祭りのその後で

「あいつもシャイだな」

 電話を切られたあと、一人で呟いた。

「どうしたの?」

「いや、なんでもない、カッキー達も来たようだし合流するか?」

 少しの間が空き「うん」と小さく答えた。

 鳥居に着くと二人はこちらに気づいていない、仲良くお好み焼きを食べていた。

「あいつらよく食うな」

「側から見てると面白いわね」

 人が多いとはいえ二人は全然気付かない。痺れを切らし電話をかけてみた。

「もしもーし」

「お、おい、早く来いよ」

「あーんしてもらったお好み焼き食いながら喋るなよ」

「ん!? なんでそれを!」

「右斜め前見てみろ」

 言われた通りカッキーがこちらを向く、それに合わせ二人で手を振ってみた。電話を切ってカッキーに近づく。首に腕を回し佐々木さんに気付かれない物陰まで引っ張って行った。

「おいおい、随分仲良くしてるようで」

「お、お前らが遅いからだよ……へへっ」

「笑って誤魔化そうとするなよ」

 笑いながら目を合わせないカッキーを足で小突く。そして耳元で小さく呟いた。

「応援してるぞっ」


「木穂ちゃん、あの二人はなに話してるのかしらね」

「ヘルメットのメーカーについてよ」


 後ろからそんな会話が聞こえた。適当なことを抜かすカッキーを解放してシュワちゃんの首に、後ろから輪ゴムを当てた。

「いてっ!」

「そんなこと話してるのはお前と俺くらいだ」

 その後は約束通り四人で歩いた。自称レーサーとその付属品な俺も今はごく普通の高校生だった。射的で勝負し敗者が奢ったり。まあ負けたのは俺な訳だが。

 だが今の俺に普通なんて興味無い、ただお祭り終わった後の二人の行方が気になるだけだ。だから解散した後、シュワちゃんと二人で尾行を続けているんだ。

「流石に露骨だったかな」

「なにが?」

「いや、解散する時に「中根君を監視してくる」って言い訳」

「私は中根君の方が気になる、なんであんな非リアっぽい見た目なのに彼女がいるのよ」

 シュワちゃんは終始淡々とした口調だったが言ってることは随分とえげつなかった。

「まあそういうなよ」

 そう言って笑い飛ばしたが俺もそう思っていないわけではない。中根が今この瞬間もイチャついてるのに、これから付き合いそうな二人を監視してるという現状が悲しいから、嫉妬してるわけではないが、なんとなく悔しい。

「おっ、そろそろ行くか」

 二人の後を追おうと物陰から出た時腕に感触があった。振り向くとシュワちゃん掴んでいた。

「ね、ねぇ……」

 お祭りの喧騒に掻き消されそうな声で呟いてこう続けた。

「一緒に付き合って欲しい事があるの」

 せっかくこれから楽しい所なのに。思わず大きく溜息をつく。



「あれか? 今月のMr.Bikeか」



 ちょうど影になっておりシュワちゃんの顔はよく見えなかったが少し怒ってるような気がした。

「私はRIDE派よ」

「マジで、でも今月のMr.BikeはSUZUKI特集だぞ」

 一度悔しそうな顔をして言葉をひねり出した。

「今度貸して」

 カッキーは大丈夫だろう、今度学校で成功したかどうか聞いておこう。今は二人でコンビニに向かい二人で雑誌を手に取った。

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