第4話 体験入部と荒川くん
放課後、僕と川中島君と奈奈さんの3人はラグビー場に向かった。
川中島君が、学級委員長の仕事があって、それが終わるのを待っていて、出遅れたから練習はもう始まっているはずだ。
校舎の裏の大きなグラウンドの奥に、ラグビー場とサッカー場が並んであるのが見えた。
境目がないけど、大丈夫なのかな、とも思ったけど、意外とボールは飛んでこないみたいだ。
ラグビー場は片側しかゴールポスト立ててないみたいだから、もしかしたら今は、全面使ってないから大丈夫とかなのかな?
まぁ、よくわかんないや。
ラグビー場に着いて、3年生のマネージャーらしき人に体験入部させてほしいと伝えると、僕らは、ラグビー場の端にいる集団のところに連れていかれた。
「松田先生、体験入部追加でーす」
ラグビー場の端には体験入部に集まったと思われる生徒10人程と先生、先程のマネージャーとは違う、2年生の背の低いマネージャーがいた。
松田先生は若い先生で、一年三組の担任をしているので、なんとなく顔は知っていた。
ラグビーの顧問だったのか。
確かに背は僕より高いし、体重も100キロは超えていそうだから、ラグビーっぽいな。
「3人追加か、今日は多いな。お、女子もいるな。女子は選手とマネージャー、どっちの希望だ?」
選手と言われて、奈奈さんが目を丸くした。
「え、選手!?女子ラグビーもあるんですか?」
奈奈さんがびっくりするのもわかる気がする。
他の部活は「女子バスケット部」「女子柔道部」とか男子と女子を分けて部が存在するのが、この学校では一般的だ。
女子ラグビー部とかなかった気がする。
「女子選手はこの学校には三年生に1人、2年に2人いるのよ。練習は男子と一緒にやってて、試合は主に他校と合同チームかな。」2年生の背の低いマネージャーさんが教えてくれた。
「それから、マネージャーは3年1人と2年に1人いるよ。結構忙しいから絶賛募集中だよ~」と、手のひらをヒラヒラさせる謎の踊りを踊って奈奈さんを勧誘していた。
奈奈さんは、なにか真剣に考えてるようだった。
「よーし、今日の体験入部はタックルの体験とゴールキックの体験をしようと思っていたけど、人数も多いので予定変更!パスの練習したあと、タッチゲームやるぞー」
松田先生は少し離れたところで練習していた3年と2年の先輩を何人か連れてきた。
「とりあえず、スクリューと平パス教えて、30分後タッチゲームやるから。」
「大橋先輩、タッチゲームってなんですか?」川中島君が先輩の一人に質問した。
なんで名前知ってるんだろう?知り合いかな?
「お、カイセーの弟君じゃん、久しぶり!ってか、デカくなったなー。俺ともうそんなに変わんねーじゃん!」
川中島君はどうも先輩とは、よくわかんないけど、面識があるようだ。
先輩は僕らの視線を感じて、川中島君との会話を打ち切って説明を始めた。
「世の中にはタッチフットとか、タッチラグビーとか言う、安全、簡単にしたラグビーとかアメフト入門用にちょうどいいルールがあるんだけど、今日はうちの独自ルールで。共通して言えるのは、簡単、安全、ハードな鬼ごっこって感じかな」
「タックルなし、タックルの代わりは片手タッチ、ボールは落としちゃダメ、前にパスしちゃだめ。ハードなタッチや引っ張ったりもダメ。タックルされたり、ボール落としたらボールは相手チームへ。落とした人、タッチされた人はその場で腕立て伏せ5回。また、無理なパスとかはパスした人が腕立て伏せ、最後になるけど、トライされたら、相手チームは腹筋10回にしようか。」
「得点は?トライは5点とか?」川中島君が大橋先輩に質問する。
「最初に言った通り、基本的には鬼ごっこなんだよ。勝負じゃないから、得点は数えないよ」
川中島君と先輩が話してる内容から、なんかルールそんなに難しそうじゃないし、楽しそうだ。
鬼ごっこなら自信あるかも。
これでも元陸上部で足は早い方だと思うし。
「まずは、ゲームの前に簡単にパスのやり方を練習しようか。」
先輩二人がボールを持って説明を始めた。
「知っての通りラグビーボールは独特な形をしてるから、凄く扱いにくい。」
「だから取りやすいボールを投げてあげる必要があるわけ。」
まず、近くの人にパスするするときに使う「平パス」から教えてくれるらしい。
「相手がとりやすくするために、回転させないように意識して渡すんだけど、気分は爆弾に刺激を与えないように、注意しながら優しくパスする。そんなイメージかな」
見ている分には何にも難しそうな感じはしないな。
僕にも問題なく出来そうだ。
…なんて、僕にもそう思っていた時期がありました。
「違和感しかない!!」
そう、普段こんな先細りの変な形、馴染みがないんだよ。
投げるのも違和感がつきまとうし、何よりキャッチがうまくできない。
ちゃんと真ん中捕まえないとドジョウ掬いのドジョウのようにスルリと抜けていったり、ポトリと落としたり。
丸いボールならこんなにならないと思うけど…
いや、前言撤回。
きっと丸いボールでも、僕だけは落としますよ。
どんくさいですから。
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