お待たせしました。玄関先で、白い雪にまみれた男が注文したピザを差し出してきた。寒いし早く家の中に戻りたかったのだが、彼が次回使える割引券を必死に探しているせいでそれははばかられた。その間にも、雪は容赦なく彼の体に吹きつけていく。

「配達、無事に終わることを祈ってます。こんな寒い日ですから気をつけて」

 励ましの言葉を口にしたとき、やっと割引券が見つかった。それを受け取り、素早くドアを閉める。扉の脇のすりガラスには、まだそこに立ち尽くす彼の姿が透けていた。いったいどうしたのだろう。リビングへ向かいながら、彼のバイクに山と積まれたピザたちを思い浮かべる。早く届けないと、ずっと寒い外にいることになるのに。






(お題……『祈り』 本文300文字)

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