いきなり異世界に飛ばされて王候補になってしまった少年の記録

あんちゃん

第1話

その日俺は未だかつてないピンチを迎えていた。


「大人しくしろ!」


薄暗い空間の中で自分を取り囲むように展開する人達。その服装はRPGゲームや小説とかで見るようなファンタジーな服装であった。中にはローブみたいな服装で顔を見えなくしてる者もいた。


「抵抗せずに大人しくしてろよ!」


そして、それぞれが手にしている物を俺に突き出している。それは形様々ではあるがその先端は煌めいていて触れれば切れてしまいそうな・・・と言うより確実に切れるであろう刃物のついた剣や槍とかであった。そんな物自分の人生で見たことがあるのは家族が食事を作るときに使用する包丁やナイフくらいであった。それより大きく恐ろしいものを見るのは初めてだった。

俺は恐怖が優って彼らの言う事を聞くしかなかった。しかしその中で1番変わっていたのは。


「・・・・・・・・・」


俺の服の袖を摘みながら何も言わずに俺の顔をじっと見る少女であった。


「(どうしてこんなことになったんだよぅ。)」


俺はつい数時間前までの記憶を呼び覚ましていた。




その日もいつもと変わらないいつもの朝。

俺、佐久間晴人(さくまはると)は何時ものように目覚めてベットから起き上がる。すぐに近くにあるカーテンを開けると日差しが入り込んで部屋の中を明るくする。


「ふぁ〜〜。」


一回欠伸をしてから部屋を出て洗面台へと身支度しに向かった。今は3月の終わり頃。中学を卒業してから春休みであるがもう少しで高校生となるが今は限りある休みの日々を充実に過ごしていた。


「さて!今日も遊びますか!」





その日も友人達と1日中遊び家族と夕食をとって自室でゆっくり過ごしていた。ベットに座り壁に背中を置きながらお気に入りのライトノベルを読んでいた。


「(やっぱり、こういう世界いいなぁ。)」


晴人はファンタジー作品が好きでよくそう言った作品を読んだりゲームを遊んでいる。そう言った世界はないと分かってはいるがもし本当にあったら自分はどう活躍出来るのであろうとよく想像していた。


「でも、あるわけないもんな。」


みんなそうやって大人になっていくのだろうかと思いながらノベルの続きを読んでいくと。


「・・・・・・・・けた。」

「???」


今何か聞こえたような気がしたが周りには誰もいるはずもなく母親かなとも思って一度部屋の外を見たが誰もいなかった。それに、それ以降聞こえなかったから気のせいだと思い夜も深くなってきてたので寝ることにした。明日は何しようかとか考えながら眠りについた。






「(ようやく、見つけた。)」

「う〜〜ん・・・」

「(あの子を・・・お願い・・・私の・・・を。)」

「もう母さん。まだ夜じゃない・・・か・・・?」


何故か寝苦しく感じて更に誰かに声掛けられたので一度起き上がって態勢を変えようと思って周りを見ると違和感がした。目の前に映る景色が全く見覚えのないものであった。自分が寝ていたのは石で整えられた床でよく見ると壁や天井も同じ様な作りになっていた。


「えっと、ここ何処?」


薄暗い場所の所為なのか空気が少し冷たい風が顔を通り抜けることで少し目を覚まして自分の記憶を手繰り寄せてもベットで寝ていた記憶しか思い出せない。しかも自分が目覚めた場所は道の途中と思われる場所だと思われるのでどちらに向かえばいいのかすらも分からなかった。


「ん?」


すると、何かを感じてその方へと歩き出した。晴人の中で不安や恐怖もなくただ歩き続けて行くと奥の方が明るくなっている場所があった。そこへと入ると中は通路とは違い明る場所であった。通路もそうであったが電球の類の物は見当たらなく何故明るくなっているのかは分からなかった。しかし、この部屋だけは明るい原因は分かった。部屋の大きさは結構広くて恐らく学校の教室ぐらいの大きさがあるであろう場所の中央に1つの大きな結晶が浮いていた。何かに吊るされてるわけでもないのにその結晶は地面から少し浮いた状態でそこにあった。


「・・・・・・・」


よく見ると結晶の中には何か入っている様に見えて晴人は思わず近くに寄ってそれを確かめた。そこにあったのはよく見えてないが恐らく座った人の影の様に見えてもっとよく見ようと思いその結晶に手が触れた。


「うわっ!?」


触れた瞬間、結晶が光り出して思わず飛び退いて距離を取った。結晶は光ながら少しずつヒビ割れていき崩れ出していった。そして、中にあったものがハッキリと見えるようになった。そこにあったのは・・・


「お、女の子!?」


そう。その中にいたのは女の子だった。年は晴人と同じくらいだと同じくらいだと思われ腰まで伸びた長い白い髪が光と合わさって煌めき銀髪の様にも見えるが一番の問題はそこでは無い。その少女はまだ眠っているのか結晶の中にから出てきてゆっくりと地面に向かって落ちていった。


「危ない!」


晴人は咄嗟に走り出した少女が落下地点に向かいギリギリで受け止めることに成功する。


「あ、危ないぃっ!?」


一安心したのも束の間思わず受け止めて少女の姿を見ると思い出した。落下してきた少女の姿は産まれたままの姿。そう裸であったのだ。少女の髪が奇跡的にも隠す所は隠してくれているので見えないところもあるが晴人の腕には裸の少女の感触がダイレクトに伝わり視界にも見えない場所はあるがそれでも裸は裸なので思春期の男子にはキツイものがあった。


「う、う〜ん。」


すると少女がまるで朝になったので目覚めるかのように目を覚まして目があった。その目はまるで晴天の青空の様な蒼色でその瞳に心を奪われそうになったが直ぐに裸の事を思い出し顔を真っ赤にして顔を背けた。


「ご、ごめん!見てないから!」

「・・・・・・・」


少女は怒ったり騒いだしせず腕から離れていく。晴人は微かに残った少女の温もりを感じながら目を一生懸命閉じていた。ペタペタと少女が目の前で歩いているのか足跡が聞こえたが直ぐに消えたと思えば頬を両手で挟まれて無理矢理方向を正面に変えられた。


「っ!?」


思わず目を開けてしまって再び少女と目があった。少女は立ったまま少し屈み込み顔を晴人の目の前まで持ってきていた。晴人の司会の恥には胸があり髪の毛が揺れて小さい何かが見えた気がしたけど晴人は見えなかったことにした。


「あ、あの。えっと・・・」

「・・・・・・・」


晴人は今置かれている状況についていくことができず混乱していた。知らない場所での不安と言うより目の前には裸の美少女のインパクトが強過ぎていた。


「・・・マスター。」

「へ?」


いきなり少女にマスターと呼ばれて思わず変な声で返事した時自分が通ってきた道から沢山の足音が聞こえてきた。足音だけじゃなくガチャガチャと何か金属の様な音も混じっていてしばらくすると何人もの人達が入ってきて晴人達を包囲する様に展開して取り囲まれてしまった。


「へ!?はぁ!?」


晴人はもうなにがなにやら訳がわからなかった。しかし、状況は進んでいき1人の男がその手に握る剣を突き出して叫んだ。


「大人しくしろ!大人しくしていれば命はとらない!」

「(な、何がどうなってるんだよぉぉぉ!!!)」


この時晴人は知らなかった。この少女との出会いが自分の運命を決める事になるとはまだ知る事でもなかった。

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