第14話 売る者の時代
とりあえずマップとコンパスを用意するんだ。僕は空っぽの人間さ。ただの少年さ。白い世界へと僕は突入する。何もない世界だけどね僕は勇者ミルクを探さないといけない。
何故だろう? 自分が何を求めているかは、頭では解らないよ。だけど、僕の足は突き進む。それが僕の本能であると告げるんだ。そうだ! ミルクを目印にすればいいんだよ。目標はミルクだからな。キツキツとミルクにも再び会いたいな。
「私は何処に行けばいい? 知識の果てはどうやったら行ける? 目の前の山を越えれば、勇者の証は存在する。だけど、目の前の山を越えなければ、じい様を伝説にすることも出来ない。大岩が待っているのだ。勇者としてのミルク、つまり私をな」
僕のセンサーは、ミルクの声を捉えた。しかし、僕とミルクの二人は、見事なまでにすれ違う。どうすればかみ合うのだろう?
ヘルは、もう二度と顔を出すことはないんだろ。もしも知識の果てが、ミルクと対極の場所にあるとしたら? もう会えないのかな。僕は孤独に生きるのかな。巨大な天使も山を越える力はない。イカヅチが山を襲う。ミルクはがむしゃらに剣を振る。嫌いだった両親と向き合うために。
リアルワールドに僕達はゲーム世界を求める。何処に行っても、ミルクはいない。何処だ、何処にいるんだよ? 僕はデータソードを左腕に持つ。目的を探すんだ! それが見つかるまで、僕は空っぽの白い世界から脱出出来ない。僕の心の中にキツキツが現れる。そして、虹のビームを放つ。それはデータソードと激突する。僕の作り出した幻影との戦いだ。キツキツは言う。
「売る者の時代とは何なのか知っているか、大岩。それはな、リサさんの想いを受けとめたもの達が、居なくなった時終了する。次世代の時代へと移り変わる。俺はリサさんの時代にこだわらない。青年売る者の血を継ぐ大岩の時代もまた、『売る者の時代』だ。それを受けとめるかどうかは問題ではない。キサマが願う時代へ、俺を連れて行ってくれ!」
キツキツの幻影は、言いたいことを言い終わると去って行く。
次の幻影はクルミだな。クルミも言いたいことを言う。
「私は売る者の時代に興味がない。私が求めるのは、純粋な知識だ。それが後悔だったなんてショックだけどね。それでも前に進めたと思う」
また、幻影は去って行く。
これらのアドバイスは何なのだ? うーん、解らん。いや、待てよ。こいつらは、僕の考えうる最高の知識を持った『僕の記憶』を、総動員したものだ。つまり、身近な存在ならどうするかを、シミュレーションし続けているということだ。これを続ければ、僕は答えに辿り着く。ミルクは山登りに苦戦しているな。早く勇者になってくれ。それが試練だとしてもな。僕は旅に出よう。ミルクとは何時か遭遇すると信じて。マップとコンパスは自らの頭で構築し、紙に描く。記すのさ。
ミルクのいう山とは、踏み込んだら勇者になってしまうという恐怖が産み出したもの。つまりは、登らなくとも素通りが可能。ミルクは山しか見ていないのだ。ミルクは、下を見るのが怖いのだ。だから、上ばかり見る。高いものばかり見る。下には、見たくないものしかないから。
どういうことかというと、ミルクは両親との確執、ウシダさんへの願いすべてを叶えないといけないと思っている。僕は告げないといけない。ミルクに言わないといけない。壁は、山は、僕が破壊する。そうすれば、ミルクは下を見ざるを得ない。カミナリの剣は勇者の剣に変化しなければ、ミルクの憧れた『勇者というミルクの幻想』、つまり
ゲームソフトの山達は生きないのだ。ゲーマーの憧れと、かつてミルクは言っていた。自らもそうなりたいと、彼女は言い続けたんだ。
真の勇者とはただの人間だ。そうミルクは言った。勇者は世界に二人も必要ない。勇者はミルクに譲ろう。ならば僕は、ミルクを助けられる人間になりたい。どのクラスにチェンジすれば、僕はミルクを支えていけるだろう? それが解った時、僕は知識の果てへと辿り着く。
姉さんの売る者の時代を、僕は受け継げない。だから、姉さんの残した時代を、僕なりの売る者の時代へと、キツキツやクルミを連れて行ってやりたい。物語の主人公はどんなにヘタレでも、特別な力を持つとミルクはかつて言った。そしてそれは、僕にも当てはまるとも言ったな。ミルクは、特別な力を多分魔法と呼ぶのだろう。同じ魔法なら強い魔法がいい。それはパワーではなく、しなった枝であることを僕は願う。ミルクが空想世界に住むのなら、僕は現実世界のミルク専用ナビゲーションになりたいのかも。ならば僕は、現実を知る旅に出ようと思う。
キツキツの声がする。
「ミルクの住む場所はゲーム世界さ。声をかければ応えてくれる。俺達は、ミルクを自然に導ける存在になるための旅をする。まあ、その役は大岩に譲ってやるとして、俺もキツキツ町の発展のための知識が欲しい」
僕は一人で考え事をしていたらしいな。世界は広い。
「よし! サッツの法を破ってやるぜ」
「捕まらないぜ、俺達ならな」
と、その後僕とキツキツは指を指して大笑いをする。
キツキツ町は今日も賑やかだ。それをもたらしたのは、リサ姉さんの売る者の時代。そして、一ヶ月が過ぎる。ミルクから一本のゲームソフトが届く。僕はとりあえず、そのゲームを立ち上げる。
そこには、ミルクがいた。
「大岩、聞いてくれ。私は勇者に成れたのだ。知識の果てにたどり着いたのだ。あと私が求めるのは、特別な力。つまり、『大魔法』だよ。意味は解ったな。来るんだぞ、私のところへ」
ゲームソフトは、一時間もかからずクリア可能な、簡単な作りだった。描かれていたのは、両親と一日だけ過ごしたミルクだった。山を取り払ったのは、ミルクの幻想両親だったか。
そう言えば、魔法のエキスパートが存在するではないか。品質は売る者を上回ったという高級志向。その名はウシダ。僕はウシダさんに弟子入りすることとなった。
ミルクは通信で、早く会いに来いとうるさい。まだ、ミルクを安全に導く力がついていないんだ。しかし、それはもうすぐ。ウシダさんは感心している。
「これが売る者のコピー。私の科学は、売る者と融合するためにあったのかも知れん。敵となる必要はなかったと、今気付かされた。私ももう何時死ぬか解らぬ年齢。ミルクを頼んだぞ、大岩君」
「はい」
と、僕はししょうに答える。
僕とミルクの道は、再び交わる。ミルクは独り言をつぶやく。
「リサよ、お前の時代は、データソードのように大岩を成長させた。売る者の時代とは、想いさえあれば何時までも続くのかも知れん。青年は世界を変えきることは出来なかった。しかし、大岩は違う形を作り出すだろう」
「おーい、ミルク。僕も知識の果てに辿り着いたぜ」
と、僕はミルクに自慢する。
頼りない新米勇者ミルクを、僕は全力でサポートする魔法使いさ。ウシダさんから役目は受け継いだ。ウシダさんは本当の意味で伝説になった瞬間かも知れない。
「さあ、旅立ちの時だ。私達は開拓者となる勇者達。まだ、世界にはハテナがいっぱいあるさ」
「僕達はそれを解き明かすと。巨大な天使にゲームは積んだか? ミルク」
「いや、三年間封印しようと思う。その代わり日記を付けるぞ。戻ってきた時、ゲームと私達の歩んだ道と、見比べて見たいんだ」
「ゲームと同じぐらいのドラマを求めているのか。これはプレッシャー有るぜ」
「私はびびって踏み込めなかったから、今まで勇者に成れなかった。大岩のおかげで、多くの関わりは繋がったんだ。例えば、私の両親は腐ってはいるが、行動する力を得た。あと大岩、私は魔法ならば全て喜ぶわけではないぞ。そして、大岩の特別な力は、魔法などではない」
「じゃあ、何だよ?」
「私を見つけてくれた腐った頭と両の目だ」
「ならば、ミルクのはもっと腐っているな」
「ハハハ、喧嘩をしたい訳じゃない。あの日、私と大岩は同じ場所『白い世界』にいたんだ。その時かすかに見えた大岩の姿が、互いを知識の果てへと導いたんだよ。私は踏み込む勇気、大岩はリサに捕らわれた今を見つめること。さあ、ゲームのスイッチを押すぞ!」
「オープニングの始まりだ、ミルク」
「私達に壮大な音楽はいらない。二人の胸の鼓動が聞こえなくなるから」
大岩さんとミルクさんは、白い世界に包まれる。よっ、ヘルです。売る者の時代は、サラブレッド計画の後、大岩さんに託されました。ところが、売る者は最後に大きな遺産を残して行きました。その名は、最強のパワーフード『キツキツ』。キツキツのパワーフードは本の町に落とされた。
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