服
つぐお
第1話
一定区間内において、精神的余裕と経済的余裕は交互にスイッチする。
仮に今、精神的余裕が無いとしよう。その余裕が満たされると、次に来るのは経済的余裕の欠乏だ。その次はまた、精神的な欠乏が訪れる。
一定区間以上になると、経済的な配慮はさほど気にならなくなる。それ以上お金を所有していても、一般的には生活レベルがさほど変わらないからだ。
そうなると、人はやはり、健康が大切だと言い出す。
しかしながら問題は一定区間以下だ。
その場所においても、実際は区間内と同様にスイッチングが発生する。このスイッチングが瞬間的に高速に行われたのちに、片方に偏りいつしか安定する。この安定と言うのは、スイッチングする余裕もないほど、経済面の余裕あるいは精神面の余裕が無い状態を指す。
余裕の欠如がいずれかに安定すると、次に来るのは認知的不協和だ。手の届かないブドウは食べるまでもなく酸っぱく、視界に入れることすら無意味だ。
そうなるともう自力で抜け出すことは困難になる。
外的要因を待ってもいいが、現状維持にしがみついてしまっている身では、よほど大きな衝撃でない限り身動きが取れない。
中途半端に身につけた、粗末な経験を基にした未来予測が重い足枷となっている。
だが実際のところは、絶えず外部からの刺激を受けている。周りをよく見渡してみるとそれらに囲まれていることに気づけるだろう。
私を変えた音楽は私を形成し、私はあの服を欲し、服を着た私は再び私を形成する。
着れずに押入れにしまってあった服を着て外に出てみる。
服 つぐお @tsug_o
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