美少女同級生が新たな家族に!!
藤航希
第1話 出会いの日
今日は三月の終わりであり、休み中でもあり、父さんの再婚相手を紹介してもらう日でもある。
今、俺の家には一人の女性と一人の美少女が来ており、俺たちはリビングで向かい合って座っていた。俺の前に美少女、父さんの前に女性という構図だ。
「彼女が、俺の再婚相手の
「はじめまして、雪村唯です。これからよろしくね、優くん」
「あ、はい。はじめまして。
父さんの再婚相手の唯さんは優しくそうあいさつしてくれた。
だけど俺は目の前に座っている美少女のことを考えていたので、少しどもったあいさつになってしまった。
決して目の前の美少女に目を奪われていたとかじゃないぞ。俺はただ彼女のことを知っているなぁ、って思っただけだ。
彼女は十中八九、俺が通っている
「優、なにぼっとしてるんだ? もしかして……目の前の朱音ちゃんが美人だから見とれてたんだろ!」
「違うよ! ちょっと考え事してただけだって!」
「お前、失礼な奴だな。それは朱音ちゃんが美人じゃないってことか?」
「別に……そう言う訳じゃないけど……もういいから、父さんもあいさつしなよ!」
「ははは! 逃げたな」
人様の前でそんなこと言うのはやめてほしい。恥ずかしくて顔が赤くなってるのが自分でもよく分かる。
変に思われてないだろうなぁ、と思い顔を前に向けてみると……
有名人の雪村さんであろうと思われる彼女も同じように顔を赤くしてうつむいていた。被害は俺だけではなかったらしい。隣で唯さんが「あらあら、まあまあ」とか言ってるし……
それでも立ち直りは早かった。やはり、学園でさんざん言われたことなので慣れているのだろう。
「とりあえず、優をいじるのはここまでにしてっと……はじめまして、俺は
「はい、分かりました。こちらこそよろしくお願いします」
俺への無駄なフォローのようなものもあったが、ようやく父さんのあいさつが終わった。
父さんもあいさつだけやればいいのに、俺のいじりは絶対に必要なかったはずだ。まぁ、今そのことはどうでもいっか。それよりも今は目の前の彼女のほうが重要だ。
彼女は間違いなくあの“雪村朱音”だな。父さんが“朱音ちゃん”って言ってたし、声も確かあんな感じだった気がするし間違いないだろう。
俺が知っている彼女の情報はこうだ。
名前は
顔立ちは整っていて、出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでいる。身長も高く、髪は黒のロング、完璧なスタイルの持ち主である。
性格も完璧で人当たりもよく、誰にでも優しいので文句のつけようがない。
たしか硬式テニス部に所属していて、かなりの実力者だったはずだ。
これだけのステータスの持ち主なのだから、学園のアイドルと呼ばれていて有名人である。
雪村さんの情報を脳内で整理していたら話は勝手に進んでいた。
「朱音ちゃんは神代だったよね?」
「はい、そうです」
「なら、優とは同じ学園だな」
「えっ! そうなんですか?」
まぁ、そりゃ知らないよな。俺は特に有名人ってわけでもないし、一年の時はクラスも別だったからな。
「そして、優君とは同級生よ」
「えっ!」
とどめとばかりに、唯さんがそう言った。
雪村さんの反応から見ても、その可能性については考えてなかったんだろう。俺の感覚としても連れ子っていったら大抵年上か年下だからな。
それにしても……父さんと唯さんは息ピッタリだな。さっきのはいい連携だったような気がする。
二人の関係を見ていたら、俺も誰かと付き合ってみたいなと思ってきた。
ちなみに彼女が出来たことは無い。いわゆる彼女いない歴=年齢ってヤツだ。
ただ、性格的なこともあって自分から積極的に行くことが出来ないからこれからも彼女ができる可能性はないだろうと思っている。
そんなことを考えていたら父さんが面白そうに話し始めた。
「そうかそうか、同じ学園で同級生か……なんか運命を感じるな」
「フフフ。そうですね。私も運命を感じます」
ニヤニヤしながら二人してそんなことを言った。
別にそんなことはないだろうと思うけど、そのことについて俺が何か言ったところでどうせ言い返されるだけなのでここは雪村さん頼みだ。女子には流石の父さんも弱いだろうし……
俺はそう考え、雪村さんのほうを向いてみた。これで俺の意図を気付いてくれればいいけど……
「…………」
だけど雪村さんは恥ずかしそうにうつむいていたので俺のことは見ていなかった。父さんたちのラブラブな雰囲気が恥ずかしいのか、運命的という言葉が恥ずかしいのかったのかは俺には分からない。
ダメもとだったんだけど恥ずかしそうにしてるのは少し予想外だ。俺の作戦は失敗したけどよく考えれば初対面で俺の意図に気付けという方が無理があるだろうな。
はぁ……ここは俺が何言い返さなとダメなのか……
「運命とか感じないから。たまたまだから」
とりあえずは否定しておいた。
何も言わないよりはましだし、これが一番安全だろう。
「運命的とかは置いといても、同級生の美人な子と暮らす事になるのは嬉しいだろう?」
「……」
話がいきなり変わった気がするが、図星をつかれてしまい俺は無言になってしまった。
そりゃ、美少女で学園のアイドルの雪村さんと一緒に暮らすことになって嬉しいに決まっている。と言うか逆に嫌なヤツなんていないだろう。
そんなことを思っている間に父さんはどんどん話を進めていく。
「まぁ、堅苦しい話はこの辺にして、優と朱音ちゃんでお互いを知るという意味も込めてデートでもしてきたらどうだ?」
父さんは唐突にそんなことを言い出した。
どこに堅苦しい話があったか教えてほしいものだ。百歩譲っても最初のあいさつくらいだろうし、後は俺と雪村さんのいじりだった気がする。と言うか……デートって何ですか!?
ちょっと状況が変わるのが早すぎて脳の処理が追いつかない。
あっ、雪村さんも驚いてる。あんな顔もするんだな。なんだか新鮮で得した気分。
俺は目に見えるわかりやすい現実に逃げて、そんなことを考えていた。
「それはいいと思います。二人には仲良くなって欲しいですからね。龍太さん、その間に私たちは今後のことを話してましょうか」
「そうですね」
「優くん、朱音をお願いね」
「えっ、あっ、はい」
いまだに事態を呑み込めていなかった俺は、アホっぽい返事しかできなかった。
でもよく考えたらこれってすごいことだよな?
付き合ったこともない俺が初デート、しかもそれがいきなり学園のアイドルの雪村朱音ってヤバいだろ。
でも、俺はもちろんデートは嫌じゃないけど雪村さんはどうなんだ? いきなり初対面の相手となんて嫌かも……
「朱音もいいわね?」
「えっと……うん」
まぁ、流石にこの流れだし拒否はできないよなぁ……うん、拒否されたらされたで悲しかったし、よかった。
「じゃあ、決定ね」
「ついでに夕食も食べて来いよ。これ、夕食代。優、ちゃんとリードすんだぞ」
「いや……リードって……」
雪村さんとのデートは嬉しいけど、彼女を作ったことがない俺には女子のリードの仕方を知ってる訳がない。そこについてはかなり不安だけど、でも……こうなったらなるようになるよね。それに今更後には引けないし。
そんなことを思っている間にも、やはり話は勝手に進んでいく。
「よし、話はまとまったな。そういうことで若い二人は出てった出てった」
「二人とも楽しんでくるのよ」
「はぁ……」
「……」
こうして、俺と雪村さんはデートに行くことになった。
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