行方不明





 たぁくんは体調を崩していました。作業所が終わったら自宅で練習すると約束してました。


 たぁくんからメールが届きました。


 「今、どこにいるか分からない。公園にいる」


 作業所から自宅までに公園はいくつかありますが、その公園がどこか、すぐに分かったので迎えに行きました。


 たぁくんはベンチで寝ていました。


 フラフラになりながら、もう大丈夫と言っていました。


 その後は覚えていません。


 一人で帰ったのか、自宅に来たのか。


 それから何ヵ月か経ったとき、たぁくんは入院しました。


 職員や、セカンドの職員、色々な人から言伝てを頼まれました。


 うまく伝えられなかった自分を恥じています。

  

 最初にその病院に行ったのは、たぁくんと二人でバンドメンバーを探すためでした。


 自転車でなかなかの距離を漕ぎました。


 あの病院には、音楽家がたくさん居ます。


 病院に着いたら、たぁくんは一人の男性と話をして、その男性はロビーにあるピアノを弾きはじめました。


 うまい。


 別のバンドでたぁくんと組んでいた人だったようです。


 たぁくんが生きていてくれたら、聞きたかったことも聞けたはずです。


 言いたかったことも。

 

 渡しそびれた誕生日プレゼントも。


 でも、今も十分、幸せを感じます。


 あなたが見ていてくれるからなんですが。


 でも。


 優しく声をかけてくれる仲間。


 真摯に、時に厳しく叱ってくれる職員。

 

 恵まれていると思います。


 みんな年上だから、気を使うけど。


 恵まれている。


 そう思います。




 


 

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