愛が訪れ?

カゲトモ

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「ふふふ、こんばんは」

「こんばんは、いらっしゃいイツキちゃん」

 えへへ、と少し照れたように笑うのは短い黒髪が可愛らしいイツキちゃんだ。今日は黒ポロ黒パンのバイトファッションではなく、淡い黄色が夏らしいとても少女チックなファッションだ。高校生だと言われても納得するような可憐さだけど、彼女はれっきとした成人女性だ。

「今日はバイトお休みなんだね」

「はい、今日はお友達と遊びに行ってきました。知っていますか、最近お花のカフェができたんですよ」

「お花のカフェ?」

「お花がコンセプトのカフェ、って言うんですか? 飲み物にも食べ物にもお花が使われていて、店内にも沢山お花が飾られているんです」

「へぇ、そんなお店があるんだ」

「はいっ、まだオープンしてすぐなので凄く混んでいて、かなり待ったんですけれど最高に良かったです。美味しかったし、可愛かったし」

 そう言って楽しそうにスマホの画面を見せてくれる。さすが今どきの若い子と言うか、花びらとフルーツが舞い散る鮮やかなパンケーキも、透明なグラデーションに色とりどりの花が咲くドリンクも、一般の人が撮影したようには見えない。商品写真のような綺麗さだ。

 若い子程、そういうスキルがあって素直に羨ましい。俺が撮るといつもなんだか不味そうなんだもん。

「綺麗だね」

「そうでしょう? しかも凄く美味しいんですよ。最初はやっぱりお花を食べるのってちょっと抵抗があったんですけれど、びっくりするぐらい美味しかったです」

「今までお花は食べたことなかった?」

「ないです。デザートに乗っていても飾りだと思って食べなかったし。それに私、お花が食べられるって初めて知りましたもん。花菱さんはご存知でしたか?」

「知ってはいるけれど、そうやって食べたことはないかな。パセリとかミントとか、そういった感じのイメージがあるから」

 食べてもいいけど食べなくてもいいよ、くらいのものかと思っているから。

「それじゃぁ損していますよ! お花は美味しいです!」

 花は美しいと言われることはあっても、美味しいと断言されたのは初めてかも。まぁでも彼女がそう言うのなら、今度からは食べてみようかな。

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