(15) 有馬の出走、出走回避

 

1位 タイムシーフ   牡3

2位 フレア      牡3

3位 シルバーソード  牡3

4位 リュウスター   牡3

5位 トーユーリリー  牝3

6位 エターナルラン  牡3

7位 ワイドレナ    牝3

8位 スカイアンドシー 牡3

9位 シクタン     牝3

10位シルバータスク  牡3

 

 これが有馬記念ファン投票トップ10。このうち4位リュウスター、5位トーユーリリーの両ジャパンカップ馬は共に回避を打ち出した。リュウこの秋3戦、トーユー4戦では仕方のないところ。リュウスターは直接来年4月の大阪杯(GⅠ)へ、トーユーリリーは3月金鯱賞(GⅡ)を使ってからこれも大阪杯へ。

 

 6位エターナルランも、使い詰めということで回避の運びとなった。夏場の札幌記念まで使っているのだ。まずは勝ち星を、ということで相手関係を見ながら1月アメリカJC(GⅡ)か2月京都記念(GⅡ)。

 

 マイルチャンピオンシップ2着好走でファン投票の票を伸ばした8位スカイアンドシーも、距離適性を考えて回避。来年はマイルより短い高松宮記念(GⅠ)を目標に据えて調整。

 

 9位シクタンも、ステイヤーズ・ステークスの疲れが取れないということで回避。状態を見てだが、一応は3月の中山牝馬ステークス(GⅢ)から。ステイヤーズの好走で、ダイヤモンド・ステークス(GⅢ)も考えていた。

 

 トップ10の他の6頭は出走を表明している。割合として、例年どおりか。トップ10以下では、シンエクスプレス、トレミー、シトリンフレーム、クーレイ、トキノザッセンが出走する意向だった。プルートーはフェブラリーステークスに、チャプターテンは京都牝馬ステークスに、キヨマサは阪神大賞典に、それぞれ次走を打ち出していた。

 

 出走は表明しているものの、弥生は果たして本当に出られるのか疑問だった。タイムシーフがジャパンカップを回避したということは、相当疲労度がひどいということだ。有馬までに万全に戻ることなど、考えにくい。

 

 しかし当のタイムシーフは、出るということが当然の流れだという感じだった。まるで、夜は眠るもので、朝は目覚めるものというかのように……。

 

 ―― 今までファン投票1位馬が何頭回避したか知ってるのか? 2頭か3頭だろ。これだけの歴史あるなか、これだけの数なんだぞ。ファン投票1位というのは、倒れてでも出走するものなんだ。

 

 弥生があまりに心配するので、タイムシーフが語気荒く返す。出るのが当然なんだよ、と。

 

 ―― おとうさん、倒れちゃうの?

 

 心配のあまり、弥生は的外れな受け応え。

 

 ―― バカ、例えだよ。

 

 ―― そうよね、ごめん……。

 

 ―― なに悲しがってるんだ? 勝つんだよ、3冠レースみたいに。世界で最も馬券売り上げのいいレースの勝者になれるんだぞ。もっとワクワクしろ!

 

 タイムシーフは高揚する内容を弥生の頭に送り込むが、しかし弥生の顔は晴れない。もはや以心伝心も1年近くになり、より相手の内面を掴めるようになっている。弥生はタイムシーフから伝わる声の、張りのなさを微妙に感じていた。

 

 どんな状態だろうと、出れば、また全力を出してしまうだろう。ましてやこれが最後のレースなのだ。心臓が止まったって脚を止めないだろう。弥生は世間の熱狂をよそに、有馬記念が近づくのが怖くて仕方なかった。

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