第20話 ユウ、付き合わされる
「ユウちゃん、これ一緒に買わない?」
リンがネット通販の自転車ショップのセールで、見つけた品をユウに見せる。
それは、輪行袋であった。
輪行とは、自転車を多少分解して専用の袋に入れ、公共交通機関(大体、鉄道)で移動することである。自走では行けない遠方に行くことが可能になるし、自動車で行く場合と違って、自動車に戻らなくてもいい。
リンも一度やってみたいと思っていたが、踏ん切りが付かなかった。今回、セールで輪行袋を見つけて、ユウと一緒ならと思ったらしい。
ユウは鉄道やバスに乗るのが、あまり好きではない。多くの人がいる空間が苦手なのだ。学校の教室と同じなのかも知れない。
第一、そんな大きい袋を持って電車に乗ったら、迷惑ではないか?
リンは、朝早くの電車だから大丈夫だと思う。迷惑にならないように気を付けようというので、リンがそこまで言うのなら、あまり気乗りはしないが一緒に行くことにした。
セールの輪行袋は送料無料ではなかったので、リンがまとめて注文することになった。
数日後、輪行袋が届いたとリンが言うので、輪行の前に一度練習しようと、大学の授業が終わってからリンの家に向かう。
まずユウのスチームローラーを部屋に入れる。この輪行袋は前輪を外すだけで自転車が入るようになっているらしい。ブレーキのリリースレバーを解除すると、ブレーキシューの間が広くなり、前輪が外しやすくなる。前輪を止めているボルトを少し緩めてから、スチームローラーを広げた輪行袋の上に逆さに置く。ボルトを完全に緩めてから前輪を上に持ち上げると、前輪はあっさりと外れた。前輪は輪行袋の大きな内ポケットに入れられるようになっている。輪行袋のジッパーをぐるっと閉めて、スチームローラーを包む。
輪行袋への収納は、あっけなく終わった。
次に、リンのスチームローラーでも試してみる。同じように簡単に終わったと思った瞬間、リンのスチームローラーのペダルがワンタッチで取れた。輪行袋にペダルのふくらみがなくなり、スッキリした感じになる。持ち運びもしやすそうだ。
リンは、このペダルはイージーシステムと言って、工具がなくても簡単に取り外しができるので、輪行をする人には人気があるのだと言った。
ユウもこれは欲しいと思った。お急ぎ便で取り寄せれば間に合いそうである。ユウはその場で注文した。輪行の前日に届いたペダルを取り付けて、準備はできた。
そして、輪行の当日、二人は駅前で待ち合わせた。
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