特殊感染者

皆までユウナ

前編

prologue:尋問

「俺は感染してない!」


 暗く、狭い部屋。絶え間なく続く尋問。

 俺はドラマに出てくる取調室のような場所で椅子に拘束され、身動き一つとれずにいた。


「俺は感染者に噛まれてなんかない。感染する理由はないって言ってるだろ!」


 透明なガラス板を挟んで対話する人間の影絵だけが今の俺の世界だ。

 そのシルエットに噛みつくように吠える。俺を縛り付ける椅子がギシギシと音を立てる。


「そうではない。我々は貴様をだと疑っているのだ。通常の人間が特殊感染者へと変化したとき、ゾンビから受けた噛み傷は跡形もなく治癒する。お前が人類の敵でないことの証明にはならない」


「俺が、特殊感染者・・・・・・だと?」


「そうだ。噛まれた後でも自我を失わず、食欲に耐えられなくなることはない。正常な肌の色を保ち、血液の黒色化を防ぐことができる。しかし、彼らは感染しており頭の中では以下に人間を多く喰らうかを考えている」


「じゃあ俺を特殊感染者だと疑う理由はなんだ!? 俺はここへ命がけで逃げてきただけだ!」


「お前のいたグループは壊滅したそうだな。お前だけが生き残り、逃亡した。だがそれは・・・・・・拠点が襲撃を受け、逃亡したフリをするのは、特殊感染者が集団内に潜入する常套手段だ。今のお前と同じくな」


「俺の仲間は殺されたんだ・・・・・・俺が殺したみたいに言うのはやめろ!」


 きわめて冷徹な声が許せなかった。全てを失った俺を、悪気もなく犯人扱いするそいつを・・・・・・。


「なら話してみろ、本郷あつし。お前がここへ来た経緯を・・・・・・夕霧市へ落ち延びるに至ったいきさつを」

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