第2話 妹来訪

 大学二年生の夏、夏休みが始まった。俺は相変わらずの日々を送っている。

俺の名前は朝間 雄矢。関西の大学に通う大学二年生だ。理学部、数学科に在籍している。

実家は山梨で、大学へは下宿先から通っている。夏休みに入り、大学へ行かなくなった俺は、下宿先に籠もり数学ライフを満喫していた。


「証明完了っと。どれどれ」


 B4のルーズリーフに書かれた証明に目を通す。証明において不十分な点や記号ミス、矛盾はないかを今一度確認する。


「よしっ。いい感じだ」


 証明の一通りの確認は済んだ。少し休憩するか。


「喉乾いたな。なんか飲み物あったかな」


 冷蔵庫を開け中を確認する。納豆、梅干し、卵、カット野菜、飲み物と呼べるような品はなかった。丁度切らしていたみたいだ。


「仕方ない。近くのスーパーにでも買いに行くか」


ろくな食材もないし、ちょうどいい。この際飲み物以外にもいろいろ買い込んでおこう。そうと決まれば急いで支度だ。部屋着から私服に着替え、寝癖を治そうとしたときだった。ピンポーンと、普段滅多にならないインターフォンが鳴った。


「こんな昼間に誰だよ」


宅配は頼んでないし、友達との予定もなし。全く心当たりがなかった。


「はーい、少々おまちを」


とりあえず支度を一時中断し、玄関に向かった。


「どちら様で……って、えぇっ!?」


扉を半分くらい開けたとこで、俺は素っ頓狂な声を上げた。

そこには俺の見知った女の子がいた。ショートカットの黒髪に、印象的な丸い瞳。その子は俺をじっと見つめ、桜色の艶のある唇を小さく動かした。


「お兄ちゃん」


そこにいたのは俺の実の妹、空だった。


なんの脈絡もない妹の訪問に、俺の脳内はパニック状態だった。


「どうして空がこんなとこに、ってかお前部活は?ここまで何で来たんだよ?父さんと母さんは?それにその荷物……」


「お兄ちゃん、少し落ち着いて!」


「おぉっ、そのごめん、急すぎてめちゃくちゃびっくりして」


「うん。お兄ちゃん、早速で申し訳ないんだけど」


空はそう言うと、落ち着くためか一度深呼吸をした。




「___私、ついさっき家出してきたの。しばらくの間でいいからここに泊めて」


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