを言っているんじゃないだろうな。嘘じゃなかろう」


「バカ言いなや」


 マリは拗ねたように言う。


「関西人は冗談は言っても嘘はつかへん」


「それ、世界で一番信用のない言葉だな」


「なんやて!?」


 私は鼻で笑って言ってやる。


「なら、そいつのどこが好きなのか言えるはずだ。さあ、赤裸々に告白してしまえ!」


「はぁ……ウチにもどこが好きなんか分からへんよ。もしかしたら、好きなんて感情やあらへんかもしれん。ただ、気になってしゃーないだけや。ずっとずっと何年も気になっとった」


 その言葉を聞いて何故か私が恥ずかしくなった。


 私はリナの方を向く。


(なあ、これって……)


(正真正銘に恋ですわ!)


 なんだか負けた気分だった。一番女らしくないと思っていたマリが一番乙女だったとは。


「次はリナやな」


「何故私を飛ばす」


「ああん?そりゃ、オチはしっかり務めてもらわんとなぁ。好きな人いませんなんてオチやったら、神戸湾にコンクリート詰めやからな」


「物騒な」


 ともあれ、私たちはリナの言葉に耳を傾ける。


「そうですわね。好きな人ですか」


「お父ちゃんとかダメやで。いくらお嬢さまでも、それはキツイわ」


 悩んでいたリナは唸りながら口を開く。


「わたくしがドイツで生活を始めた頃ですわ」


「ほぉ。外国ボーイとの恋かいな。やっぱドイツも金髪なんか?」


「ドイツはどちらかというと顔の浅黒い人々が多いですわ。髪の毛も黒の巻き髪だったり。そうそう。背も高いですわ。わたくしたちの同世代はもう高校生くらいの大きさになっていたりしますの」


「それだけ大人の階段上るのもはや――いてっ」


 私は余計なことを言おうとするマリを暴力で黙らせる。


「うぅ、暴力反対!暴力描写アリ表示せんとあかんで!」


「残念ながら、それはカクヨム限定だからな。小なろは残酷描写だけだ」


「えっと……お話続けますわよ?」


 私とマリは黙ってリナの話を聞く。


「わたくしの家には親戚がいましたの。日本から来たということで心細かったわたくしにとてもよくしてくれましたわ」


「そんで惚れたんか」


「くっ。そいつはどんな奴だ」


「とても優しい方でしたわ」


「ほーん。金髪か?」


「ええ。その辺りでは珍しい金髪でしたの。思わず見とれるくらいの」


「なるほど。つまりリナは面食いやな――やから、殴るんはよして」


 私は溜息を吐く。


「そうか、いい話だったな。明日も早いから寝るか」


「ちょい待ちや」


 マリが体を背けた私の肩を持つ。地味に力を入れているようだった。


「一人だけ逃げるんは許さんで?なあ、リナもそうやろ?」


「そうですわね」


 二人のいやらしい笑い声が響いてくる。


 私は観念した。


「好きな人か。難しいな」


 異性がどうこうという話が私にはまだ分からない。


「目つぶってると映ってくる人が好きな人や」


「まあ、マリったら、ロマンチストですのね」


「褒めるなやい」


 私は瞼を閉じて考える。このまま寝たふりをしてしまおうか。


「寝たふりはすぐ分かるで」


 まったく、面倒な奴らだ。もう。


「そうだな。どう語っていいものやら」


「どんな人ですの」


 私の脳裏には夜空お姉ちゃんが浮かんでいた。まあ、女であることを隠せば何とかなるだろう。


「そうだな。常に笑顔を絶やさない人だった。いつもみんなを笑顔にして、そして、いつも悲しんでいる人を見つけては笑顔にしていた」


「素晴らしい人ですわね」


「……」


 マリは黙ったままだった。もう寝てしまったのかもしれない。


「どこをセラは好きになったのですの?」


「どこもかしこも、全部、かな」


 そう。大好きだった。大好きだった人だった。


「そうか。ったく、おったんやったら、そう言えばよかったのに」


 なんだかマリの言葉に私は引っかかった。


「ねえ、みんな」


「なんや?ション便一人で行けんのやな?」


「まあ、可愛いですのね」


「勝手に確定するな。そうじゃなくて」


 私はガムテープで止められた窓ガラスを見る。うちの窓ガラスは全て割られていて、そのどれもが一時的にガムテープで補強されていた。


「どうして何も言わないの?この家に対して」


 二人はしばらく沈黙していた。


 やっとのことでマリは口を開く。


「家に入る前からえげつないことになっとんのは分かっとった。分かっとったから聞かんかっただけや。なんや?同情して欲しかったんか?ウチらはそういうもんやないし、そもそもウチらからこう言うんを聞かせるってのは卑怯やで」


 別にそんな気持ちはどこにもなかった。


 ただ、二人は気にならなかったのか疑問に思っただけだ。


「こんな家にどうして入って来たの?こんな家なら適当にホテルを探した方がいいでしょ?」


「わたくしたちはセラの家だから泊ることに決めましたのよ?ねえ、マリ?」


「そんなとこや。別に中身はいい感じやんか。家族もええひとばっかやし。もっと自分の家に胸張りや。やないと、あんたの好きやった人が悲しむで」


 好きだった人、とマリが言った。


 どうもマリは気がついていたようだった。夜空お姉ちゃんがもうこの世にはいないということを。


「そうやな。ありがとうな。わかったらさっさと寝るで」


「くそっ。ええオチ持って行きよって!ウチかてそのうちええオチ奪ってやるからな」


「はよねましょかーですわ」


「くぅうぅうぅ!」


 マリが悔しがっている姿を頭に描きながら、私は眠った。


 久々にいい夢を見られた気がした。




 だが、安眠とはいかなかった。


 ウォッチがワームの反応を示す。


「ホンマ、夜中にこれやと困るで」


 ウォッチは0時を少し超えた辺りを示していた。


「いかがですの?あたりの状況は」


「先日の奇襲を鑑みて、多少の魔法少女は配置されていたようだ。だが――」


 私の言葉を遮ってウォッチは私たちに言葉を伝える。


『やあ、順調に任務をこなしているかな』


「幹……」


 三人のウォッチに、同時に通信が入る。


『キミたちには逃亡者を追うことに専念してもらいたかったが――どうも今の魔法少女では実力不足なようだ』


「だから、敵を倒せ、と」


『ああ。話が早くて助かるね。キミたちの能力なら簡単に――』


 私は話が長くなりそうなので通信を切った。すると全員の通信が切れた。


「良かったのですの?通信を切ってしまって」


「ええんとちゃう?あいつの話が長うなるってことは最初から薄々感じとったし」


「行くぞ」


 私は戦士の表情に切り替え、変身する。


「来い!一式!」


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