コップの中の漣
有原ハリアー
想い
「ああクソッ、落ち着かねえ! そうだ、牛乳でも飲むか……」
小学校から、毎日欠かさず飲んでる牛乳。そして、あいつも毎日飲んでる牛乳。これを飲むと、不思議と俺の気持ちが落ちつくんだ。
「さて、これでよし!」
コップに牛乳を注いで、俺はテーブル脇の椅子に座る。
だが、俺の幸せな時間は一本の電話によって遮られた。
「何なんだよ、もう……!」
やかましく騒ぎ立てる電話を止めるべく、俺は受話器のある場所まで走って行った。
*
元気にしてるかしら、
今は地元の大学にいるけれど、私の心は優くんの地元にあった。おかげで、目の前のランチセットも満足に食べられていない。
「けれど、食べないとね……」
私はコップに入った牛乳を飲み、胃に膜を作ってから食べることにした。
「うふふ。今頃は優くんも牛乳、飲んでるのかしら?」
コップをそっと置くと、牛乳がゆらゆらと揺れていた。
*
「全くもう、詐欺まがいの電話は掛けてくるなよ……!」
ろくでもない電話だった。俺はやり場のない怒りを発散しようと、牛乳に手を伸ばし――ん?
何で風も無いのに、揺れてるんだ?
中身は減っていない。
けれど、誰もいないし、風も吹いていない。なのに、牛乳が揺れていた。
「まさか……お化けじゃ、ないよな。それよりも……あいつ、今頃は牛乳、飲んでるのかなぁ」
俺はコップの中の漣が止まるまで、見守ることにした。
コップの中の漣 有原ハリアー @BlackKnight
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