第1章
1 フレッシュハンティング
朝七時の学校は閑散としていた。
普段なら朝練の運動部員が目に入るはずだが、今日は始業式のため活動していない。
広い玄関を遮るように大きな無地の看板が並んでいた。一人の教員が何やら紙をピン留めしているようだった。
「クラス発表。まだ張ってないのか」
まあ俺はA組なんだけどな、と心の中でぼやきつつも、教員が作業を終えるのを待つ。
しばらくして教員が退散した。歩を進め、軽く眺めた後、看板を回り込んで玄関に入る。
靴を上履きに履き替え、ずんずんと校舎を進む。
一般棟四階、二年生フロアの、自分の教室に入り、出席番号からロッカー位置を逆算。リュックを押し込んでから教室を出た。
続く行き先は五階。
新一年生のフロアだが、間違ってはいない。日向の目的階だ。
「さてと……」
階段を上りきったところでスマホをしまった日向は、傍目にもわかるほどに感覚を研ぎ澄ます。
微かな足音。
渡り廊下をはさんだ対岸側、特別棟の各教室内。
一般棟の各階から五階に来るまでの所用時間――
全てを総動員して、リスクを読む。
「――よし。
日向は右折し、早歩きで進む。
廊下の途中、教室が並ぶ手前のところで再び右折。トイレの出入口だ。
右側が女子トイレ、左側が男子トイレであるが、日向は迷わず右側に入る。
ポケットから何かを取り出した。
火災報知器のような形状をしている。裏返してシールを剥がす。
それを手に持ったまま、三つ並んだ個室の一番奥に入り、少し振りかぶってからジャンプした。
天に向かって伸ばされたそれは、いとも簡単に天井に届いた。
間もなく地に足が着く。着地音は無音に近かった。
「あと二つ」
日向はいったん自分の教室に戻り、リュックから同じ物を取り出してから、また女子トイレに向かった。
二番目の個室、その天井に設置。
それをもう一度、今度は一番手前の個室にも適用する。
流れるような手捌きと足運びで、あっという間に全個室に設置し終えた。
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