虫嫌いの消滅神王(ムニキス)

高本マサレ

プロローグ 無望のスタートライン

そう、それは突然の出来事だった。

それは、なんの前触れもなく幕を開けた悲劇の始まりだった。

19XX年、その年もなにも変わらず平和に終えると誰もが思っていた。そして、その誰もを裏切るように、19XX年は、人類が最も衰退する、いわゆる終焉を迎える事態へと成った。

黒霧。世界は謎の正体をそう称した。

それは、突然太平洋全海域に現れた、正体不明の黒い霧。

黒霧が現れると同時に、全人類は、様々な案を上げ、この謎の正体を解明しようと、多種多様な手段を実行した。

しかし、どのような手段を使っても、結果はすべて、「未知の…」だった。

それに加えて、各国のメディアは、根拠もなにもないにも関わらず、科学汚染の最高値や、地球温暖化の原因等、環境的視点のフェイクニュースを作り上げ、人々に、安心と、微かな心配を与えた。

未だに騒ぎ立てる人々の心を落ち着かすため、国際連盟や、各国のリーダー達は、その原因である黒霧をどうにかしようと、何度も集まった。

そんな風に、人類は、謎の正体にも怯え挫けず、立ち上がってきた。しかし、その頑張りも努力も全て水の泡になるのは、黒霧が出現してすぐの事だった。

その日は、黒霧が出現して、17日目の早朝。いつもなら、地上を照らし朝を伝えるはずの真夏の太陽の姿が見えず、夜と変わらない空の光景が人々の頭上にはあった。暗い、まるで太陽が濃い雨雲に隠されたかのように暗い。

その光景は、朝を迎えた地球半球面だけでなく、夜を迎えた国々でも、空に灯る満点の星々はおろか、無月でもないのに月の姿は現れる事もなく、光の一筋さえ地上を照らすことはなかった。

暗闇が地球全土を覆ったとなり、人類は黒霧が出現した当時いらいの大混乱をひき起こしていた。村や町では、街灯や、篝火等で周りを照らし、安心を少しでも得ようと、祭や集会を行うなど様々な政策を立てた、又、大きな都市よ、都会部では、大企業の社長や、政治関係の大御所など、所謂金持ち共が手持ちの有り金を使い、余った有り金と自分の命を守るため、シェルター等を作り、そこに閉じこもっていた。

黒霧についての会議を行っていた各国の首長らは、この情報を聞くととたんに、再び騒ぎ、意味の無い案を出し続けた。そうして、人類は二度目の試練も様々な工夫と耐久心を手に頑張って乗り切ろうとしていた。

しかし、その日の正午、二つの針が真上を刺したとき、それは起こった。

黒い空、そして黒霧から、我々人間の知らない生物が大量に現れた。

いや、わき出てきたような光景だったらしい。

その人類未知の生物の形質は統一性がなく、二足歩行もいれば、四足歩行も居て、中には地面に足を着かず空中に浮かんでる奴や、大きな翼のようなもので大空を縦横無尽に飛び回る奴まで現れた。そう、まるで空想中の怪物らが現れたのだった。人々は怯えた、しかしその中にも必ず少数は頭の切れる勇者がいるようで、どうにかコミュニケーションをとろうと、近づくものもいた。しかし、その行動は無意味となるのだった。なぜなら......、その生物らの第一行動は、人を、我々人類を殺す事だったからだ。

当たり前のように、怪物らは、前に出た勇敢な者を軽々と拾い上げ切り刻んだ。

爪が人間の体を貫き、血飛沫や内蔵が飛び出す。

周りにいた人々は、経験の無いそんなあり得ない状況に、驚くき声を出すことも、怯え挫けることもできず、その場に立ち続けることしかなかった。彼らは恐怖に足を捕まれていたのだろう。

そして、誰かが声を上げ逃げ出す。その声に気を戻し、その後を続けるように一目散に逃げ出した。

だが、怪物らは、逃げ出す人間らを放っておく訳もなく、追いかけ始めた。

そんな残酷で悲惨で、絶望的な光景は、様々な国々でも同じように起こっていた。

多くの人が次々に軽々と殺されていくなか、人類は軍や自衛隊などの攻撃手段に移った。

空には、ミサイルを乗せたジェット機が飛び回り、大地は戦車や軍人が走り回り銃弾が空を切る、海には、人民を救助兼避難させるために戦艦を用意した。

銃弾は怪物らに多少は効くらしく、火力や戦法により戦況は人類が優越しているとも思えるが、怪物らには数の力がある。倒しても倒しても、黒霧からわき出てくる、きりがない状態だった。

何か、この戦況をガラリと変える事の出来る切っ掛けを、大きな力を人類は望んでいた。

そんな中、日本ではある人物の噂が流れた。

「黒ローブの男」と。

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