第36話:快刀乱麻を断つために


 初手は超特大の一撃だった。


 人間を易々と握りつぶせそうな片手と片手を合わせ、さらにその上にもう一対の手も重ねる。計四本の筋肉質な黒の腕を天に掲げるように振りかぶり、その豚鼻の怪物は常軌を逸した大槌を繰り出した。


 標的はもちろん、僕。


「――――」


 動きはそこまで速くなく、どうにか見切った僕は全力で回避行動をとった。

 拳は金切り声のような音を発して空を切り、圧倒的な物理エネルギーが地面に激突する。


 浅く積もる雪の表面に触れた瞬間、雪が散り散りに弾け飛び、拳の周囲の地面が大きく陥没。数瞬の間を置いて、さらにその周囲の岩盤も浅く、けれど超広範囲に渡ってひびが入るように凹んだ。


「ッッ……なんっ、てパワーだよッ!?」


 ――大地が、砕け散った。 


 そう陳腐に表すのが最適解のように。


 まるで噴火した火山口に立っているような錯覚が起きる。振り下ろされた拳を中心に干上がった土地のようなクレーターが広がり、砕けた地面が植物や雪と併せて反作用の衝撃で舞い上がった。


 岩やら土やら砂やらと一緒に宙を舞った僕は、どうみても死に体だ。

 怪物は片側三本の足で踏ん張りを効かせると、反対側の脚の一本を後ろに退く。緩慢に感じる世界で紫髪を靡かせる男――グラトニーがにんまりと笑ったのが見て取れた。


「殺さない程度にぃ――ねぇ? くすくす」


 そして、直撃不可避の猛烈な蹴り、、が来る。


「っ――『武具生成』ッ!!」


 ずお――っと。


 宙に浮いていた僕よりさらに上を舞っていた大きめの岩に短剣の切っ先を向け、その白の刀身を瞬時に延ばした。爽快な音を立てて突き刺さった反動を利用し、僕は怪物の脚を緊急回避。かすった際に発生した空気が軋む音は、その一撃だけで再起不能だと言わしめているようで。


 上に伸ばしていた剣は薙がれて粉砕、どうにか衝撃を堪えたおかげで手元に残ったのは刀身の砕けた短剣――地面に叩きつけられるようにぶつかった僕はそんなことを気にしている暇も無い。


 その場に止まることなく転がるように身を起こすと、『武具生成』で短剣を修復しつつ怪物の足元に向かって駆け――、


「あんまり僕を舐めるなよッ――『吸収反射リフレクション・ファイア』!!」


 フラム先輩に借りた炎を炸裂させる。

 その威力は、おびき寄せるために放った際の数倍はあるだろう。


 《金龍の加護》の効能――『炎属性無効』から派生したスキル『吸収反射リフレクション・ファイア』は、大別して二つの使い方がある。


 一つは今僕が使ったように、火属性へと変換された魔素マナを吸収し蓄積、任意のタイミングで火属性の単純な攻撃を可能とする使い方。


 二つ目は、怪物の饗宴グリアパレードの時に使用した他者の火属性のスキルまたは魔法を規模、威力、魔力量そのままに吸収し、即座に反射させる使い方。


 前者のメリットは任意発動。魔力変換も可。デメリットは単純な攻撃魔法にしか変換できないため、最大倍率で反射しても威力が落ちる点だろうか。


 後者のメリットは、吸収したスキルや魔法が強ければ強いほど、反射した時の威力も上昇すること。デメリットは蓄積不可。吸収したら即時反転しなければいけない点だ。


 そして、今回僕が使用したのは、使用せざるを得ないのは、フラム先輩がエルウェの側についている以上後者になるのは必定だ。


 至近距離での大爆発に僕にも爆風が及ぶが、如何せんシェルちゃんの加護のおかげで『炎属性無効』だ。体重のせいもあって軽々と吹き飛び、距離を取ることにも成功した。断片的な爆風の圧が、針で刺されみたいに少しだけ痛かったけどね。


「ぐべっ、いっつつ……や、やってやったぞ、どうだフラム先輩の炎を数倍にしたスキルは!? いくら階級レートS級トゥリアの化け物級とはいえ、少しは堪えたんじゃ――」


『……いや、よく見るのじゃ其方』


 禄に受け身も取れず、無様に雪の上を転がった僕は体勢を整えながら手応えを噛みしめる。

 しかしシェルちゃんが言うように、その爆発の規模を物語るように燻っていた黒煙が晴れた先には――無傷、、の怪物が立っていて。


「ふひひっ? あちしのオルカはぁ対【炎龍王】用にぃ火耐性を保つ魔物を掛け合わせたぁ特別製なんだよぉ~ん! ちっともぉ効かないねぇ!? どやどや」


 少しだけ焦げた紫髪を撫でつけるグラトニーも腕の一本に守られていたようで、口が裂けんばかりの笑みを浮かべている。なんてこったぱんなこった。


『むぅ……言われてみれば、垣間見える特徴は水棲の魔物や炎に纏わる魔物が多いのじゃ。とことん相性が悪いの……』


「おいおいおい……まじかぁ。そんなのあり?」


 え? と目を凝らせば――本当だ。


 魚の鱗だったりひれだったり水かきだったり、至る所に水棲生物の面影は見られる。僕の攻撃力不足を補ってくれるはずの炎反射が効かないとなると、いよいよ対抗手段が耐えるだけになるぞ? 同時に、勝ち筋は完全に潰えたことと同義だ。


「え、これどうすればいいの? 詰んだ? もう詰んだ?」


『逃げるしかないであろ! 腹に潜ったところで倒せるような敵ではないのじゃ!』


「ですよねぇ全力で逃げさせてもらいます!?」


 僕は口を開いている時間すら惜しいとばかりに脚を動かす。


「でもすごいねぇ!? 見たところぉ炎属性の系統に進化してるのかなぁ? そのくせにぃ、従来の『放浪の炎鎧』じゃぁないみたいだしぃ? まだぁ奥の手を隠し持ってたりィ? ふひひっ、解体するのがぁ楽しみだなぁ!? ほぉらっ、いけぇオルカぁ! ごーごー」


「ひぃいぃ褒められても全然嬉しくないんだけどっ!?」


 舌舐めずりしたグラトニーの気色悪い号砲を合図に、豚鼻の怪物は再び大地を砕いた。


 森という足場と視界の悪さをガン無視する、その巨体を生かした吶喊は驚異的。木々を薙ぎ払い、剥き出しの岩を砕き、まるで猪の様な攻撃をすんでの所で回避し続ける僕。人間に立ち向かう蟻のようで、惨めになるよほんとに。


 六本の脚は機動性に優れているのかというと、そうでもない。多種多様な魔物の部位をとってつけたような怪物は、それが致命的なぎこちなさを産んでいるのだ。だからこそ、動きはなんとか目で追えた。


 僕の身体がついてくるかは別だが、そこは戦闘勘で補うしかない。


 近づかれれば二対の腕が襲い来る。効かないとわかっていても炎を爆発させ、目眩ましに使って僕は爆風で強引な距離を取った。そんな強引な手段では着地なんてできるはずもなく、何度も冷たい雪の上を転がっては森の中を駆け回った。


「ちょこまかとぉ逃げるねぇ!? まだぁどこかに隠れてるぅカーバンクルも探さないとぉいけないしぃ……どうしてもぉ生きたまま欲しいのはぁカーバンクルなんだよねぇ? ふひひっ、オルカぁ? 殺す気でいってぇ――『海竜の鳴音アクア・ハウリング』」


 逃げるだけで良いのが不幸中の幸いか。

 人間が草むらで蟻を捕まえるのが割と難しいように、僕も低身長を生かして逃げ回った。灌木に紛れ、倒木の影に身を潜め、雪の中に潜り――すると、しびれを切らしたグラトニーが何かを命じた。


 豚鼻の怪物は一度脚を止めると、上体を大きく仰け反らせる。


 短い牙が覗く口を血が噴き出るほどに引き裂き、発射口を確保すると、口腔内に青の魔素マナが収束していった。螺旋を描いて吸い込まれる魔素ソレの奔流が可視化するのは、その量が莫大で、かつ密度も濃密であるということ。


 ――でかいのが来る。


『む――あの『溜め』は……射程は短いが広範囲一帯を更地にする、海竜の十八番スキルじゃ――喰らったら最後、其方でも内部から粉微塵であろ』


「ひぃいいぃいいいっっ!?」


「…………ッッ!? (ぷるるるるんッッ!?)」


 シェルちゃんの内部からという言葉に、ルイも恐怖でのたうち回っている。

 射程の短い超広範囲と聞いて、届くとは思わないが一応エルウェ達がいる方向とは逆側に走り、豚鼻の怪物を背中に抱える位置へ。


 逃げろ、走れ、逃げろ逃げろエルウェも逃げろ。

 

 ひたすらに距離を取る。前後左右どこに逃げても必中だろう。

 全力で走るけれど、間に合わない。


 解放の時が来て――背後で莫大な青の魔力が弾けた。


 喉が潰れているのに、無理矢理捻りだしたかのような異協和音が高らかと鳴りはためく。森の一部が扇形上に消失し、残った剥き出しの地面から湯気が立ち上った。


「――『金剛化』解除……ハァッ、ハッ、くそ、ハァッ、くそぉ……ッ」


 禿げた地面と難を逃れた森の境界、一度に押しのけられた森の表面が堆積した場所。僕は酸素を求めて水面から顔を出すように、湿った土や木片の山から両手を突き上げて、その手に握る兜だけを出した。ちょっとスキルの反動で動けないから、周囲の確認のために。


 ――固有スキル『硬化』から派生した金龍系統のスキル『金剛化』


 危機一髪命を救われたが、一気に魔力を持って行かれる。やはり魔力量がそこまで多くない僕にとっては、非情に燃費の悪いスキルだ。レベルアップのおかげか気絶していないだけましか。


『ちと威力が低いな……そうか、あのたてがみは海竜の子の……『炎耐性(特大)』のスキルも持っておる。人が多いこともそうじゃが、《亜竜の巌窟》を選んだ大きな理由の一つになっておるのじゃろうな』


 シェルちゃんが冷静に分析しているけど、僕は心臓バクバクでそれどころじゃない。なんとか身体も引っこ抜いてルイの無事を確認。兜を元の位置に戻して、必死に息を整える。


 ――やっばいマジで死ぬところだった! ていうか何だこれ、森が抉れてるんですけど! 普通にありえないんですけど! 目の前の異様な光景に息を呑む。


 しかも海竜の子って、あの『水魔の子竜アクア・ドラゴ』!? シェルちゃんみたいな種族等級レイスランクSSの『真龍』とは比べるまでもないだろうけど、今の僕からしたら雲の上の存在だ。確か種族等級レイスランクはA――《亜竜の巌窟》の100階層の階層主エリアボスだったよね!? 


「あぁああぁ~やばいなぁこれ、さっそく詰んだかな……そうだ、ねぇルイっ! 今こそは戦えないかなぁ!? ほらっ、勇気を出して! 君なら出来る! 一人だと時間を稼ぐのもままらないんだけど……ッ!」


 頼みの綱は、酷く細くて頼りないが僕の鎧の中に身を隠しているルイだろう。


 彼女は種族等級レイスランクGの本能からか、生まれ育った喰われる日々を享受するだけの環境からか、極度の怖がりでびびり屋だ。その潜在能力は僕のスキル『硬化』を防御力を一撃で粉砕する程なのだけど。


「…………っ(ぷるぷるぷる)」


「うんうん。シェルちゃん、訳して」


 細かな振動を感じて、何故かルイの言葉が理解できるシェルちゃんに翻訳をお願いする。


『……無理。怖い。死にたくない、と言っておるのじゃ』


「死ねシェルちゃん! ほんともう、なんていうか死ね!?」


『そうくると思って心の準備はしてたけどあんまりなのじゃぁあ……ッ』


 僕が罠に嵌めてまでルイと接触したのは――普通に仲直りのためもあるけれど――間近で戦闘を経験させて慣れてもらうためだった。


 まぁこうして目論見は失敗したわけだけどね。

 如何せん時間が足りなかった。もっと早くに仲直りしておけば……


『――其方ッ!! 後ろじゃ!?』


「はぇっ!?」


 生死をかけた戦闘中だというのに、余計なことを考えすぎた。

 シェルちゃんの声でどうにか回避できたけれど、背後の地面を割って襲来した黒の触手に反応が遅れた。ていうか何だこれ全然気づかなかったぞ!?


「……? 気配と音を喰ってる、、、、のにぃ、何で躱せるのかなぁ? もやもや」


 しかし、体勢が大きく崩れた。

 僕の生存を確認し再度迫っていたオルカという豚鼻の怪物は、気づけば目の前にいて。


 容赦なく片側二本の腕を振りかぶり。

 一撃目を先の要領で『武具生成』で伸ばした剣を軸に強引に躱し、連続で放たれた二撃目は、不味いもう魔力が――


「でもぉ? これでこれでぇっ、チェックメイトだぁッ!? ばっきゅん」

 

「――――ぁがあぁあッ!?」


 小さな身体の芯を的確に捉えられ、僕は弾丸の如く飛来。


 たったそれだけで、脳内に硬質な物質が砕ける嫌な音が高く響く。白に金の模様があしらわれた鎧の至る所にひびが入り、外側を守る数カ所のパーツが砕け散った。吹き飛ばされこの身にかかる圧は、泥水を絞る雑巾になったような気分だ。


 行く手を遮った樹木や灌木を幾本も貫通し、最後は峡谷の前に聳え立つ巨木の根元に突っ込んだ。極太の幹を陥没させ、項垂れた僕の砕け散る寸前の鎧からはプスプスと白い煙が立ち上る。


 ……何て威力だ。

 実力差が天と地ほども離れてるっていうのは、まさにこういうことだ。

 人と道具。使う側と使われる側。そういった覆しようがない絶対的な距離を感じる。


 ぼやぼや、ぼやぼや。

 脳漿をぶちまけそうな衝撃で意識が朦朧としている。歪んだ視界の先で、威風堂々たる豚鼻の怪物が歩み寄るのが見えた。痛みさえ感じない身体は動いてくれない。


 ――これで、おしまいか。


『――立て――やく――いぞ――其方、其方――ッ!?』


「…………!? (ぷるぷるぷるっっ!?)」

 

 シェルちゃんとルイが何か言っている。

 でも、意識が混濁して……うまく受け取ることが出来ないや。ごめん。

 好き勝手に振る舞って連れてきたのに……ごめん。


 ――エルウェは、逃げてくれたかな? 逃げてくれてればいいんだけど。


 でもなんとなくわかる。彼女は逃げないだろうって。

 だって、あんなに自分の眷属を愛する魔物使いは他にいない。あんなに心優しい魔物使いは、遙かなる高見へとその強い意志を掲げる魔物使いは、世界中のどこを探しても他にいないだろうから。


「……………………ねぇ」


 まぁ、今回は?

 エルウェの側にフラム先輩がいるからね。彼は劣悪極まりない『通り魔事件』の首謀者だ。夜な夜な何人も罪のない人間を殺して回り、いつかは主人エルウェすら殺すつもりの、最悪な。


「……………………何、でだよ……」


 本当はフラム先輩を止めたかった。エルウェのためにも、道を正して欲しかった。

 でも、それは儚き泡沫の夢か。今となってはどう足掻いても叶わないし、彼がその事実に気がついた僕を疎ましく思っていることは確か。


「…………何で、どうしてッ……ここにいるんだよぉお……ッ」


 だから。


 万が一にもなんて、ありえない――そう思って、いたはずなのに。

 意識混濁によって霞んでいるのか、はたまた柄にもなく溢れ出た涙のせいなのか。


 目の前で橙色の篝火、、、、、がゆらゆらと揺れて。

 紅い毛に覆われた、小さな子猫の輪郭が見えて。

 そんなの、反則だろ……なんて心底思いながら。


 僕は嘔吐くように、彼の名を呼んだ。



「――――フラム、先輩ぃ………ッ!?」



 どうして。どうしてどうしてどうして!!

 どうして僕の元に来た!? 僕を助けようとする!? エルウェを連れて逃げなかった!?


 フラム先輩にとって、僕は恐らく唯一にして真実を知る邪魔者のはずなのに……ッ!?


 明瞭になり始めた僕の視界のすぐ先で。

 小さいくせにあまりにデカい背中を見せていたカーバンクルは、首だけでこちらを振り返る。きらりと額の紅宝石ルビーが輝いた。


「……ヤムチャしやがってェ。生きてるかァ?」


「そっ、そのネタ、滅茶苦茶古いからね……っ!? しかも、こんな状況で、普通言うかなぁ!?」


 僕は思わず突っ込みをいれた。

 ほんと、今の切羽詰まった状況把握できてる? なんでそんなに余裕なのさ。少しだけ感動しちゃった僕が恥ずかしくなるような一言だ。


「うるせェうるせェ、早く立てェ。慚愧ざんきに堪えねェが、あいつはオレだけじゃ勝てねェ……共闘だァ。もちろン、まだ戦えるだろォ?」


 フラム先輩は煩わしそうに目を細めると、次には嫌らしい笑みを浮かべて僕を挑発してくる。

 言われなくても、スキル『武具生成』で治療中だっての。


「くそ、種族等級レイスランク高いからって偉そうに……当たり前だろ、僕を誰だと思ってるんだ」


「へェ、お前は誰なんだァ?」


 興が乗ったのか、はたまた戦場の雰囲気に当てられたのか。

 フラム先輩がノリよく振ってくれる。だから僕は答えよう。


「世界最強の頂に立つ魔物使い、エルウェ・スノードロップの恋人にして未来の旦那。兼、一番の眷属――名前は……まだ無い」


 そうだった、名乗る以前の問題なのだった。

 フラム先輩は大きく溜息をつくと、とことこと前方の木々を押し倒しながら迫る怪物に向かって歩み始める。惚れ惚れするくらい格好良くて、真似て僕も後に続いた。


「本当にお前は格好がつかねェなァ……まァ安心しろォ。この戦いが終われば主にもらえるさァ……生きて帰れればだがなァ」


「そうだね。だからさ、一緒にこの怪物を倒して帰ろうよ――エルウェのとこにさ。そしたら……三人で話し合おう。フラム先輩があんなことしてる理由だって、まだ聞いてないし……」


「……あァ。お前には全て話しても、良いかもしれねェなァ……とにかくゥ。今はあいつに集中だァ――『癒やしの篝火ボンファイア・キュア』」


 もう限界だと悲鳴を上げていた鎧の肉体を包み込む暖かい炎。

 一撃の下にへし折られた心は、傷と一緒にいつの間にか回復していた。

 誰のおかげかなんて言うまでもない。


「……エルウェは? 服乾いた? 一人にして大丈夫なの?」


「主は大丈夫だァ、ちょうど偽物の騎士、、、、、を置いてきたァ。主に手を出せば殺すゥ、主に何かあれば殺すゥ、主の三メートル以内に近づけば殺すと脅してきたし大丈夫だァ」


「あぁ、なんとなくわかったよ。無事でよかったとも思わないけど、それなら魔物に遭遇しても大丈夫そうだね」


「ひでェヤツだなァ……気ぃ抜くなよ? 油断すればあっという間に昇天だァ」


「どのみちエルウェの両親に『娘さんを僕に下さい』って言いに行かないといけないし……ちょうどいいかもしれないなぁ」


 そんな不穏なことを言っているうちに、鎧の修復を完了させた。


 フラム先輩は炎を司る召喚獣――カーバンクル。

 共闘したところで勝ち目は薄い。でも、一人で戦うよりずっと希望があるから。


「いくぜェ――相棒」


「おうともさ――」


 さぁ、命がけの第二ラウンドを、始めよう――

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