銀髪おっとり美女、力を見せつける
ジミーダ村を出発して数時間。
俺たちは、左右に草原の広がった街道を歩いている。
「リリス、あんたちゃんとおやつは銅貨500枚分までに抑えたの?」
「えっ……マリアちゃん、そんな決まりあるの?」
「あらあら~私、銀貨3枚分も持ってきちゃったわ~」
女性陣はどうやら遠足気分らしい。
銀貨3枚分と言うと、銅貨3000枚分か……大分オーバーしてるな。
「銅貨500枚を守らなかった場合のペナルティはあるのか?」
「超過した分のおやつを私が貰うわ……中々おいしいわねこれ」
「それお前が食いたいだけだろ」
マリアは早速、サラの荷物からおやつを取り出して食べている。
「でも遠くに行くってなると、ついついおやつをたくさん買っちゃうよね……」
「そういうもんなのか」
リリスがそう言うってことはそうなんだろう。
俺は菓子をあまり食べないので、興味がないからわからない。
そんなくだらない話をしながら歩いていて、ふと思った。
「サラ……もしよかったら、ここでゴーレムを出してみてくれないか?」
今は周りに草原しかない。
巨大なゴーレムと壁を造るくらいしか出来ないという、尖った性能を持つサラの地属性魔法を見ておくならここだろう。
「ふふふ、構いませんよ~では少し離れててくださいね~」
サラはそう言って地面に手のひらを向ける。
俺たちは指示された通りに少しだけ距離を取った。
サラが詠唱を始める。
今まで見たことのない、サラの神秘的な姿。
その横顔は、なるほどエルフの長の娘であると思わせるものだった。
やがて詠唱を終えると、地面から巨大な土の塊がせり上がって来る。
それはどんどん大きくなっていき、やがて横は街道からはみ出る程に。
縦は見上げねば頭が見えない程になった。
マリアが感嘆の声を上げる。
「これはまた随分と大きいわねえ」
「サラ……わかってるとは思うけど、本当にいざとなった時以外この魔法は使わないようにな」
「ふふ、わかりました~」
するとリリスは何だかうずうずとしている様子。
「ねえねえサラちゃん、これに乗って行こうよ」
「あら、それもいいわね~」
ゴーレムの両手が俺たちの目の前に降りて来た。
「さあさあ、皆乗って乗って~」
「いや、めちゃくちゃ目立つし恥ずかしいから嫌なんだけど」
「勇者アディ様が今更何言ってんのよ、ほらほら!」
マリアに背中を押されてゴーレムの手のひらに乗る。
片方の手のひらには全員乗れないので、分けて乗った。
右手側に俺とマリア、左手側にサラとリリスだ。
「勇者様~やっほ~」
リリスが元気に手を振っている。
一応俺も手を振って応えておいた。
「きゃっ、アディ様怖いわ……私高い所苦手なのよね……」
そう言いながら俺の腕にしがみつき、胸を押し付けてくるマリア。
俺的にはマリアの方が怖い。
第一そこまで怖がる高さでもないだろうが。人にもよるか。
「キシャアアアアアアア!!!!……キッ」
ゴーレムの足元で何かモンスターが出現した様だが、踏みつぶしてしまった。
まあ、本当に困った時にはかなり強い魔法だな……。
周りにほとんど物がない場所で、というのが使用条件にはなるが。
この辺は街道の中でも特に人が少ないポイントだ。
とはいえさすがに人が全くいないというわけじゃない。
通りがかった人々は、みな一様に驚いた顔で俺たちを見上げる。
それならまだいい方で、悲鳴をあげて逃げ出す者までいた。
結構見晴らしもいいけど、そろそろ潮時だな……。
「サラー!そろそろ降ろしてくれ!さすがに恥ずかしいし、道行く人をびびらせるのも悪いだろー!」
「そうですわね~」
大声で反対の手に乗るサラに指示を出すと、全員を降ろしてくれた。
下に降りると、リリスはちょっと困ったように笑いながら、
「楽しいし楽ちんだけど、たまにでいいかな……」
そんな風に感想を述べた。
そして毎度お馴染みの野営。
最近まではマリアに襲われそうだからとテントの外で寝ていたが、それもあまり意味がないとわかったので今回は普通に中で寝ている。
女性陣はジャンケンで寝る場所を決定したようだ。
俺の両隣にリリスとサラ、マリアはリリスを抱き枕代わりにしている。
「ふふふ、暗黒邪竜ちゃん、それは大根よ~」
サラの寝言だ。
一体どんな夢を見ているのか気になるな……。
そう言えば暗黒邪竜のやつは元気にしているのだろうか。
あのスケベ犬が懐く様な美女が、サラの他にも里にいればいいけど……。
エルフは美人が多いとは言うがどうなんだろうな。
「勇者様、勇者様」
リリスだ。起きてたのか……。
「どうした?」
「大好きです……えへへ……くぅ……」
寝言だった。
嬉しいのは嬉しいけど、やっぱりあの胸を締め付けられる様な感じはない。
昨夜、一昨日とリリスに感じたあれは何だったんだろうか……。
「ふふふ、アディ様……」
今度はマリアが俺の上に乗っかって来た。
「何だよ……おいっやめろ……」
「しっ……二人とも起きちゃうでしょ……ぐぅ……」
どうやら寝言だったらしい……ってんなわけあるかい。
とりあえずマリアを縛り付けて転がしておいた。
「ふふっ、これはこれで悪くないわね……」
「そうかい……」
何だか急に疲れた気がしたのでそのまますぐに寝た。
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