第9話 大地と海の記憶
キツキツ町は、かつての賑わいを取り戻しつつある。リサ姉さんによると。、ウシダさんの動きが活発になったという。サッツとミルクは、本格的に動き出したと見ていいだろう。ウシダさんはもう八十歳を過ぎてんだから、おとなしくしてろよ。
そんなことを考えていると、クルミがあわててやって来る。
「大変、大変!」
「何がだよ?」
と、キツキツ。僕も尋ねた。
「落ち着いて話せ!」
「うん。えっと、生きた大地と死んだ大地による大規模な実験を、サッツ達は行うみたい。彼らの記憶が危ないわ」
と、クルミ。
「急いだ方がいいかな」
と、キツキツは呑気に構えている。とりあえず、サッツ軍のマークの弱いところから、コピーを阻止するという作戦でいくことになった。クライとナツも何処かで待機しているらしい。
早速サッツ軍の兵士達と遭遇する。ヤツらは、パワーフードを操る!キツキツは僕の異変を指摘する。
「大岩、どうしたんだ? いつもと違う」
「そうか。何かおかしいことが、僕にあるとでもいうのか? うーむ、解らんが今は兵士に集中だ」
と、僕はキツキツに言い聞かせる。
しかし、キツキツは納得しない。
「相棒が集中出来てねえから、言ってんだよ」
「僕には解らない」
と、僕は言うしかない。本当に理由が見当たらないんだ。その時、クルミが叫ぶ。
「大岩とキツキツ、働きなさい!」
今日も頼りにしているぜ、データソードよ。んー、今日の爆弾は何時もより効果が薄い。リサ姉さんがこんなミスをするとは思えないが、疲れているのかも知れないな。データドールにも活躍して貰おう。僕は何を信じる? 売る者は、僕の神ではすでになくなった。
それにしても、サッツのヤロー、パワーフードをため込んでやがる。兵士達は暴走する。
「破壊族とは違う選ばれた兵士が俺達だ。本物のパワーフードは違うぜ」
突然力を手にした人間は、こうなってしまう可能性もあるということだな。
僕は念のため、サッツ軍の兵士達に説明する。
「正式のパワーフードにしても、完全な技術ではない。食い過ぎは身を滅ぼす」
しかし兵士達は、僕の言葉を笑い飛ばす。
「その手に乗るかよ。サッツ様は大量のパワーフードで、最強の力を手にした。我らもいつかサッツ様の言いなりから脱する」
「品定めも出来ないとはな。サッツはバカな兵士が多くて、操り易いってか」
と、僕は兵士達を挑発する。
兵士達はそれには乗らず、僕達を攻撃する。クルミはやはり冷静に対処しながら戦う。キツキツは、虹のビームを温存していくつもりらしい。兵士達は、サッツへの反乱を考えていてもおかしくないな。
我々もパワーフードとデータソードで対抗する。敵の頭が回る分、破壊族より厄介だ。使い捨ての駒どもが……。ここでクルミは、あることを指摘する。
「大岩、あなたの動きに変化はあまりないみたい。ただ、データソードと爆弾にいつもの力を感じないわよ」
ここで、キツキツの表情がこわばる。
「まさか、強化班に影響があったのか? ついさっきの通信で、リサさんは変化は感じられなかったぜ」
ここでヘルが会話に割って入る。
「売る者の時代が、一つ終わろうとしているのかも知れません。確かなことは解りませんが」
くっ、ヘルは何時も何かはぐらかしているように感じる。
データソードは、敵兵士を貫けない。こいつ、他の兵士より強い。そして、その兵士は言う。
「これが噂のデータソードのオリジナルか。俺の名はカゲロだ。サッツ様から頭脳系のパワーフードを盗み出した。それを口にすると、これまでのとは違う世界が見える。これが知識の果てか」
キツキツは、遂に虹のビームを構えて言う。
「ずいぶん安っぽい知識の果てだ」
「挑発には乗らないよ」
とカゲロ。カゲロは虹のビームを被弾しつつも、接近する。こいつは正しいパワーフードを、ある程度見分けられるってか。百万円コースのパワーフードですら、完璧ではないんだ。こいつにもサッツにも弱点はあるはずだ。カゲロはニヤリとして言う。
「適当に戦ったら退かせてもらいますよ。俺はキサマらより弱いことを知っている。生き延びてやるさ」
カゲロは他の兵士達を誘導する。上手に操ってやがるな。しかし、僕も知っていることがあるぞ。クルミが文句を言い出す。
「兵士が頭脳を持つだけで、ここまで厄介になるなんてね。データソードと爆弾の効果が薄いのも少し厄介。風はまだ情報をくれないの?」
キツキツも続く。
「敵に本気の色がないなら手を抜くか……」
僕は、それを聞いてキツキツに忠告する。
「そんなことをしたら、作戦を変更されるぞ。しかし、そろそろだろう」
兵士達は少し困惑しているようだ。カゲロは言う。
「そろそろだと? はったりには付き合ってられない」
しかし、少しずつカゲロの動きが低下していく。
「追い詰めたぞ」
と僕は叫ぶ。
データソードの改ざんが行われる。確かに、何時も程の効果は感じない。姉さんが原因だろうか? そして、カゲロは戸惑う。
「さっきまでの動きが出来ない!」
僕は言葉をカゲロにぶつける。
「キサマもサッツに利用されただけだ。パワーフードの効果の継続時間を知っているか?」
「クソッ」
とカゲロは悔しそうだ。
逃げようとしたカゲロを、虹のビームが追撃する。決着は着いた。しかしゲーム世界とはいえ、コピー作戦を見過ごすことなど出来ない。たとえ売る者の手のひらの上だとしても。データソードの強化で、売る者の技術は上がる。何処まで付き合えばいいのか……。この世界が偽物と誰が決めた? 僕は、キツキツとクルミに出会うことが出来たんだ。何を信じるかは僕の自由だ。姉さんは、僕が存在することを願ってくれる。それだけでいいさ。
その時、クルミが声をあげる。
「大地と海の記憶が薄れている。コピーがここまで影響をしているとでもいうの?」
ヘルはそれを否定する。
「サッツとやらでもそこまでは無理です。さすがはクルミさん。コピーというところに目をつけたのは、ハズレでもなさそうですね」
「どういうことだ?」
と、キツキツ。クルミはそれを無視して、続きを話す。
「記憶達が何処かへ引きずられていく。まさか、多重世界?」
「正解です!」
と、ヘルは得意のダンスを踊る。
キツキツも話しについていく。
「多重世界ってことは、他にもゲーム世界は存在するとでもいうのか。売る者とやらは、本気でリセットボタンを作りたいらしい」
カエル暦五百十二年の違った未来が、複数存在するってことは、売る者の戦力は隠されていたらしい。どうやら、リサ姉さんですら把握出来ない人材を、売る者は持っていたということだ。規模はどの程度だ? 解らないことが多すぎる。
僕は、キツキツとクルミに言う。
「今は、サッツの野望阻止が優先だ」
「そうだな」
と、キツキツ。しかし、データソードが上手く機能しないのは痛い。僕は、姉さんのナンバーを入力する。そして通信を飛ばす。姉さんの声が聞こえる。
「大岩か。私は最近忙しくてな。売る者に変化が訪れた」
僕は、姉さん自身に異常が無さそうなので、ホッとする。
しかし、売る者の変化とは何だ? キツキツも疑問を持ったようだ。
「リサさん、それはどういうことだ? データソードより大切なことなのか?」
「ことがはっきりしない以上、話をしても混乱するだけだ。私もおかしいのかもな」
リサ姉さんは疲れているみたいだな。僕達は、現実世界にも大きな影響を与えたということか……。リサ姉さん達でも困惑していることを、僕達が考えても仕方がない。
僕は通信を切る。そして、
「行こう」
と僕。ついてきてくれる人達がいるんだ。多重世界ってことは、他にも僕みたいに騙された売る者のメンバーが、結構いたのだろう。クルミが、大地と海の記憶を読み上げる。
「売る者の時代は、受け継がれてきた? 風よ、もっと詳しく教えてくれ。もう限界ね」
キツキツはクルミに軽く言う。
「難しく考えても仕方がない。コピーの実験を少しでも阻止しよう。キツキツ町も反乱軍も頑張っている」
その言葉に対して、クルミはそれほど納得していない。知識の果てに、クルミは何をはせる? 過去だろうか、それとも記憶だろうか。大切なものを知識の果てに置いてきたと、クルミはかつて言っていた。それはもう価値がないのではないかと僕は思う。そんなこと言ったら、クルミは怒るかもな。
僕達とサッツ軍の戦いは、激しさを増す。そこで僕達は、補給と休憩のために、キツキツ町へ戻ることになった。反乱軍も必死で町を守っている。
破壊族を放っては去っていくサッツ軍。この戦いは何時まで続くのだろう。キツキツには見えているのだろうか? 僕には見えない。記憶達は最後の謎を残した。大地と海は何を考えているのかは、クルミでさえ解らないらしい。記憶だけが頼りってことかな。
しばらくすると、ガタイのいい一人のおじさんが、こちらへと向かってくる。こいつ、パワーフードを知り尽くしてやがる。パワーフードを一時的な能力ではなく、負担をトレーニングへと変化させ、強靭な肉体を作り上げている。何者だ? ただ者ではないな。何より、それだけのパワーフードをどうやって手にしたというのだ?
キツキツとクルミの表情は硬い。やはり名のあるヤツか。
「サッツ」
と、キツキツとクルミは同時に言った。ヤツがこの世界のトップ……。何しに来やがった。サッツは穏やかに話しかけてくる。
「ビジネスの話をしようか。ミルクには別行動をとってもらっている。俺の力を貸そう」
私はヘル。リサさんの異変は、売る者の最後、データソードは進化を緩めていく。リサさんは、売る者に選択肢を用意された。売る者、つまり大岩は何を願う? 売る者とは、人々を恐れる弱者。売る者は、カセットテープをモンスターへと変化させたのです。売る者の時代とは、存在しなかったのかも知れないですね。
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