第19話 ジェットコースター
ジェットコースターも、もちろんお菓子で出来ていた。こんな危険な乗り物を、お菓子という脆い食べ物で作ってしまって大丈夫なのだろうか、とは思ったが、トラマルとリアはそんなことは気にせず悠々とジェットコースターの座席に座った。
「ドキドキするわね」
「まあ、たいしたことはないだろう」
「そんなこと言って、終わったあとに半泣きになっていても知らないわよ」
リアはその様子を想像してクスクスと笑っていた。どうやら、トラマルは強がっているだけだろうと思ったようだった。
「勝手に言ってろ。だが、もうすぐ動き出すぞ」
「え?」
ガコン、という音とともに、お菓子で出来たジェットコースターが動き出した。ゆっくりと、確実に線路を通って高いところへ登っていく。そこから見える景色は、まさに絶景だった。
「うわ~。綺麗~」
リアがその絶景にうっとりしていた、次の瞬間。
ガコン。
「へ?」
ジェットコースターの、急降下が始まった。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
リアの絶叫がビュレットの町全体に響く。聞くものすべてを恐怖の谷に叩き込むような絶叫だった。
ジュッとコースターがカーブする。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ジェットコースターがホップする。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ジェットコースターが落下する。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
結局、ジェットコースターが止まるまで、リアの絶叫もとどまることを知らなかった。
そして、リアがジェットコースターから降りた瞬間……。
「気持ち悪い……」
酔っていた。
「お前、よくそれでジェットコースターに乗ろうって言ったよな」
「だって、まさかここまで激しい乗り物だとは思わなかったんだもん……うっぷ」
「吐くなよ」
「……無理」
オロロロロロロ、とリアはベンチの裏に女性として見せてはいけないものを吐き出した。トラマルはため息をつき、またしても水の入った竹の水筒を取り出す。どうやら、トラマルの分の水はすぐになくなりそうだった。
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