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「あれは時代だったとは思うんだけどね。あの頃はそこらじゅうに河川敷だってあったし、今みたいに遊べるものが溢れていなかったから」
「今は色んな遊び道具がありますもんね。今では携帯ゲームだってむしろ持ってない方が変、くらいのところありますもん」
「スカイくんのときもそうだった?」
「はい。外での遊びも主流でしたけど、テレビゲームで遊ぶのも流行っていましたよ」
ボタンがいっぱいあるコントローラーとか、まだ重い長方形の携帯ゲームとか。今の時代じゃ外で遊ぶよりも家に集まってゲームしたり、むしろ各自家に居ながらオンラインで遊んだりするんだよな。
「外は危険がいっぱいだからね。家で遊ぶ方がむしろ安全なんだろうね。これも時代だねぇ」
「そうですね、ちょっと悲しいですけれど」
外で遊ぶときのあの解放感、突然の雨であり得ないぐらい盛り上がったり、公園で好きな子と出会って気まずくなったり、今まで仲良くなかった子とちょっとしたことで仲良くなれたり、午後五時を知らせるサイレンでちょっぴり悲しい気持ちになったりするの、今の子供たちはあんまり知らないのかと思うとちょっと可哀相だと思うくらい。
土橋さんは自分のスマホの電源を入れると目尻を薄く細めた。
「ま、その分僕たちの経験できなかったような楽しいことを今の子達は知っているんだろうけどね」
「ふふ、そうですね」
「見てよこれ、僕の時代では考えられないでしょ?」
そう言って見せてくれたのはお孫さんとの写真だ。それはビデオ通話のスクリーンショットで、右側のお孫さんはフォークを片手に満面の笑み。どうやら誕生日ケーキを食べているようで、左側の土橋さんは三角のパーティー帽をかぶっている。その後ろにはハッピーバースデイの文字。なるほど、テレビ電話で誕生日パーティーをしていたんだな。
「遠くに居ても孫の成長を見られるのはいいね。長生きはするものだよ」
「ふふふ、まだまだ長生きしないとダメですね」
そうしたら遠くに居ても傍に感じられるような装置がそのうちできるかもしれないでしょ? もしかしたらどこにいても会いに行けるドアができるかも?
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