第9話
異能具を手に入れるため、与神の血族の近況確認を文月見世と熟して、島を渡った回数は十を越え二十を越え漸く折り返しになった12歳になる秋頃。
「やりましょう戦隊ごっこ!」
「今度は戦隊ごっこですか……」
井矢見懐木はお飯事から発展、遊ぶことにドはまりしていた。
「だって、格好いいじゃないですか!悪しきを挫き、弱きを助け、最後にはみんなが笑いあえるように頑張る!ヒロは素敵だと思いませんか?」
「嫌いではないんですけど……ジブンとナっちゃんだけだと戦隊ごっこは厳しいと思うよ?」
「人なら当てがあります!」
「何所に?」
井矢見懐木は天月博人の両肩を掴んで、にんまりと笑い、天月博人に嫌な予感を感じさせる。
「ヒロにはお友達がいますからね!戦隊ものであるならー、そうですね、私、動けないので、活動できる人が五人なのが戦隊ものだと思うんです。ですから、後4人欲しいですね!」
「ジブンの友達、友達100人の10分の1にも満たないんですけど……一応声はかけて見ますけど」
期待に満ち溢れた笑みで井矢見懐木はそう言った。何かと井矢見懐木の願いを断れない天月博人は貌を引きつらせながら了承した。
「で、俺等が呼ばれたと。戦隊ものねぇ……面白そうだな!俺は無難にレッドで良いな?」
「可威君やる気満々だね……僕は……博人君と可威君がやるなら……やろうかな。色って決めた方がいいの?」
「色決めるならジブンは緑で良いです」
まず声をかけたのは友影可威と二海稀理、住んでいる白雉島でできた友人2人である。2人は快く参加してくれるようだ。それにしても住んでいる地域で友人が4人も満たないのはどうかと自身をどこか情けなく思う。
「博人に呼ばれて暇だったので慶雲島からわざわざ白雉島に足を運んだのですが…………ゴキブリ以外は初見の人ばかりですね。それに何故に集合場所が白雉病院の一室なのか……いや、見ればわかりますけども」
「イエーイ!なんか面白そうデでしのでミィも来たデスよ!それとジェイク?ミィは
「なら、家に忍び込むのと、ジェイクと呼ぶのをやめてください。ゴキブリの触手の様に生えたアホ毛二本を引っこ抜きますよ」
「いくら解いてもこうなる癖毛なんデスー!引っ張ったら凄く痛いんデスよ!?」
朱鳥島から文月見世を、慶雲島から伊藤改が召集に応じてくれた。与神の血族の1人と、与神の血族直属の研究者の一族1の1人とどちらも与神の血族関係者である。同僚と部下のような存在は友人と言えるのだろうか、いや、それなりの仲になったのなら友人と言おう。
「お二人は初めまして!えーと、何だか日本の気が目立っている女の人が文月見世ちゃんで、ゴーグルって言う眼鏡の様なものをおでこ付けた男の人が伊藤改君、あだ名がジェイク君ですね!ヒロのお話に出てきました!私、11歳の井矢見懐木です。井戸で弓矢を見ると書いて伊矢見、懐かしい木と書いて懐木です」
「おほー、ミィの事を聴いていたんデスね!嬉し恥かしく思うデスね!ところでその名乗り方は面倒臭くないデスか? もう少し、
「ソフト……? あぁ!ソフトクリームですか? 名前にソフトクリームに何の関係が? 最近寒くなってきましたから食べるのはお腹が痛くなるらしいので止めた方が良いと思いますよ?」
「いや、あのミィが言った
「おい、何でジェイク呼びが広まっているんですか?意味不明な風評被害になりかねないあだ名を広げる畜生の化身だったんですかテメェ」
「お茶目の要素があるならそれを取り入れて、面白おかしく語るのがジブンがなっちゃんに出来る事だからね、仕方がないと思って割り切ってくれると助かる」
友影可威と二海稀理は参加する。あとは、二海稀理と伊藤改が参加するかどうかで戦隊ごっこが出来るかどうかが決まる。もし断られて水に泡になると思うと(なんで戦隊ごっこの為先週の土曜日に走り回ったのか)と言う思いがどうしても込められてしまう。
「俺は友影可威、こっちは二海稀理な。そっちの名前はいまさっき懐木に利いたから大丈夫として細かい自己紹介は後な」
「あっさり紹介された稀理です。うん、一応言っておくけどこれでも男だよ」
「え!?
「ちゃん付けなんだ……懐木ちゃんで慣れたから良いけどね」
「男の
「ジェイク君、なんだか語感が違いませんか?」
「ナっちゃんは気にしなくていい事だと思う……っで、戦隊ごっこをやろうってことなんだけど……見世ちゃんとジェイクは¥の2人はやってくれるかな?」
話が先いほどから自己紹介の延長線上のものに脱線しているので、無理矢理軌道修正する。
「テメェもジェイク呼びするんですか……はぁ、そうですね。オレとしてはまず、その戦隊ごっこは何をするのかを聞かない事には判断しようがありませんね」
「ミィは別にやっても良いデスよ? 新しい
文月見世は乗り気、伊藤改は内容次第と言ったところである。思えば、天月博人も事の八端であるその一人なのだが、厳密に何をするのかは分かって居ない事に気が付き、井矢見懐木に「そう言われれば、戦隊ごっこって何をするんだ? ジブンもよく分かって居ないのだけれど」と真っ直ぐに尋ねる。すると伊矢見懐木は「あっ」と言ってから、暫く唸りながら考えてから笑った。
「悪しきを挫く……!は……私達、子供なので……皆さんに怪我してほしくないので、なるべくしてほしくないです……だから弱きを助けをやりたいですね!困っている人や動物を見つけて助けるんです!」
「ふむ、なるほど……アニメでよくある奴ですね……人助けをする部活だー的なそう言うの……ほうほう……良いでしょう、やっても良いですよ」
「やったー!ヒロ、人数が集まりました!」
「よかったねー。ジェイクはなんかアニメでやってるからってのに釣られた感じが有るけど」
やると決まって、天月博人が先週走り回った事が報われ、ホッと胸をなでおろすと、友影可威が手を鳴らして自身に注意を引き付ける。
「ならさ、さっき俺がやったように色を決めよーぜ? 戦隊もんなら誰が何色化ってのは決めねぇとだろ」
「戦隊もの……戦隊ものですか……まぁ、色も7そうですけれど、こういう人助けの集団にはチーム名がある者です。チーム名を決めましょう」
「丸々レンジャーとかそういう感じでか?」
「そんな感じです。レンジャー以外にも、団とか何々ズとか色々ありますね。惜しむべくはこれが部活ではないので何々部が使えない事ですか」
「そこらへんは適当に考えてくださいデス!ミィは弱きとやらを探して来るデス!」
文月見世はそう言って病室から出て行った。その間に、天月博人が緑色、井矢見懐木が白色、友影可威が赤色、二海稀理が紫色、伊藤改が青色を選び、チームの名前が「明日に続く感じが良いです!」「暗い感じよりも明るい感じのが断然良いと思うぜ」「僕達は此処に居るぞって感じとか出してもいいかもね」「アニメではわかりやすく人助けを思わせる名前にしていますね」といった各々の意見を取り入れて考える。
そして、迷子という分かりやすいお題を連れて病室に戻ってきた文月見世に内容を伝え、黄色を選んでもらったところで戦隊ごっこが本格的に始まる。
「【照らしの六人衆】!いくぞー!」
「「「「「おー!」」」」」
「お姉ちゃん達……何やってるの……?」
こうしてごっこ遊びから、【照らしの六人衆】と言う名の井矢見懐木が発送し、天月博人を中心のつたでにしたチームが誕生した。
「なーんでゴキブリ以外携帯端末を持っていないんですか!? 入院生活がデフォの懐木はともかくとして!博人、可威、稀理!テメェら白雉島の奴らは携帯端末を何で持たないんですか!?」
天月博人が見つけ出した親に子供を引き渡し、一件落着となったところで、伊藤改が一度戻ってきたことで解決していたことを知り、連絡手段がない友影可威、二海帰路を探しに、文月見世に連絡を入れて再度街中を走り回る事に成り、こうして怒る事に成った
「用があるんなら直接会いに行けばいいじゃん」
「僕は携帯端末が欲しいなんて言える様な環境じゃないんだよね」
「毎月金を吸われるんだろ?明日食う物にも困ってた時期を思い出すと途端に腹が痛くなりそうだから要らない」
「いつの時代の人間だ!背景を想像すると突っ込みづらい!この時代、立場も考えると携帯端末位持っててください!」
「「「えー」」」
伊藤改は携帯を持つことに後ろ向きな3人に対して何かがキレたのか、顔を強張らせて最早変顔に頭にかぶって居たり首にぶら下げて居たりするゴーグルを目に掛けた。
「よーし分かりました。時代遅れの原始人共に技術と言う人類の奇蹟を見せてやりましょう。最先端の携帯端末はおろか最先端のその先の物を作り上げて、テメェらを技術と言う叡智漬けにしてやりましょう! ところで携帯端末の形を決められるとしたらどんなのが良いですか? 一般の板型でもいいですけれど眼鏡型や腕時計型とどんなものでも来週までに作り上げて見せましょう」
どんな携帯端末が欲しいと伊藤改が尋ねると真っ先に文月見世が手をあげて「ミィの
「で、メインの三人は!?」
「な、何でも良いなら……僕、財布持ってないから財布が欲しいかなって」
「じゃあ俺はカードケースで」
「成程成程……」
伊藤改は要望を聞くと、また空中を指で打つ。
「博人はどうですか?」
天月博人は欲しい物は何かを考える。異能具とかそういうものではない一般的な自分の為の物。しばらく考えて何も思い浮かばず。であるならば持ち運びやすい物、失くしにくい物に合わせて何かに役立ちそうなもので考え、伊藤改のゴーグルが目に入った。そして先ほどから空中で行う謎めいた指の動きから考えて。
「ジェイク、そのゴーグルって携帯端末だよね?」
「はい、そうですけど?」
「ならゴーグル型が欲しいかな」
「へぇ、了解っと。携帯端末、カメラ、財布、カードケース、ゴーグルっと……おっと、懐木はどんなのが欲しいですか?」
伊藤改の思い出したかのような切り替えしに井矢見懐木は驚いて体が跳ねる。
「わ、私は……そうですね……使いやすいものが欲しいです」
「ふーむ……看護師にばれても面倒臭そうですね、であれば使いやすそうなのは板型の発展、本型でしょうかね。はい、了解しましたっと」
「へーいジェイク! ミィ、
「エンブレムか!良いなそれ作りてぇ!」
「何とまぁ面倒臭いですけど……はい、分かりました。適当に考えた物を携帯端末に付けておきますね」
何だか戦隊ごっこが白熱している様だが。
「私、今日は賑やかて楽しいです。ヒロ、新しい友達を連れてきてくださって、有難う御座います」
「ジブンも楽しかったから良いよお礼なんて」
皆が楽しそうなので、よしとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます