7#ハクチョウの王様の巨大風船魔術

 ハクチョウの王様のフリードは羽毛の中から萎んだ白いゴム風船を取り出すと、嘴で息を吹き込んで膨らまそうとした。


 「王様。まさかここで風船膨らませて、皆で風船に掴まって森の外からクジャクを追うとか考えてね?」


 アヒルのピッピは、王様を横目で睨み付けて嫌味紛れに言った。


 「ピッピちゃん。君も『魔術』使いで『空翔ぶアヒル』なんだから・・・」「は?」「御名答・・・」


 「『王様』の面目丸潰れじゃん!!

 鬱蒼としたこの森に、風船を外へ飛ばせる隙はねーじゃん・・・ん?!」 


 アヒルのピッピは、キョロキョロと見渡した。


 「ここは・・・白い風船の中?!」


 「うん!!そうだよ!!みーーんな、わたくしが膨らませた風船の中だよーん!!」


 巨大な風船の吹き口の部分を、風船の中から鰭足で抑えているハクチョウの王様は、戸惑うアヒルのピッピに言い聞かせた。


 「げっ!!」


 マガモのマガークも、カナダガンのポピンも、顔を真っ赤にして必死に息を吐き出していた。


 「もっと!もっと!風船膨らめ!!」


 「脚の爪や翼のエッジで風船に触れてパンクしちゃうから、気を付けて!!」


 「・・・ったく、風船の中で皆何してるの・・・」



 「せーの!!いっけぇーーーーーーー!!」


 ハクチョウの王様は、掴んでいた巨大風船の吹き口を放した・・・とたん?!




 ぷしゅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!ぶおおおーーーーーーーーー!!しゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅる!!



 「うわーーー!!」


 「いえーーーーい!!」


 「わーーーお!!」


 ロケットのように空気を吹き口から、吹き出して吹っ飛んでいく巨大な風船の中の水鳥達はグルグルと掻き回されながら大騒ぎした。



ぷしゅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!ぶおおおーーーーーーーーー!!しゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅる!!




 「ちょ・・・ちょっと!!」


 「やば!!風船が萎んで俺達!!ゴムに!!」


 「きついよーーー!!!苦しいぃぃーー!!潰されるぅぅーーー!!」


 「やべえ!!やべえ!!息を吹け!!息を吹け!!息を吹け!!息を吹け!!吹け!!吹け!!吹け!!」



 ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!ふーーー!!



 巨大風船の吹き出している中の空気が無くなってきて、ゴム圧に圧迫される水鳥達は必死に嘴から渾身の息を吹いて吹いて吹いて吹いて、膨らまそうも息が足りずどんどんどんどんどんどんどんどん狭まれてしまった。



 「嘴痛い!!くっつくな!!」


 「だって、しょうがねぇじゃん!!この風船が縮んでるんだから!!」


 「しょうがない・・・やるしかねぇな・・・」


 「まさか・・・」「そうだ!!」



 嘴でつん!!



 パァーン!!



 「わーーーー!!」


 「堕ちるーーーー!!」


 「俺ら何で翼があるんだ!!」


 「羽ばたけ!!羽ばたけ!!」


 「おい!!アヒル!!何で羽ばたいても堕ちるんだ?!」


 「だって!!あたい『アヒル』よ!!」


 マガモのマガークは、墜落していくアヒルのピッピの首筋をくわえて必死に羽ばたいた。


 「でも、下は湖よ。」


 「あ、本当だ。」



 ばっしゃーーーーーーーん!!



 水鳥達は、いつの間にか湖に戻ってきたのだ。


 「ということは・・・」


 「クジャクの奴、湖のハクチョウの女王様のとこに行ったとしたら・・・」


 「こうしちゃいられねぇ!!」


 水鳥達は、急いで湖のど真ん中からハクチョウの女王様の居る岸辺へ泳いでいった。







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