第13話 引越し日

 今日は朱音が引越してくる日だ。九時にはこっちに朱音を乗せた車と引越しのトラックが来る予定なので、いつもより早めに起きており朝食なども既に済ませてある。

 そして今、俺は朱音たちが家に来るのを自分の部屋でベッドに寝転がりながら動画を見て待っていた。だが、俺の意識は動画ではなく引越しのほうにある。

 いつこっちに来るんだろう……もう出発したのか?それとも、まだ何かやってるのか?気になるなぁ……朱音に聞いてみるか。

 そう思って、朱音に連絡しようとすると、いつものグループに唯さんからメッセージが入った。


『今出発しました』

『わかりました。待ってます』


 返事をしたのはもちろん父さんだ。

 そっか、今出発したのか。これなら朱音に聞かなくてもいっか。

 そう思って、俺は動画の続きを見ようとしたら、もう一度メッセージが入った。今度は朱音から直接俺にだ。何なんだろう?


『今から行くね』


 何についてか疑問に思っていたが、それは出発したことについてだった。

 直接俺にって……律儀というかなんというか……まぁ、別に朱音とのやり取りが嫌ってわけじゃないからいいけどね。


『わかった。待ってるよ』


 う~ん……返事を書いてみたが、なんか父さんと同じになっちまったな。やっぱり俺は父さんの息子ってことなんだろう。てことは好きになる人も似たような人なるのかな……それって唯さんと血のつながってる朱音ってことになるんじゃ……いやいや、その理論はおかしすぎるだろ。俺は俺、父さんは父さんだ。

 暇な時間ができるとどうでもいいことを考えてしまうのは、仕方のないことかもしれない。だが、それによって俺は昨日のことを思い出すことになってしまった。

 もう、何で昨日のことを思い出すんだよ。昨日のことは解決してるし、それに一日経ってるから朱音とは普通に話せるだろう。現に文字では何も思うことなく会話することができたんだ。でもやっぱり、面と向かって話すのとは違うよなぁ……本当に大丈夫か?うわぁ……無駄に緊張してきちゃった……朱音が来るまでに何とか落ち着こう。

 俺は動画を見て無理やり落ち着けようとした。ちなみに見ていたのは某有名RPGゲームの実況動画だ。




 動画を一つ見終わったくらいに、またグループにメッセージが入った。


『着きました』

『わかりました。今行きます』


 着いたのか。それじゃ、一階に行こうかな。

 俺がベッドを降りる同時にスマホが震えた。このタイミングだと……朱音からかな?

 部屋を出る前にスマホを見てみると、予想通り朱音からだった。


『着いたよ』

『わかった。今からそっちに行くよ』

『うん』


 俺が一階に行き玄関に向かうと、そこには父さんと引越しの業者の人が話していた。どこに何を運ぶかを話しているようだ。

 話し合いはすぐに終わり、父さんは今度は俺に話しかけてきた。


「優は朱音ちゃんの荷物を部屋まで運んでくれ」

「それって朱音の?」

「当たり前だろ。優の部屋に運んでどうするんだ」

「まぁ、それもそっか」

「これから同じ部屋っていうなら話は別だがな」

「そんなわけないだろうが」

「はいはい。それじゃ頼むぞ」

「その前に、朱音は俺の隣なのを了承したのか?」

「それは唯さんに任せてるから知らん」

「おい」

「まぁ、変更になったらその時はその時だ」

「はぁ……そうですか。それでその荷物ってのは?」

「それは業者さんがリビングに運んできたものだ。ダンボールにそれぞれの名前が書いてるから間違えることはないはずさ」

「わかったよ」


 俺はさっそくリビングに行ってダンボールが運ばれてくるのを待つことにした。だが最初はベッドなどの大きいものからのようで、まだ俺の仕事はないようだ。

 俺はソファーに座って待っていると、朱音がリビングにやってきた。


「おはよう、優君」

「おはよう、朱音」


 少し緊張はしたが普通に話せたのでこの分なら大丈夫だろう。動画を見たかいがあったってもんだ。


「ねえ、一つ聞いてもいい?」

「うん?どうしたの?」


 いったいどうしたんだろう。まだ俺は変な感じだったろうか。


「私の部屋ってどこか知ってる?」

「……はい!?」


 もしかしなくても、自分の部屋の場所を聞いてないのか?わざわざ内緒にするって、意味わからないぞ唯さん!


「唯さんに聞いてないの?」

「それは優君に聞いてってさっき言われて……」

「マジかよ」


 俺があの事実を言わなきゃいけないのかよ。それは俺にとってある意味拷問のようなものだぞ。目の前で拒否でもされたら……怖くて言いたくねぇ……


「……」

「どうしたの優君?顔色悪いけど……もしかして具合悪いの?」

「いや、そういうのじゃない」

「……?」


 仕方ない。ここは腹をくくるしかなさそうだ。俺が伝えないと何も始まらいだろうし。


「えっと……二階にある」

「そっか、二階なんだ……」

「それで…………俺の隣の部屋……」

「そっか、優君の隣の……って、えっ!」

「うっ……」

「……それ本当?」

「うん、まぁ……あっ、でも嫌なら変更するって父さんが言ってた」


 判決の時間だ。俺は朱音のほうをまともに向けないでいる。


「そんな!嫌ってことはないよ」

「そ、そう……」


 すごい剣幕で言われてしまった。まぁ、拒否られなかったし良かったんだけど。後、なんか「どっちかって言うと嬉しかったし……」とか聞こえてきた気もするが、これはたぶん気のせいだろう。

 それからしばらくすると、朱音の部屋にベッドなどを運び終わったようだ。


「それじゃあ、運びますか」

「いいよ、私のだし……」

「いやいや、これくらい手伝うよ」

「そう?それじゃ、お願いするね。でも……中は見ないでよ?」

「……わかってるよ」


 朱音はいたずらっ子のような顔でそう言った。俺はもちろん見るつもりなんて最初からなかった。なんせこれはパンドラの箱だから開けようなんて思いもしなかった。中のものを想像はしてみたけどな。

 二人して部屋に運ぶとすぐに終わった。

 そして今いるここはもう、俺が掃除した時とは違いちゃんと部屋として成り立っていた。ベッドとかがあるとちゃんと部屋に見えるってもんだ。


「それじゃ、俺は隣にいるから何かあった呼んで」

「うん。手伝ってくれてありがとう」

「これくらい、いいってことよ」


 俺はそう言って、物置部屋改め朱音の部屋を出て自分の部屋に戻った。

 こっちはこっちで、このダンボールたちを何とかするかな。さて、卒アルみたいなものとかあればいいけど……

 そう思って中を開けてみると、そこには中学の時の教科書が入っていた。

 これは外れかぁ……それにしても、隣の部屋の音って結構聞こえるものだな。

 ガサゴソ、ガサゴソという音がさっきから聞こえてくる。

 まぁ、これにも慣れていくんだろうなぁ……

 そう思いながらも俺も作業を続けていき目ぼしいものといえば、小中の卒アルと文集くらいだった。それ以外は教科書とかノートくらいだ。


『そろそろ昼食に行くぞ』


 俺の作業もひと段落したところで、父さんがグループにメッセージが送られてきた。

 俺たちを呼ぶのがめんどうだったんだろうなぁ……だけど、こうやってSNSだけを使っていくと、いつか家族での会話がなくなっていき、いつかは家庭崩壊を……なぁんて、あり得ないな。

 そんな馬鹿なことを考えながら俺は一階に行った。

 そして、昼食はまだ家の中がごちゃごちゃしているからということで、昨日と同じファミレスで食べてきた。もちろん今日は朱音と普通に会話をしたぞ。昨日とは違うのだ。

 ファミレスから帰ってきてから俺は朱音を家の中を案内することになった。


「ここが風呂場と洗面所ね。そして、こっちに行くとトイレがあって……」


 こんな調子で今は一階を案内中だ。そして、今は一階で最後の部屋に来た。

 ここも紹介する必要はあるのか……まぁ、この家にいたらいつかは目にすることにもなるし一応しておくか。


「ここが一階にある最後の部屋です」


 俺が扉を開けて先に入っていき、その後ろを朱音がついてくる。


「えっ!これって……ピアノ?」

「まぁ、ここはピアノ部屋って感じ」


 朱音は中に入ると案の定驚いていた。まぁ、仕方ないよな。こんなところにピアノがあるなんて思ってもいないだろうし。


「これって……もしかして優君の?」

「まぁ、一応弾けるのは俺だけだし、そういう意味では俺のかな」

「そうなの!すごいよ。じゃあさ、何か弾いてみてほしいな」

「いや、俺はもう弾けないよ」

「えっ!?もしかして、今はやってないの?」

「うん。ピアノは中学に上がる前にやめたんだ」

「どうして?」

「ほら、俺って中学に上がる前に一度引越したって言ったでしょ。それで、ピアノは持っていけないってことでやめたんだよ。それに続けるにしてもお金がかかるしね」

「そっか……」


 幾分か朱音の表情は残念そうに見えた。でも、仕方のないことだろう。ピアノは三年くらいは調律もしてないし、それに俺もそれだけの間弾いてないのだ。だから今弾いたってどうせひどい演奏にしかならないのだろう。


「でも……いつか聞きたいなぁ……優君のピアノ」

「……まぁ、そんな機会があればな」

「うん」


 たぶんそんな機会は一生来ないだろうけども。


「じゃあ、とりあえず一階は全部案内したし、次は一応二階ってことで」


 そう言って俺たちは二階に行った。

 といっても、ここはさほど案内するようなところなく、すぐに終わりそうだった。今は最後のところとして、俺の部屋を紹介していた。


「えっと、ここが俺の部屋。中に入る?」

「うん!入ってみたい」


 朱音は子供のように楽しみな表情をしていた。単なる男の部屋なんだけどなぁ……まぁ、物珍しいということか。

 そう思いながら、俺は朱音を中に入れた。


「特に変わったものはないと思うけど……」

「すごい!これが男の子部屋かぁ……あっ、これって優君の卒アル?」

「そうだよ」

「見てみたいな」

「もちろんいいよ。そういう約束だったしね」

「やったあ」


 やっぱり人の卒アルを見るのは楽しいものなのだろう。朱音は実に楽しそうに見ている。

 朱音が小学のほうから見ていき、今は中学のほうを見ている。これならいつか朱音の小学の時のも見せてもらえるかもな。嫌って言っても絶対に見てやる。

 そんな決意をした時に朱音が俺に尋ねてきた。


「ねえ、この人って滝崎悠馬たきざきゆうまさんだよね」

「そうだよ。よくわかったね」

「だって、ここら辺でテニスしてる人で知らない人はいないと思うよ?」

「まぁ、それもそっか」


 滝崎悠馬ってのは俺の中学の同級生で俺をテニス誘った張本人だ。そして、悠馬のテニスの実力はずば抜けており、中学では敵なしだった。今どうかは知らんがたぶん高校に上がっても無双していると思う。ちなみに、俺の中学時代の親友でもある。


「すごいね。こんな人と一緒にテニスできて」

「まぁ、こいつのおかけで俺はテニスをする羽目になったんだけどね」

「じゃあ、滝崎さんが優君にテニスを教えていた人なんだ……」

「そういうこと」

「こんなすごい人に教えてもらってたなら、今でも十分にできるんじゃないの?」

「いや、そりゃ無理だろう。やってない期間が長すぎるよ。俺って一度やらなくなったらダメになる人だからさ」

「それって、もう一回練習とかすればいいいてことじゃないの?」

「まぁ、そうとも言えるけど……それでも、かなり頑張らなきゃいけないし、やっぱり無理だよ」

「そっか……でもいつか一緒にやろうね」

「あ、ああ……」


 そのこと覚えていたんだ。まぁ、そんな日が来ないことを願おう。今の状態でやったらやっぱり無様な姿をさらしてしまうからな。

 それからも中学の卒アルを見ていったが、そんなに時間のかかるものでもないので数分で見終わってた。

 さて、これから何をしたものかな。


「これかどうしよっか」


 朱音も同じことを思ったらしく、俺に聞いてきた。


「朱音は部屋の片づけ終わってるの?」

「うん。だいたい終わってるよ」

「そっか……」


 朱音のほうもやることなしか……まぁ、だからあんなこと聞いてきたんだろうけどな。

 それじゃあ……あれでもやるか。


「なら、ゲームでもやってみる?」

「やってみたい!」


 これも前約束したことだしちょうどいい機会だろう。


「何やりたい?」


 俺はそう言って、俺が今持ってるゲームを朱音に見せた。


「これがRPGでこっちが対戦なんだけど」

「優君これは?」

「うわぁ……それはギャルゲー……」


 そうだった……あいつが「布教だ」とか言って俺の家に置いていったやつだそれ。


「優君もこういうのやるの?」


 なんか、朱音の目が冷ややかなのは気のせいだろうか。うん、たぶん気のせいなんだろうなぁ……朱音は単なる興味で聞いてるだけだろうし。


「いや、俺はやらないよ。というかそれ俺の友達が勝手に置いていったものだし」

「そうなんだ」

「まぁ、それがやりたいならそれでもいいけど……」

「いや、今日はこっちをやりたい」


 そう言って見せてきたのは、野球のゲームだった。っていうか、今日はってことはいつかはギャルゲーをやるってことなのか?まぁ、その時はその時だな。今はこのゲームだ。


「じゃあ、これやるか」


 俺はさっそくそのディスクをゲーム機に入れて朱音にコントローラーを渡した。


「それで何やりたいの?」

「もちろん対戦!」

「ですよねー」


 まぁ、予想通りであった。

 幸い俺の家にはコントローラーは二つあるので対戦でも大丈夫だ。

 対戦モードでお互いに好きな球団を選んでから始めた。といっても最初は朱音にやり方を教えながらだったがすぐに操作方法は覚えてくれた。

 やっていくうちに気付いたが朱音は野球の才能というか、このゲームの才能があるかもしれない。配球はよく考えられてある。俺はよく裏をかかれたものだ。それにホームランとかもちゃんと打っている。


「うまいね、朱音」

「優君、それって嫌味?さっきから一回も勝てないのに……」


 まぁ、全部俺が勝ってるんだけどね。これは経験のあるなしの差だろうなきっと。朱音がこれをやり続けたらどうなるかはわからない。


「まあまあ、本当のことだって。俺が勝ち続けてるのは単なる経験の差だよ」

「それでも、悔しい……」

「どうする?まだやる?」

「……もちろん」


 それからもやり続けたが、いつの間にか夕食の時間になっていたようで、グループに俺たちを呼ぶメッセージが入った。ちなみに、俺は一度も負けてはいない。


「それじゃあ、行こっか」

「……うん」


 朱音は悔しいのか少し拗ねている感じだ。こりゃ、あのホッケーのときみたいだな。

 そんなことを思いながら俺たちは一階に降りていった。




 一階のリビングに入ると父さんたちはすでに座っていたので俺と朱音もイスに座った。

 目の前には家庭的な料理が並んでいる。今までの男っぽい料理とは全然違い感動ものだった。


「こりゃすごい……」


 俺は思わず声に出ていた。


「やっぱり、優もそう思うよな」

「そりゃ、もちろん」

「フフフ、二人ともお世辞がうまいんですから」


 唯さんはそう言ったが、俺たちは事実を言っただけだ。でもこれは男飯を食べ続けた俺たちにしかわからない感動なんだろう。


「さあ、冷めないうちに食べちゃいましょ」

「そうですね。では……」


「「「「いただきます」」」」


 俺たちは同時に言葉を発した。

 唯さんの料理はめちゃくちゃおいしかったし、それにこうやって四人で食べる食事はとてもいいものだった。




 今は、夕食も終わり部屋でゲームでもしていたがそろそろ風呂に入ろうかと考えていた。

 まぁ、キリもいいし入っちゃおっと。

 俺の風呂に入る時間は決まっていない。いつもその時の気分だ。俺はパジャマをもって風呂場に向かった。

 風呂場の前に着いたがなぜか電気がついていた。誰か消し忘れたのか?まぁ、いっか。

 俺はそのまま目の前にあるドアを開くとそこには……


「えっ…………」

「あっ…………」


 バスタオルで体をふいている全裸の朱音がいましたとさ。

 って、えええぇぇぇぇぇぇ。ナンデココニアカネガイルンデスカネ。

 俺の脳はこの状況を即座に処理することができなかったようで、俺はその場でフリーズしてしまった。つまり、その姿を見つめてしまっている。

 朱音はというと、あちらもフリーズしてしまっていたが、俺よりも早く状況を理解し始めたようで、顔が見る見るうちに赤くなっていった。それは、俺が昨日下着を見てしまったとき以上である。

 俺もそんな朱音を見て、ようやく状況を理解できて来た。まぁ、つまり俺がかなりやらかしてしまったということを。


「ご、ごめん!」


 状況が理解できた俺はそう言ってドアを閉めた。

 やばい、どうしよう。これは謝罪だけでは済まないよな。もしかしたら、これからは口を聞いてもらえないかもしれないぞ……とりあえず、できる限りの謝罪を今するしかない。


「本当にごめんなさい」

「優君は悪くないよ……私が知らせてなかっただけだから……」

「そんなことはないって。俺がもっと注意していれば避けられたことだったし……」


 これに関しても完全に非は俺にある。朱音に悪かったところなど何一つない。


「だから、本当にごめんなさい」


 俺がそう言いても、向こうから声はしなかった。終わったな俺。完全に嫌われただろう。

 ドア越しに頭を下げながらそう思っていると、目の前のドアが開き朱音が出てきた。


「えっ、なんで頭下げてるの!?頭上げてよ優君」

「でも……」

「ほら早く上げて。別に私怒ってないから」

「えっ……!」


 俺は驚きながらも頭を上げた。そこにはパジャマ姿の朱音がいて、こんな状況であるにもかかわらず可愛いと思ってしまった。


「もちろん、恥ずかしかったけど……だってこれは事故なんでしょ?」

「そうだけど……」

「それとも……わざとだったの?」

「いや、違う違う。もちろん事故だよ」

「その慌て方、なんか怪しい~」

「……すみません。本当に事故です」

「なら、仕方ないことだよ。これからはお互いに気を付ければいいんだしね」

「わかった……」

「それじゃあ、またね」

「うん……」


 そう言って朱音は自分の部屋に戻っていった。

 結局俺は朱音に一度も怒られずに済んでしまったが、これは朱音の厚意からだろ。それに俺たちはこれから一緒に住むことになるんだから、同じようなことが何度もあったら大変だ。こんなことは二度とないようにしなければならないだろう。

 そう決意したからって、さっきの光景を忘れることは不可能で俺は服を脱ぎながらそれを思い出しそれについて考え始めた。仕方ないだろう。俺だって年頃の男の子なのだから。

 女子の体を直接見るのは初めてだったけど、すごくきれいだったなぁ……あれをきめ細かい肌というのだろうなきっと。それに全部は見えなかったが初めて見た胸はなんかすごかった。その一言に尽きる。って、なんかオヤジ臭いなこれじゃあ。

 俺はそう思い、朱音の体について考えるのをやめた。だが、忘れることはないだろう。絶対に。

 そして、風呂場に入ると朱音が先に使っていたので温かったので、いやでも朱音の後というのを意識させられた。この湯船も朱音が入ったんだろうし……うわぁ、変態かよ俺。

 だけどこういう風に考えるのもきっと今日だけだろう。そうに違いない。というかそうであってくれ。

 俺はそう思いながら体を洗ったりした。もちろん、湯舟にもちゃんと浸かったぞ。

 それらが終わり風呂から出た後は、自分の部屋で眠くなるまでゲームをして、時間をつぶしていた。

 だけど、なかなか眠くならなかったのでとりあえずベッドにはいってみたのだが、やはり睡魔は来ない。まぁ、理由ははっきりとしている。今日の風呂場の出来事と隣の部屋に朱音がいるということのせいだろう。

 あれはそもそも事故だったし朱音も許してくれたんだからもういいだろう。でも、あの肌は……やめようそれ以上思い出すと本当い眠れなくなってしまう。朱音が隣の部屋にいることはこれからも続くのだから慣れないといけないだろう。…………ダメだ全然眠くならない。

 それでも目を閉じ続けて体感で一時間くらいしたところでようやく眠ることができた。

 翌日起きてみると、俺は昨日寝付けなかったせいで朝はかなり眠かった。そして、朱音もなんだか眠そうにしていたが、たぶん気のせいだろう。

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